DAY DREAM
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任務を終えたその日、久々に訪れた自由な時間。
作品づくりに不可欠な、あの上質な土がどうしても欲しくなって――オイラは、とある国を目指すことにした。
「一人で行け。勝手にしろ。俺を巻き込むな」
いつも通り、冷たく突き放してくるサソリの旦那。だが、今回はなぜか――一緒に来た。
理由は語らない。だが旦那には旦那なりの、隠された目的があるらしい。
荒涼たる砂漠の上空を、二人並んで飛ぶ。目指すのは、灼熱の海にぽつんと浮かぶような、小さな緑の国。
そこは他国との関係を断ち、独自の陶芸文化を育んでいた。名高いその土は、黄土を主に、木節と珪石を加えて練り上げる伝統の白土――その国でしか手に入らない、逸品だ。
こんなすげー土、手に入れなきゃ嘘ってもんだろ?
良い土があると聞けば、どんなに遠かろうが、どんなに骨が折れようが、オイラは必ずそれをこの掌に掴んできた。
「落ちるなよ」
不意に、旦那が言った。
「落ちるわけねーだろ? オイラって中忍以下のガキかよ」
バカにされた気がして、反射的に言い返す。だが、旦那はそれ以上何も言わなかった。
「……そういう意味じゃない」
「じゃあ、どーゆー意味だよ?」
ただの疑問として問い返したのに、旦那は珍しく目をそらした。
――ああ、やっぱ図星か。
ふいに視線をそらしたその横顔を、じっと見つめた。綺麗な顔だった。
言葉はなくても、その沈黙が、何かを語っていた。
目的地に着き、目当ての土を手に入れたとき、旦那はぽつりと言った。
「楽しそうだな」
当然だ。楽しくないわけがねぇ。
だって、芸術家にとって素材を手に入れるってことは、新たな命を手にするってことだから。
――任務完了。長居は無用。再び砂漠を越えて帰還の途へ。
旦那の用事は結局謎のままだったが、それで構わない。
オイラにはオイラの、芸術の道があるんだ。きっと旦那も、何かを求めていたんだろう。それならなおさら――負けてらんねぇ。
手に入れた土を抱えて部屋へ戻り、創作に没頭する。
手のひらに吸いつく、しっとりとした土の感触。チャクラとの相性を確かめ、粘土を練る。この瞬間が、何より好きだ。
けれど疲労は限界に近く、いつの間にか作業台の上で眠ってしまっていた――
そして、奇妙な夢を見た。
夜の砂漠を、ひとり歩く。
昼の熱気が嘘のように冷え込んだ、氷点下の静寂。
踏みしめる砂の音だけが、耳を打つ。星が瞬く音さえ聞こえそうな夜空の下、オイラはただ歩き続けた。
目的はひとつ。
究極の芸術を完成させるための、特別な土を探す旅。
やがて丘を二つ越え、小さな水場を見つける。傍らに腰を下ろすと、そこに――一体の人形が横たわっていた。
誰がいつ、何のために置いたのかはわからない。だがそれは、今にも動き出しそうなほど精巧で、妙に寂しそうな顔をしていた。
深紅の髪。整った輪郭。その姿は、まるでサソリの旦那そのもの――なのに、夢の中のオイラは、それが旦那だとは気づかなかった。
「……こんなに綺麗なのにな」
なのに、こんな場所にひとりきり。
砂を払い、外套を脱いで人形にかける。笠も被せてやる。理由なんてない。夢だから。
いや、もし理由があるとすれば――寂しそうだったからだ。
そのまま土は見つからず、オイラは夢の中の里へ戻った。
そしてある夜、その人形がオイラの元を訪ねてきた。
真夜中に、ひとりで。まるで、忘れられた何かを思い出すように。
「なんだよ、こんな夜中に」
「……」
「何か言いたいことがあんだろ?」
「……」
「黙ってたって、わかんねぇよ、うん」
顔はやっぱり、旦那にそっくりだった。でも、ここには旦那はいないから――これは、夢の中で初めて見る綺麗な顔だった。
人形は何も語らないまま、外套を返し、深々と頭を下げた。
「……いいよ。それ、お前にやったんだからな。もうお前のもんだ、うん」
そう言ってもう一度着せてやると、人形は突然、オイラにしがみついた。
軽い。冷たい。でも不思議と、その抱擁が心地よかった。
それからの日々、人形は常にオイラの傍にいた。
制作を手伝い、土を探し、炊事や掃除もしてくれた。夜になると、二つ並べた布団のうち、必ずオイラのほうに潜り込んできた。
「お前、オイラといて楽しいか?」
問いかけても、やっぱり黙ったまま。
それでも思う。あんな砂漠の真ん中に一人でいたなら、きっと寂しかったに違いない。あの夜、オイラの中に芽生えた感情も、たぶん同じだ。
そしてある日、オイラは人形に、ある場所へ土を取りに行くよう頼んだ。
以前一緒に行った場所だから大丈夫――そう思って。
