口々に梨子さんのことを話題に持ち出した。

「あの子ったら、もう……！　お客様の前ですいません」

　申し訳なさそうな顔をする智子さんに

「あ、いえ。大丈夫です……」

　俺は乾いた笑顔を張り付かせ、夕食を食べ進めた。

　夕食を終え、和室に戻ると

「あいつも機嫌が悪くなることがあるんだな」

　意外だというふうに、父さんが呟いた。
　
　確かに、俺たちの地球にいた時に、梨子さんのあんな顔は見たことがない。

　あったとすれば、時々真琴さんにからかわれて口を尖らせる。

　その程度のものだった。

「そうですね。俺も意外です」

　彼女のそんな表情を見れるのも、嬉しいことではある。

　だが、その原因が自分にあるかもしれないと思うと、憂鬱でしかない。

　彼女の機嫌はどうすれば直るのだろう？
　そもそも、原因は何だ？

　首を傾げている俺に

「おい。不機嫌の原因はおまえじゃないだろうな？　今日、あいつと一緒に出かけたんだろ」

　父さんが怪しんだ目を向けていた。

　その視線に

「そ、それは……。そうかもしれないと思い、謝ったのですが……」

　語尾を濁らせ答えると

「長引かせると面倒なことになる。思い当たることがあるなら、早めに何とかするんだな」

　父さんはそう言ってから、壁を背に座り、目を閉じた。

　修行の時でさえ、なかなかもらえないアドバイスを、父さんからもらえるなんて……！

　驚くと同時に、俺は以前悟空さんが言っていた「あいつ、変わっただろ？」という言葉を思い出し、口元が緩みそうになった。