「どうぞ召し上がって下さい」

　テーブルに並べられた料理の数々に

「うわぁ、美味しそうですね！」

　思わず感嘆の声をあげた。

　料理自体は、サラダや煮物、焼き魚など至って普通の家庭料理なのだが、とにかく赤、黄、緑と彩りが鮮やかで、美しい盛り付けが豪華さを演出している。

　ご馳走を用意出来なくて。と、梨子さんの母親は申し訳なさそうな顔をしたが、急遽、俺たちの分まで作ることになったのだから、謝るのはこっちの方だと言えば

「お母さんは料理作るの好きで、苦にならない人だから気にしないで！」

　グラスに、ペットボトルのお茶を注ぐ菜奈さんは、可笑しそうに笑っていた。

　そして、そのグラスがみんなに行き渡ったところで、##NAME1##さんの家族と、俺と父さんという、想像もしなかった顔ぶれでの、夕食がはじまった。

　食べる料理は、やはり、梨子さんの作る料理の味によく似ていた。

　久しぶりに、家族と一緒に食卓を囲む梨子さんは

「お母さんの料理だ～」

　と言いながら、いつも以上に幸せそうな表情で、母親の手料理を口にしては、感動している。

　そんな、梨子さんの姿を見ながら

　梨子さんは、この家……この家族の中で育ったんだな……。

　そう思うと、自然と笑みが零れた。

　思いもしない出来事から、梨子さんのルーツに触れることになり、不謹慎だが嬉しく思っている自分がいる。

　いつまでも、未練がましく彼女を想っている自分を許すように、俺は、美味しい料理たちを飲み込んでいった。