「お役に立ててよかったです」　

　空回りした後に、人の役に立てたことで救われた気がして、思わず苦い笑みを浮かべていると

「あのさ、トランクス君。もしかして、梨子のこと、学校まで迎えに行ってくれたの？」

　菜奈さんは、怪訝な顔で尋ねてきた。

　その顔を見た途端、ギクリとした。

　この地球で俺と梨子さんは「まだ知り合ったばかり」ということになっている。

　そんな知り合って間もない人間が、熱を出した梨子さんを学校まで迎えに行くなんて、出過ぎた真似どころの話しじゃない。

　しまった……！

　という文字を頭の中で響かせながら、嘘をつくのも後ろめたく「え、ええ……」と返事をすると、菜奈さんは

「まさか、学校からお姫様抱っこで帰って来たわけじゃないよね？」

　眉間に皺を寄せ、俺をじっと見つめてきた。

　やはり、抱きかかえて帰って来てしまったことは問題だったのだろうか……。

　不安に感じながらも

「は、はい。学校からです……」

　非難されるのを覚悟で、絞り出すように正直に答えると、菜奈さんは「マジで？！」って驚いた声をだしたかと思うと、次には「あはははは！」と大きな声で笑いだした。

　そんな菜奈さんに驚いて、ギクリとしている俺に

「ああ、ゴメンゴメン！」
　
　菜奈さんは笑いを静めると

「いや、それにしても、いくら近いっていっても、お姫様抱っこしたまま帰って来るなんて、スゴいわね！」

　感心……というより、観察するような目で俺を見ながら

「まぁ、トランクス君いい身体してるもんね」

　納得するように頷いた。