トランクスさんは、文句とか不満は言いそうにないけど、ベジータさんはハッキリと言いそうだから……。

　それに、この食事の量で足りるのか、すごく気になった。

　サイヤ人の人たちの食欲って半端ないから……。

　でも、二人とは初対面ていうことになってるから、迂闊に話しかけられず、私はモヤモヤした気持ちを抑えながら、朝ごはんを食べ進めた。



「はい、お弁当」

「ありがと！　じゃ、行って来ま～す！」

　お母さんが作ってくれた、お弁当を鞄に入れて、リビングを出て行く瞬間、これまでの朝が戻ってきたんだって、改めて実感した。

　でも、そこに家族以外の「行ってらっしゃい」の声が聞こえて、私はまだ、非日常が続いてることに気付き、思わず振り返った。

　振り返った先には、これまでの日常に存在してなかった、優しい微笑みを浮かべた人がいる。

　我が家のダイニングテーブルに座るトランクスさんを、私はまだ見慣れず

　あれ？　これは夢？

　なんて、夢か現実か混乱しそうになりながら、トランクスさんの存在を確認するように、もう一度「行って来ます」と言ってから、玄関へ向かった。

　玄関まで続く廊下を歩きながら、これまでみたいに、トランクスさんとベジータさんと、普通に話しが出来ない状況にもどかしさを感じる。

　慣れない場所での暮らしに、きっと、二人も私に色々聞きたいことがあるんじゃないかとも思う。
　
　でも、この家にいる限り、二人と話すのは難しい。

　よし！　学校から帰ったら、二人を家から連れ出そう！

　私はそう決心すると、黒いローファーに足を滑り込ませ、玄関を出た。