下駄箱に着くと、私同様、雨に溜息を吐いてる人たちがちらほらいた。

　折り畳み傘を鞄に忍ばせている人や、置き傘をしてる用意のいい人たちがいる中、私みたいに傘を持ってない人は、諦めて雨の中へ向かって行く。

　靴を履き替えた私も、覚悟を決めて下駄箱を出た。

　自分と同じように、傘をささずに小走りで下校する人の姿を追いかけてると、校門のところで、三つの傘が立ち止まってるのが見えた。

　雨を気にする必要がないからか、制服姿のその三人は、傘の中から楽しそうな黄色い声をあげてる。

　そんな、傘をさしてる人たちの横を、ちょっと羨ましく思いながら通り過ぎようとした時

「梨子さん！」

　名前を呼ばれ、足が止まった。

　声がした方を見ると、そこには傘をさしたトランクスさんが立ってて

「トランクスさん？！」

　思わず大きな声が出ちゃった。　

　何でトランクスさんが？！

　驚いてると、トランクスさんを囲んでる三人がこっちを振り返り、怪訝な顔で私を見てる。

　何となく居心地の悪い視線にギクっとしながら

「な、何してるんですか？」

　トランクスさんに尋ねると

「あの、雨が降ってきたので、傘を……」

　トランクスさんは左手に持ったピンクの傘を、私に見せた。

　！　まさか、トランクスさん、迎えに来てくれたの？！

　思ってもなかったことに、また驚いて

「あ……。あ、ありがとうございます……」

　お礼を言うと

「それじゃあ、行きましょうか……」

　トランクスさんは囲んでいる女の子たちの間を「すいません」て苦笑いしながら抜け出し、私に傘を差し出した。