ベジータさんが箸を止め、そう言った。

　そして

「こっちに来てからほとんど動いてないからな。あの量で十分だ」

　納得させる言葉を続け、また天丼を食べ進めた。

　動いてないと腹が減らない……！？

　ベジータさんからサラッと発せられた台詞に、私は密かに衝撃を受けた。

　サイヤ人て人種は、何をせずとも大食いだと思っていたが、そうではないことを初めて知った。

　そうか……。動かなかったらあの食欲は発揮されないのか！

　それなら、梨子の家に食費の負担をかけることもないか……。

　ホッとしたが、さっきベジータさんに修行解禁したことを思い出してギクッとした。

　マズイ……！

　鯵の開きをほぐしていた、箸が止まる。

　修行やりはじめたら、滅茶苦茶腹減るじゃん……！

　すぐに、修行を許可したことを後悔した。

　が、いまさっき言ったことを覆すのは、己が廃る……！

　そう思うと、目の前に座る大飯食らいたちの食事をどうにかしなければ……！　と一人焦った。

　何かいい案はないか……！？

　必死に脳内の引き出しを引っ張り出す私の隣りから

「あの量で足りてたんですね！　よかったー」

　大いに安心する梨子の声が聞こえ、私はますます焦ることになった。



　お腹いっぱい……というより、頭の中がいっぱいになりながら、店を出た。

　天頂を過ぎ、少し弱った陽を見上げ、密かに溜息を吐いてる私の傍で

「すみません、梨子さん。ご馳走になってしまって……」

　トランクスさんが梨子に頭を下げた。