「お、お父さん！？」

　梨子さんの驚く声に、俺も「えっ？！」と声をあげていた。

　小径を下った先にある、木造の建物。

　その建物の前から、頭を丸めた、小柄な男性が、こちらを見上げている。

　年齢は、五十代半ばくらいだろうか。

　あの人が、梨子さんの……？！

　不思議そうな顔で、こちらを見上げている人物からは、悪い気など一切感じられず、普通の人間だということは、断言出来た。

　しかし。男性が、本当に梨子さんの父親なのかと言われたら、それは判らない。

　そもそも、この場所すら、梨子さんたちの住んでいた「第六宇宙の地球」かどうかも、まだハッキリ解かっていない。

　トワの仕掛けた罠だということも、十分考えられる。

　油断出来ない……！

　そう思っているのは、父さんも同じようで、警戒の視線を男性へと向けている。

　距離があるとはいえ、男性は父さんから送られる、鋭い視線を気にするようすもなく

「おかえり、梨子。今日は早いな！」

　張った声を、梨子さんへとかけた。

　その顔からは、もう、不思議そうな表情は消え、安心したような、穏やかな表情に変わっている。

　それはきっと、真琴さんの存在に気付いたからだろう。

　そして、真琴さんも、梨子さんの父親だという人物が、俺たちに向ける表情を察したらしく

「こんにちは！　お邪魔してます！」

　この状況が、何事でもないかのように、軽く頭を下げると

「行くよ」