「つーか、何でしたんですか？」

　誰彼構わず「お姫様抱っこ」をする男に呆れてると

「いけなかったでしょうか……」

　何故？　を滲ませる顔がこっちを見ていた。

「いけないっていうか……」

　そう。

　別にいけないわけではない。

　ただ。それを梨子の前で平然とやってのけたのが、きっと「ダメ」なんだ。

　でも、何故ダメだったかと聞かれたら、その理由を私から伝えるのは遠慮したい。

　そう思い、言い淀んでると

「梨子さんのお友達の頼みだったので……」

　断りづらかった。という含みを持たせ、トランクスさんは項垂れた。

　断ることで、梨子と仁美の関係が悪くなるとマズイ。などと考えたのだろう。

　……人の好さが仇になったな。

　目の前のイケメンの、損な人柄に同情し

「……梨子の機嫌を直す方法、教えますよ」

　私は仕方なく切り出した。

「えっ？！　本当ですか？！」

　光を取り戻した、青い目を見つめ

「梨子に、またキスでもしてやって下さい。そしたら、すぐに機嫌直るはずですよ」

　私は解決策になりうるだろう、方法を伝えた。

　すると、トランクスさんは「えっ？！」と、驚いた声をあげ

「そ、そんなことをしたら、逆効果じゃないですか？！」

　頬を赤らめ、あからさまな動揺を見せた。

　何で梨子の機嫌が悪いのか解ってない、恋愛初心者なイケメンに

「ま、やってみて下さい」

　密かに溜息を吐くと

「じゃ、これから部活あるんで行きますね」

　私は回れ右をし、校舎へと戻った。