「懐かしい気を感じる」

　そう言った、真琴さんの感覚を信じたいとは思うが、やはり、そうもいかない。

　何故なら、梨子さんが「おかしい」と言ったことも、間違いないからだ。

　梨子さんたちは、三ヵ月以上、父さんたちの住む「第七宇宙の地球」にいた。

　だから、この「第六宇宙の地球」では、三ヵ月以上行方不明だったはずだ。

　普通に考えて、三ヵ月以上行方不明だった人間……しかも娘が、ある日突然帰って来たら、大騒ぎになる。

　それなのに、梨子さんの父親は、三ヵ月ぶりに会ったはずの梨子さんを見ても、全く驚くようすもない。

　それが、俺と梨子さんが、ここが本当の「第六宇宙」だと信じられない要因で、俺は、小径を下った先にいる、人の好さそうな人物に、改めて警戒の目を向けた。
　


「真琴ちゃん、久し振りだね」

「お久し振りです」

　小径を下り終えるなり、にこやかに話しかけて来た梨子さんの父親に、真琴さんはごく普通に、挨拶を交わした。

　真琴さんの隣りに立つ、梨子さんの方が、警戒感を示していて、ぎこちなく見える。

　だが、まさか、娘が自分に対して、疑念を抱いてるなど思っていない父親は

「で、今日はどうかしたのか？　二人揃って、こんな時間に帰って来るなんて珍しい」

　梨子さんと真琴さん、二人の顔を窺ってから、その後ろに立つ、俺と父さんの方に、チラリと視線を向けた。