梨子さん！

　俺は心の中で彼女の名前を叫ぶと、思わず彼女のもとへ走り出していた。

　俺を見るなり、目を丸くする梨子さんに

「大丈夫ですか？」

　尋ねると、梨子さんは「は、はい……」と頷いてから

「あ、あの。トランクスさん……どうしたんですか？」

　眉を寄せ、困惑の表情を浮かべた。

　戸惑う彼女に

「菜奈さんから、梨子さんが熱を出したと聞いて……それで、迎えに来たんです」

　そう答えると

「さぁ、帰りましょう」

　俺は梨子さんを抱きかかえ、学校を後にした。



　家に着くまでの間、梨子さんは「歩けますから下ろしてください」と何度も言ってきたが、俺は「いけません」と首を横に振り、彼女を抱えたまま歩き続けた。

　そしてそのまま龍泉寺まで帰り、庫裡の玄関を開けたところで

「本当に大丈夫ですから下ろしてください……！」

　梨子さんが、先程より強い口調で言ってきた。

　しかし俺は

「いえ、部屋まで行きます」

　首を横に振り、玄関へ上がると、梨子さんの部屋がある二階に行くため、階段へと向かった。

　すると

「おかえり」という菜奈さんの声が、リビングの方から聞こえてきた。

　廊下に出て来た菜奈さんは、俺たちを見るなり「えっ？！」と唖然とした顔をしてから

「はー。やっぱり、外国の人はやることが違うわねー」

　唸りながら、俺たちの方に近付いて来た。

　そして、菜奈さんはニヤッとした表情で梨子さんの顔を覗き込むと