サソリ編
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煌びやかな露店が立ち並び、遠くから祭囃子が聞こえる。そんな幼い頃見た縁日のままの風景が其処にあって、懐かしさに心が躍る。
今夜はアジトのある川の国の、真夏の恒例行事として催される某神社の縁日と花火大会。
サソリと恋人同士になってから初めて迎える夏だから、絶対一緒に参加したいとこの日をどれだけ心待ちにしていたことか。非番のサソリを誘い(リーダーにお願いしたことは内緒)、賑やかな方が楽しいから、とデイダラとデイダラの彼女を誘って行くことにした。
サソリはというと、何でこいつらと?と言った様子の苛立ち全開の表情であったが、必死にお願いすると渋々着いてきてくれたので、取り敢えずは一安心。
目の前では、金魚掬いの露店で大はしゃぎするデイダラと彼女。その様子を見ているだけで楽しくなるが、一方で隣のサソリはというと、つまらない、といった表情。
それもそうだな、と感じ取り、はしゃぐ二人を残して、こちらも折角だから二人だけで縁日を楽しむことにした。
すると、少し背後から此方に向けられている視線に気付く。視線だけでなく、ヒソヒソと女の子同士が語らう声。
同じ女だから直ぐに悟ってしまう。粋に着崩した浴衣に身を包み、不思議な大人の色気を纏った中性的な美少年はこの人混みの中でも目立つ。それほどに、今夜の彼はいつに増して美しく魅力的である。女性たちの目に止まらない筈がない。
分かってはいても、そんな視線にすら嫉妬してしまう。
胸の前で組んでいたサソリの片方の腕に、するりと自分の腕を回した。
「ねぇ...サソリ。わたしたちも...ゆっくり回りませんか」
「フン...あいつら、相手にしてらんねぇな」
「神社の近くで神輿が見られるみたいですよ...」
と話しながら然りげ無く向き合うと、開いた胸元を閉じるように襟元を直してみせる。一瞬不審そうに見つめていたが特に気に障る様子はなく、再び腕を組み直すと祭囃子が聞こえる方角へと、歩き始める。
それでも先程の女の子達は何故か後を付いてくる。それだけじゃなく、林檎飴を買おうとしたところ、店娘がサソリに見惚れて売り物を取り落す始末だ。うかうかと物も買えない。
なんとかもう少しカモフラージュしようと、お面が飾られた露店でアレコレ吟味し、狐の面を被せて見せようとする。
だが、その狐面すらもサソリの妖しい魅力を尚更掻き立ててしまう結果にしかならない。
うーん。と困惑した表情で向き合う。
と、当然ながら、あからさまに不機嫌になるサソリ。
「おい、何する気だ」
「あ、いえ...すみません」
「さっきから何だ。気に入らねぇんならはっきり言え」
「いえ...気に入らないのではなくて...」
曇った表情のまま舌打ちをしたかと思うと、ぐい、と腕を引かれ参道から逸れた木陰に入る。
幹を背に不機嫌な顔が目の前にある。
こうして二人で人混みに出るのは随分久しぶりなのだが、以前にも傀儡を脱いだ姿で偶然街を歩いた時に同じような経験をしたことを思い出す。その時は恋仲ではなく、嫉妬する筋合いもなくただ独り善がりな感情を抑え込んだのだった。
「ごめんなさい...サソリ...」
ギロリと怒気を含んだ視線で射抜かれる。
「そんなに俺と居るのが嫌か...?」
「ち、違います...そんなんじゃなくて...」
「だったら何だ...言わねぇとこのまま帰るぞ」
帰る、と放たれた言葉にズキンと胸が締め付けられる。折角楽しみにしていたデートがこのままでは台無しになってしまう。
「そんな...帰るなんて言わないでください。折角の楽しいデートなのに...」
「楽しいだ?フン...俺は最初から不愉快極まりねぇがな」
「そんなこと...」
抑揚のない冷たい言葉。罵られることには慣れている筈なのに、今夜ばかりは切なくて哀しくて...抑えきれそうもない。この日の為に、ただサソリに褒めて貰いたくて、揃いの浴衣も髪飾りも...お化粧も、ネイルだって綺麗にしてきたというのに。
背後では煌びやかで華やかな縁日が続いている、相反して俯き伏せた睫毛が頬に長い影を落とす。苦しくて何も言葉を紡げなくなり、涙を堪えるようにきゅ、と唇を噛む。
すると、ふわりと頬に端正な指先が伸ばされた。言葉に反して、その柔らかい仕草に心を掻き毟られる。
「相変わらず鈍いな...漸く二人になれたってのに」
「え...?」
