傘を受け取ると、私は逃げるように校門を離れ、家の方に向かって歩きだした。

　少し歩いて学校が見えなくなった頃、私は回れ右をし、後ろを歩くトランクスさんと向かい合った。

　急に回れ右した私に、トランクスさんは驚いた顔をしたけど、すぐに不思議そうな顔になり立ち止まった。

　向い合う不思議そうな顔を、気まずい思いで見上げ

「……傘、ありがとうございます」

　頑張って視線を合わせ、もう一度お礼を言うと

「いえ。智子さんに頼まれたので……」

　トランクスさんは困ったように眉を下げてから

「降りが強くなってきましたし、行きましょう」

　家に向かうよう促した。

　

　歩きはじめてすぐ、頭の中にさっきの校門の前の光景が甦り、また胸の中にモヤモヤムスムスが発生した。
　
　まるで、推しにでも会ったみたいなテンションで、トランクスさんを囲む三人。

　あの光景を思い出すと、自然と口が尖ってく。

　トランクスさんみたいなイケメンが学校の前にいたら、絶対目立つに決まってる。

　なのに、何で迎えになんて来させるのよ！　お母さんのバカ！
　
　心の中でお母さんに恨み言を言いながら、一人悶々と、通い慣れた歩道のない道路を進んでると

「梨子さん！」

　名前を呼ばれると同時に、傘を持ってる方とは反対の手首を掴まれ

「っわ！」

　って、大きな声が出た。

　と同時に、その声をかき消すように、私の目の前を車が水しぶきを上げ、勢いよく通り過ぎて行った。

　あ、危なかった……！

　たったいまの出来事にヒヤリとして、身体を強張らせてると