まさか、私の助言を真に受けたわけじゃないだろうな……。　　

　変に真面目なところがあるイケメンをジトリと見つめると

「お、俺は何も……！」

　トランクスさんは、一瞬ビクッとした後、心当たりがないというふうに、首を小さく左右に振った。

「……へぇ」私の表情から、疑いが消えていないことを察し、トランクスさんは

「ほ、本当に何もしてませんから！」
　
　かけられた疑いを晴らすように、口調を強めた。

　多分、この人は自覚なく、梨子の機嫌が直るようなことを、やるか言うかしたんだろう。

　……この天然め。　

　心の内でそっと毒づいてから、これ以上の追及は無駄だと思い「そうですか」私は肩を竦めてから

「ま、とにかく梨子の機嫌が直ってよかったです」

　切符を手に、こちらに戻って来る梨子の姿を眺めながら、この話しを終わらせた。



　電車に揺られること約五十分。

　目的の店であるラーメン屋に辿り着いた。

　ラーメン屋らしからぬ、和的な建物の入口をくぐり、店内に入ると

「いらっしゃいませーー！」

　体育会系的な、威勢のいい声が続けざまに響いた。

　店の中はオープン間もないこともあり、まだ数人のお客しかおらず、席はご自由にとのことで、私たちは目立ちにくい、一番奥の席を選んだ。

　席に着いた私は、活気ある店員の雰囲気とは異なり、外見同様こざっぱりした店内を見回した。

　こういう店なら、老若男女問わず、入りやすいだろうな。

　そんなことを思いながら、隅に置かれたメニュー表を、テーブルの上に広げた。