「それじゃ、私帰るから」

「うん」

「分かってるとは思うけど。あんたはベジータさんたちとは今日が初対面って設定だから、あんまり馴れ馴れしくしないようにね」

「あ……そっか」

「……あんた、大丈夫？」

「う、うん！　気を付ける」

「……。トランクスさん、この子がやらかしたら、何とか誤魔化して下さいね」

「え、ええ……」

　一応答えたものの、上手く誤魔化せるか自信はない。

　乾いた笑みを浮かべてるだろう俺の顔を見て、真琴さんは「不安だ」という表情をしたが

「とにかく、何とか上手くやってください。じゃ、梨子。明日学校でね」

　真琴さんは、手をヒラヒラさせながら回れ右をし、久しぶりとなる自宅へと帰って行った。

　右肩に竹刀袋をかけた、真琴さんの後ろ姿が遠ざかって行くのを見送りながら

「はぁぁぁぁ……」

　梨子さんは深く長い溜息を吐くと

「明日から学校かー……」

　ガックリと肩を落とした。

　第七宇宙の地球へ飛ばされてから四ヵ月。

　その間、梨子さんたちは学校に行っていなかった。

　まともに学校に通ったことのない俺には分からないが、四ヵ月も通学していないと、学校へ行くことは、些か面倒になるようだ。

　気落ちする梨子さんの背中に苦笑しながら、ふと空を見上げた俺は、黒い夜空に白い月が昇っているのを見た。

　この地球に来て、まだ数時間程しか経っていないが「地球」という惑星の基本的なことは、第七宇宙も第六宇宙も変わらないのだと実感した。