長引くモヤモヤムスムスは、ピアノの演奏にも影響してて、ピアノを弾いても全然心が弾まないし、楽しめないでいた。

　先週はあんなに楽しく弾けて、自分でも満足な演奏が出来てたのに……。

　先生からも驚かれて褒められて、完璧な一週間だったのに……。

　あーあ……。

　胸の中で溜息を吐きながら、レッスン室から窓の外を見ると、空は私の胸の中と同じくらい、黒い雲で覆われてた。

　もうすぐ雨降りそう。
　傘持って来てないのに……。

　いつ雨が落ちてきてもおかしくない、どんよりとした空を見つめてると

「さ。もう一回はじめから弾いてみて」

　先生の声がして、私は視線を窓の外から楽譜に移した。

　楽譜を見て

　私、何でこんな華やかな曲を選んじゃったんだろ……。

　この曲を選んだことを後悔した。

　来月開催される、学校の文化祭。

　その日、ピアノ科の生徒は演奏会をすることになってて、私はショパンの『ワルツ第一番』を選曲してた。

　でも。こんなに気持ちがモヤモヤムスムスしてる状態で、華やかな曲を弾く気になんてなれなくて、こうして、放課後残って練習するのも億劫になってた。

　そのせいで、練習に付き合ってくれてる先生も、溜息を連発してる。

　……ごめんね、先生。

　心の中で先生に謝りながら

　早く、いつもみたいにピアノを弾きたい……。

　そんなことを思いながら、私は仕方なく鍵盤を叩いてた。

　

　レッスンが終わる頃には、雨は本降りになってた。

　天気予報では、雨なんて言ってなかったのに……。

　私は外れた天気予報に溜息を吐いて、レッスン室を出た。