トランクスさんは、兄の知り合いで、日本の文化に興味があり、父親のベジータさんと観光のため来日した。

　しかし、空港で預けた荷物が、日本に届いておらず、行方不明に。

　現在、荷物の行方を捜索中だが、見つかるまでにどれくらいかかるか分からない。

　そして、運が悪いことに、財布などの貴重品も、キャリーケースに入れて預けてしまったので、手荷物として持っているのは、パスポートのみ。

　旅行どころではなくなってしまった。

　そのまま帰国することも考えたが、今回の来日を逃すと、次はいつ来られるか分からない。

　観光は無理としても、せめて、滞在だけでも出来ないだろうか――。

「というわけで……宿泊は日本文化にも触れられて、宿泊費のことも融通が利きそうな『龍泉寺』に滞在させてもらえないか。と、兄から相談されたんです」

　小径を下る間の、短時間で考えた大嘘。

　こんな大嘘、信じてもらえるだろうか……。

　大いに不安だったが、おじさんは

「うーん……。そういう事情なら、仕方ないなぁ。とりあえず、母さんとも相談して来るから、少し待っててくれ」

　そう言って、家の方に向かって行ってしまった。

　果たして、私の嘘を、信じてくれたのだろうか？

　疑問だったが、とりあえず、おじさんをこの場から払うことが出来ただけでも、よしとしよう。

「よくも、あんな大嘘をつけたもんだ」

　おじさんが行ってから、梨子とベジータさんに、批判的な目を向けられたが、私からしてみれば、小径を下る、あの短時間の間に、よく、こんな大嘘を考えられたもんだ。と、自分を褒めてやりたかった。