いま、この地球にいるトランクスさんに対するこの気持ちは恋なのか、それとも、ただ好きだったトランクスさんを重ねてるだけなのか……。

　この疑問が、もう三日も前から私の心を揺らし続けてて、早く解決したくて仕方なかった。

　だって。

　あの狭い家で一緒に暮らすトランクスさんと顔を合わせる度、どんな顔をしてればいいか分からないんだもん……！

　私は深い溜息をこっそり吐きだすと、首を捻って、窓の外に広がる青い空を見つめた。



「本当によくなったわ！」

　そう言って絶賛する先生に、私は笑顔を浮かべて誤魔化すしかなかった。

　この地球では数日しか経ってないけど、私はこの曲を向こうの地球にいる数ヵ月の間にしっかり弾き込んできた。

「練習した時間は裏切らない」

　そんな言葉通り、私は課題曲のショパンの『バラード第二番』をかなり弾きこなせるようになってた。

　だから、先生からしてみれば、あれだけグダグダだった演奏が、たった数日の間にこれだけ上達してたら驚くのは当然だと思う。

　レッスンの度に、激しくダメ出しされたこと思い出すと、何だか仕返しが出来たみたいで、私は思わずガッツポーズしちゃいそうだった。

「この短期間にだいぶ練習してきたみたいね。よし、じゃあもう一回弾いてから、次の課題曲にいきましょうか」

　唸ってから、いまの演奏がまぐれじゃないことを確かめるように、先生はもう一度演奏を求めてきた。

「はい」って従順なフリをして、もう一度ピアノに向かって演奏しようとした瞬間、頭の中がグラッとして、鍵盤の上に置いた指が動かせなくなった。



「三十八度ね」