「すいません。こんな時間に」

　軽く頭を下げてから「ちょっといいですか」と、トランクスさんを外へと連れ出した。

　庫裡から少し離れた場所まで行き

「梨子の具合はどうですか？」

　とりあえず、梨子のようすを尋ねた。

　すると

「もう、熱も下がってるので、明日は学校に行くそうです」

　トランクスさんは安堵の表情を浮かべ答えた。

「そうですか。そりゃよかった」

　トランクスさん同様、一応安心した。という顔をした私は、それから

「あの。今日は、トランクスさんに言いたいことがあって来たんです」

　本題を切り出した。

「何でしょう？」

　最初、心当たりがない。そんな顔をしていたトランクスさんだったが、じとりと見据える私の視線で悟ったのか

「あ、あの……。もしかして、梨子さんを抱えて帰って来てしまったことでしょうか……？」

　思い当たることといえば、これしかない。

　といったふうに、尋ねてきた。

　私は更にじとっと目を細め、トランクスさんを見据えながら

「ああ。分かってるんですね」

　小さい頷きを繰り返し

「町でちょっとした噂になってるんですよ。なので、もう二度とやらないでもらえますか」

　淡々と釘を刺した。

　片手を腰に当て、冷たい視線を向ける私に、トランクスさんは「う、噂……？！」そう呟くと、珍しく肩を落とし

「す、すいませんでした……。気を付けます……」

　頭を下げた。

　今まで見たことのない、まるで怒られた犬のように、しゅん。と項垂れるトランクスさんの姿に面白みを感じつつ

「頼みますよ」