「トランクスさんて、海似合いますね」

　陽に照らされた、キラキラと輝く髪を靡かせ、梨子さんが微笑んだ。

　普段と違い、どことなく大人っぽさを感じるその顔に、胸が激しく波打つ。

　それが表に出ないように、何とか抑えながら

「そ、そうですか？」

　俺は視線を梨子さんから、目の前の海へと逸らした。

「瞳の色が海みたいに青いからかな？　あ。それに、爽やかだし！」

　海が似合うと思った理由を、楽しそうに話す梨子さんに、くすぐったい気持ちになる。

　俺に海が似合ってるかどうかは分からないが、梨子さんが少しでも、俺のことを考えてくれたことが、嬉しくてたまらない。

「海が似合うなんて、初めて言われましたよ。それなら、アレをやれば、もっと海が似合うようになるかもしれませんね」

　顔をぐるっと海岸の方に戻し、サーフィンをしている人たちを見つめた。

　色とりどりのサーフボードが波に乗る度、海に白い波が描かれていく。

　海のレジャーなんて、これまで縁がなかったな……。

　そんなことを思っていると

「それ、いいかも！　トランクスさんすごく似合いそう！」

　いいアイディアだというふうに、梨子さんが笑顔で、俺の顔を覗き込んできた。

　近いその距離と笑顔にドギマギしながら「そ、そうですか？」照れながら答えたのだが、次の瞬間

「あっ、やっぱりダメ！　サーフィンなんてしたら、もっとモテちゃう！」

　梨子さんは、慌てて首を振り、サーフィン案を取り下げた。