そこまで親しくない。っていうことを、強調しろ。っていうニュアンスを残して、マコちゃんは

「じゃ、頑張れ」

　背中越しにそう言うと、教室を出て行った。



　レッスン室でピアノの練習をして帰ろうと思ってたけど、今日は仁美も練習で残るって言ってたから、私は家に帰ることにした。

　友達を避けるようなことはしたくないけど、これ以上「トランクスさんに会わせて！」なんて言われたら、今日の私には阻む自信がない。

　せっかくマコちゃんにアドバイスをもらったけど、それを活かせそうにない、人の好い自分を恨めしく思いながら、学校を出た。

　それにしても……。

　あの「お姫様抱っこ」が噂になってるなんて……。

　どれぐらいの規模の噂になってるのか分からないけど、これ以上面倒なことにならないといいな……。

　そんなことをぼんやり思って歩いてるうちに、家に着いた。

　すぐに部屋に行こうと思ったけど、聞こえてくる声につられ

「ただいま」

「おかえりなさい」
「あ、おかえりー」

　リビングを覗くと、トランクスさんとお姉ちゃんが楽しそうにお茶を飲んでた。

　それを見て、何故かモヤッとしたのは、多分今日一日、仁美のせいで疲れてたから……。
　
　だと思う。

　このままリビングに入ると、更に心がモヤッとする気がして、部屋に行こうとすると

「あんた、今日早いじゃない。レッスン室行かなかったの？」

　お姉ちゃんが、リビングの入口に立つ私に声をかけた。

「うん。今日は家で練習しようと思って」

　弱い笑顔をつくってから、私はすぐに回れ右をして部屋に向かった。