梨子さんの機嫌が悪い。

　菜奈さんも

「あの子、機嫌悪いわね」

　そう言っていたので、やはり彼女の機嫌が悪いのは間違いない。

　俺はまた、梨子さんの機嫌を損なうようなことをしてしまったのだろうか……？

　心当たりと言えば、先程、梨子さんの友達の仁美さんと会ってからだ。

　梨子さんの友達だということで、俺なりにこの地球の人間を装い振舞ったつもりだが、上手く出来たかと言えば、そうでもない。

　現に、梨子さんのフォローもあって、やり過ごせたところが大きかった。

　……また、梨子さんに迷惑をかけてしまったな。

　先日の「お姫様抱っこ」の件もあり、梨子さんに迷惑ばかりかけ続けていることを反省し

「とにかく、謝りに行こう」

　俺はあてがわれている和室を出て、梨子さんの部屋がある二階へと向かった。

　他人の家の二階へ勝手に上るのは躊躇われたが、いまは梨子さんに謝って、少しでも機嫌を直して欲しいという気持ちの方が強かった。

　階段を上りきり、時間の経過と共にくすんできただろう、白い壁紙が貼られた彼女の部屋のドアの前に立ち、短く息を吸ってからドアをノックをした。

「あの、トランクスです」

　名乗ると、やや間を空けてから梨子さんの「はい？」という訝しむ声が返ってきた。

　勝手に二階に上がって来た俺を、彼女は非常識だと思うだろうか……。

　ふと、そんなことを思っていると、ドアが開き、梨子さんが顔を覗かせた。