心配させたくないのもあって、微笑んで答えると、私が下りて来たことに気付いたお母さんが台所から出て来た。
　
　お母さんは出て来るとすぐに

「ちょっと、大丈夫？」

　心配そうに私の傍まで来て

「あんたが熱出すなんて、ビックリしたわよ」

　驚いた顔でしみじみと私を見た。

「私もビックリだよ……。熱出すのなんて、久しぶりだから」

　前にいつ出したのか覚えてないくらいの、突然の発熱。

　それに、驚いてるのは自分自身だった。

　何で急に熱が出たのか、原因がさっぱり分からない。

　首を傾げる私に

「菜奈も言ってたけど、夏の疲れが出たのかもしれないわね。今年の夏も暑かったから」

　お母さんは思い出すように言ってから

「それで、ご飯はどうする？　一応、おかゆは作ってあるんだけど」

　食欲の有無を尋ねてきた。

　それに私は

「ううん。いい……。また寝て来る」

　首を横に振ると、お母さんは「そう」と呟いて

「じゃあ、また明日にでも食べなさい」

　自分の部屋に戻ろうと、回れ右をした私の背中に声をかけた。

「うん……ありがとう。おやすみ」

　お母さんのありがたみを感じ、温かい気持ちになってリビングを出た私だったけど、実は少しガッカリしてた。

　それは、リビングにトランクスさんがいなかったから。

　でも。もし、トランクスさんがいたとしても、あんな態度を取った後に、どんな顔をしたらいいか分からない。

　私は冷たい態度を取ったことを後悔して

　トランクスさんに謝らなきゃ……。

　ぽつり反省の言葉を呟くと、項垂れながら階段を上り、部屋へ戻った。