空が白みはじめる前に樹海へ向かう。

　それが、俺とトランクスの日課となっていた。

　些か朝が早過ぎるが、ようやくトレーニングする場を得られたのだ。文句は言ってられない。

　寝静まっている家を静かに抜け出し、俺たちは、まだ暗い空を飛び樹海を目指す。

　人目に付かぬよう、速度を目一杯に上げて。
　
　そのため、梨子の家から樹海までは十分程で着いた。

　まだ陽が昇る前の樹海という場所は、酷く不気味で、はじめてこの場所来た時は顔を顰めた。

　こんな陰気な場所でしか修行が出来ないことに怒りを覚えたからだ。

　しかし、何者も寄せ付けず、拒むようなこの場所に数日通うと、俺はすぐにこの樹海という森に魅力を感じるようになった。　

　それは、広がる樹々の生命力のせいか、大地から発せられる妙な「気」のせいか……。

　いずれにしても「樹海」という場所は、はじめの印象から変わり、俺を惹きつける場所になっていた。

　ただ、トランクスは違うらしく「違和感を感じる」と言い、少し警戒しているようだった。

　こんなふうに、人によって感じる印象が異なるのも、この「樹海」という場所の魅力なのかもしれない。

「樹海」という格好の場を得、トレーニングをはじめた俺たちだったが、すぐに問題が浮上した。

　分っていたことだが、身体を動かすと腹が減る。

　それが大きな問題だった。

　自分たちの地球にいた時は、腹のことなど気にせずトレーニングにしていたが、ここではそうもいかない。

　この問題を軽くしようと、トランクスは短時間の修行に止めているが、俺はそれが出来ずにいた。