頬に添えられた掌はそのまま顎先へ滑り、首元から、いつもは髪で隠れた襟足へと這う。その柔らかで慈しむような指先の滑らかさにゾクリと背筋に甘い感覚が拡がる。
今夜はアジトのある川の国の、真夏の恒例行事として催される某神社の縁日と花火大会。
サソリと恋人同士になってから初めて迎える夏だから、絶対一緒に参加したいとこの日をどれだけ心待ちにしていたことか。非番のサソリを誘い(リーダーにお願いしたことは内緒)、賑やかな方が楽しいから、とデイダラとデイダラの彼女を誘って行くことにした。
サソリはというと、何でこいつらと?と言った様子の苛立ち全開の表情であったが、必死にお願いすると渋々着いてきてくれたので、取り敢えずは一安心。
目の前では、金魚掬いの露店で大はしゃぎするデイダラと彼女。その様子を見ているだけで楽しくなるが、一方で隣のサソリはというと、つまらない、といった表情。
それもそうだな、と感じ取り、はしゃぐ二人を残して、こちらも折角だから二人だけで縁日を楽しむことにした。
すると、少し背後から此方に向けられている視線に気付く。視線だけでなく、ヒソヒソと女の子同士が語らう声。
同じ女だから直ぐに悟ってしまう。粋に着崩した浴衣に身を包み、不思議な大人の色気を纏った中性的な美少年はこの人混みの中でも目立つ。それほどに、今夜の彼はいつに増して美しく魅力的である。女性たちの目に止まらない筈がない。
分かってはいても、そんな視線にすら嫉妬してしまう。
胸の前で組んでいたサソリの片方の腕に、するりと自分の腕を回した。
「ねぇ...サソリ。わたしたちも...ゆっくり回りませんか」
「フン...あいつら、相手にしてらんねぇな」
「神社の近くで神輿が見られるみたいですよ...」
と話しながら然りげ無く向き合うと、開いた胸元を閉じるように襟元を直してみせる。一瞬不審そうに見つめていたが特に気に障る様子はなく、再び腕を組み直すと祭囃子が聞こえる方角へと、歩き始める。
それでも先程の女の子達は何故か後を付いてくる。それだけじゃなく、林檎飴を買おうとしたところ、店娘がサソリに見惚れて売り物を取り落す始末だ。うかうかと物も買えない。
なんとかもう少しカモフラージュしようと、お面が飾られた露店でアレコレ吟味し、狐の面を被せて見せようとする。
だが、その狐面すらもサソリの妖しい魅力を尚更掻き立ててしまう結果にしかならない。
うーん。と困惑した表情で向き合う。
と、当然ながら、あからさまに不機嫌になるサソリ。
「おい、何する気だ」
「あ、いえ...すみません」
「さっきから何だ。気に入らねぇんならはっきり言え」
「いえ...気に入らないのではなくて...」
曇った表情のまま舌打ちをしたかと思うと、ぐい、と腕を引かれ参道から逸れた木陰に入る。
幹を背に不機嫌な顔が目の前にある。
こうして二人で人混みに出るのは随分久しぶりなのだが、以前にも傀儡を脱いだ姿で偶然街を歩いた時に同じような経験をしたことを思い出す。その時は恋仲ではなく、嫉妬する筋合いもなくただ独り善がりな感情を抑え込んだのだった。
「ごめんなさい...サソリ...」
ギロリと怒気を含んだ視線で射抜かれる。
「そんなに俺と居るのが嫌か...?」
「ち、違います...そんなんじゃなくて...」
「だったら何だ...言わねぇとこのまま帰るぞ」
帰る、と放たれた言葉にズキンと胸が締め付けられる。折角楽しみにしていたデートがこのままでは台無しになってしまう。
「そんな...帰るなんて言わないでください。折角の楽しいデートなのに...」
「楽しいだ?フン...俺は最初から不愉快極まりねぇがな」
「そんなこと...」
抑揚のない冷たい言葉。罵られることには慣れている筈なのに、今夜ばかりは切なくて哀しくて...抑えきれそうもない。この日の為に、ただサソリに褒めて貰いたくて、揃いの浴衣も髪飾りも...お化粧も、ネイルだって綺麗にしてきたというのに。
背後では煌びやかで華やかな縁日が続いている、相反して俯き伏せた睫毛が頬に長い影を落とす。苦しくて何も言葉を紡げなくなり、涙を堪えるようにきゅ、と唇を噛む。
すると、ふわりと頬に端正な指先が伸ばされた。言葉に反して、その柔らかい仕草に心を掻き毟られる。
「相変わらず鈍いな...漸く二人になれたってのに」
「え...?」
頬に添えられた掌はそのまま顎先へ滑り、首元から、いつもは髪で隠れた襟足へと這う。その柔らかで慈しむような指先の滑らかさにゾクリと背筋に甘い感覚が拡がる。