まじまじと俺を見る菜奈さんの視線に、こそばゆさを感じつつ

「そ、そうでしょうか？」

　父さんや悟空さんに比べれば、俺なんて……。

　少し卑屈になり返事を濁す俺に、菜奈さんはキョトンとした顔をすると

「そうよ！　どこをどう見たっていい身体じゃない！　見るからに格闘技してますって感じだもん」

　そう言ってから

「やっぱり鍛えてる人からすれば、お姫様抱っこするなんて簡単なことなのねー。こんなお腹じゃなかったら、私もお姫様抱っこしてもらいたかったなー」

　残念そうに小さく溜息を吐いた。

　俺はそんな菜奈さんに、疑問を持ち

「あの……お姫様抱っこという状態は、恥ずかしいことなんですよね？」

　尋ねると、菜奈さんはまたキョトンとした顔をしてから

「恥ずかしい？　違う違う！　お姫様抱っこと言えば、女子の夢よ！」

　答える口調には、何故か力がこもっていた。

「夢……ですか？」

「そ！　お姫様抱っこしてもらえる機会なんて普通ないのよ。体重が気になるから、こっちからして！　とも言いづらいし」

　菜奈さんは、お姫様抱っこの貴重さを説明してから

「だから、梨子嬉しかったと思うわよー。トランクス君みたいなカッコイイ子にお姫様抱っこしてもらえて！」

　にんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。



　菜奈さんはああ言っていたが、梨子さんは本当に嬉しかったんだろうか……。

　俺を拒絶するように、目を逸らし、ドアを閉めた彼女の姿を思い出すと、到底菜奈さんの言ったようには思えない。

　俺は布団の中から常夜灯のオレンジ色を見つめ、溜息を吐いた。