梨子が俺たちの部屋を去るとすぐ、トランクスは部屋の隅に置かれた、小さな折り畳み式のテーブルの上にパソコンを置いた。

　そして、コンセントを差し込むなり、梨子から渡されたパソコンを開き、キーボードを叩きはじめた。

「何から調べるんだ」

　トランクスの背中に聞いたのは、別にこの地球に興味があるからじゃない。

　あの菜奈とかいう、梨子の姉のせいだ。

　また、あいつに色々聞かれた時のことを思うと、この地球に関する最低限ことは知っておいた方がいい。そう判断した。

　すると、トランクスはパソコンの画面を見たまま

「そうですね……。とりあえず、この地球全体のことを知りたいですね」

　そう言ってから

「以前、梨子さんと真琴さんから、この地球にはたくさんの国があり、人種や言葉、文化などがたくさんある。ということは聞いたことがあるんですが……」

　画面に出て来たらしい、文字を読みながら答えた。

　そう言えば、そんなことを言っていたな。

　あの娘たちが話してたことを薄っすら思い出し、面倒な星だと眉を顰めたことを思い出した。

　この地球について書かれた文章を見つけたらしく、無言で画面を読むトランクスの背中から視線を外し、俺は部屋の中を見渡した。

　襖という、簡素な仕切りで隔てられた空間には、家具はなく、梨子の親が運んで来た布団が二組置いてある。

　電気製品といえば、壁に取り付けられたエアコンだけで「精神と時の部屋」にすら、ベッドと冷蔵庫があったことを思うと、舌打ちしたくなった。