「あのインコ、私のことあんまり好きじゃなかったのかなー」

　寂しく笑うと

「その逆じゃないでしょうか」

　トランクスさんが、にこやかな顔を私に向けた。

「逆？」

　首を傾げる私に

「はい。あの鳥は梨子さんのことが気に入ったから、羽を広げたと思いますよ」

　トランクスさんは、そう答えてくれた。

「威嚇じゃないんですか？」

「そういう時もありますけど、鳥は求愛の時や楽しい時にも羽を広げるそうです」

「ホントに？」

「はい。だから、梨子さんも、人気者。ということです」

　楽しそうに微笑むトランクスさんを見て、胸の奥がキュンてなった。

　ますます、こうして二人で出掛けられたことが嬉しくて、自然と「ふふっ」って笑顔がこぼれる。

　そんな私を

「どうかしまたしたか？」

　不思議そうに見るトランクスさんに、私は緩んだ顔を向け

「トランクスさんと出掛けられて、楽しいなーと思っただけです」

　そう答えると、トランクスさんも

「俺も、梨子さんと出掛けられて楽しいですよ」
　
　ふっと照れ臭そうに笑ってくれた。

　冗談……じゃないのを確かめるように

「ホントですか？」

　トランクスさんの顔を覗き込むと

「ホントですよ」

　トランクスさんは、少し顔を赤く染めて微笑み

「やっぱり、父さんがいなくてよかったかもしれません」

　悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ふふっ！　そうですね！」

　そんな冗談を言って、笑いながら歩く私たちは、どちらからというわけでもなく、自然と手を繋ぎレストランへと向かっていた。