襖とかいう引き戸を閉めてから、トランクスが溜息交じりに呟いた。　

「ダメだと言われたら、勝手に食いに行くまでだ！」

　この地球での生活に、あまりに気を遣う息子に苛立ち、語気が強まった。

　空腹であることが、苛立ちの大きな要因にもなっている。

「父さん……」

　気持ちは分かる……。そう言いたげなトランクスの声を聞きながら、俺は苛立ちを誤魔化すように座り込んだ。

「とりあえず、真琴さんからの返事を待ちましょう」

　宥めるように言う息子に、顔を顰めると同時に、小さな舌打ちが出た。

　翌朝。

　朝食の席で、梨子が俺とトランクスに目配せしてきた。

　きっと、真琴から返事がきたのだろう。

　隣りに座るトランクスも、目配せの意味を察し、僅かに頷き応えるのが、視界の端で見えた。

「ごちそうさまでした！　じゃ、行って来まーす」
　
　朝食を食べ終え、席を立つ梨子は、去り際にまた目配せをして、学校へと出掛けて行った。

　すると

「ごちそうさまでした」

　トランクスもすぐに席を立ち、いつも通り、食べた後の食器を素早くキッチンへ運びはじめる。

　梨子の母親が息子の行為に「ありがとうございます」と声をかけると

「いえ。今朝も美味しかったです」

　トランクスは笑みを浮かべ

「父さん、先に部屋に戻りますね」

　そう言って、何事もないように、部屋へと戻って行った。

　きっと、真琴からの返事を聞きに行ったのだろう。

　返事はトランクスに任せ、俺は朝食を食べることを優先した。