けれど午後、空模様が崩れ、激しい雨が降り出した。
いつまで経っても人形が戻らず、オイラはたまらず雨の中を探しに出た。心がざわめく。
山裾から獣のような音が轟いた。崖崩れだ。
崩れ落ちた採掘場へ駆け込む。見渡す限り、土砂の山。
「まさか……」
オイラは無我夢中で掘り返した。手が切れ、爪が割れ、泥にまみれて、それでも必死に。
ふと気づけば、雨は止んでいた。
冷えた空気が辺りを包み、夜空にはあの夜と同じ、星がきらめいていた。
その瞬間、オイラは生まれて初めて――泣いた。
声を上げて、涙がとめどなく流れた。人形なんて、ただのものだ。
――でも、誰よりも大切な存在だった。
そのとき、近くで音がした。カタカタ、と微かな振動。
顔を上げると、泥にまみれた人形が立っていた。
無言で駆け寄ってくる。濡れた髪、汚れた顔。それでも、笑っているように見えた。
「はは、はははは……」
オイラは泣き笑いしながら、その身体を抱きしめた。
愛しくて、苦しくて、胸が張り裂けそうだった。
「ありがとな。雨の中、よく頑張ったな、うん」
人形が抱えていた木桶の中には、粒の揃った、見事な土。
けど――もうどうでもよかった。土なんてまた集めればいい。こいつが無事だった、それだけで十分だった。
「……風呂、沸かさねぇとな。二人ともドロドロだしよ、うん」
疲れないはずの人形が、どこか疲れたように見えた。
だから、背中に背負って家まで帰った。胸の奥が、ずっと温かかった。
「そうだ。お前に名前、つけてなかったよな……何がいいかな……サソ――」
ドンッ、と頭を打つ衝撃。
脳天に突き刺さる激痛と、眼を灼くような閃光。
「いってぇぇぇぇ!!!」
飛び起きると、ヒルコの尾が頭に突き刺さっていた。
「いつまで寝てやがる、クソガキ」
「痛ってぇな! 殺す気かよ、旦那ァ!」
「フン、起きねぇならケツまで刺すところだったがな」
「おっかねぇな、ったく……」
混乱する思考。あれは夢だった。
……でも、あんなに綺麗で、優しい旦那が夢だなんて、やっぱり信じたくねぇ。
「……あんなに……」
「ん? 今なんつった?」
「いや、なんでもねぇよ、うん……」
「任務だ。行くぞ」
「はいはい」
ヒリヒリ痛む頭を押さえながら、今日も変わらず短気な旦那の背中を追う。
夢と現実の狭間で、まだ意識が揺れている。
「でも……あっちが本物なんじゃね?」
サソリの旦那は素直じゃない。
でも、あれは願望なんかじゃなかったと思う。二人の本当の――
「早くしろ。俺を待たせるんじゃねぇ」
呼ばれたデイダラは、何も言わずにその背中を追う。
夢とは逆の立場。けれど、似ている。
だって、オイラと旦那はいつも一緒なんだから。
夢の中のあれが本心なら――オイラは、それを信じても、きっと、いいよな。
作品づくりに不可欠な、あの上質な土がどうしても欲しくなって――オイラは、とある国を目指すことにした。
「一人で行け。勝手にしろ。俺を巻き込むな」
いつも通り、冷たく突き放してくるサソリの旦那。だが、今回はなぜか――一緒に来た。
理由は語らない。だが旦那には旦那なりの、隠された目的があるらしい。
荒涼たる砂漠の上空を、二人並んで飛ぶ。目指すのは、灼熱の海にぽつんと浮かぶような、小さな緑の国。
そこは他国との関係を断ち、独自の陶芸文化を育んでいた。名高いその土は、黄土を主に、木節と珪石を加えて練り上げる伝統の白土――その国でしか手に入らない、逸品だ。
こんなすげー土、手に入れなきゃ嘘ってもんだろ?
良い土があると聞けば、どんなに遠かろうが、どんなに骨が折れようが、オイラは必ずそれをこの掌に掴んできた。
「落ちるなよ」
不意に、旦那が言った。
「落ちるわけねーだろ? オイラって中忍以下のガキかよ」
バカにされた気がして、反射的に言い返す。だが、旦那はそれ以上何も言わなかった。
「……そういう意味じゃない」
「じゃあ、どーゆー意味だよ?」
ただの疑問として問い返したのに、旦那は珍しく目をそらした。
――ああ、やっぱ図星か。
ふいに視線をそらしたその横顔を、じっと見つめた。綺麗な顔だった。
言葉はなくても、その沈黙が、何かを語っていた。
目的地に着き、目当ての土を手に入れたとき、旦那はぽつりと言った。
「楽しそうだな」
当然だ。楽しくないわけがねぇ。
だって、芸術家にとって素材を手に入れるってことは、新たな命を手にするってことだから。
――任務完了。長居は無用。再び砂漠を越えて帰還の途へ。
旦那の用事は結局謎のままだったが、それで構わない。
オイラにはオイラの、芸術の道があるんだ。きっと旦那も、何かを求めていたんだろう。それならなおさら――負けてらんねぇ。
手に入れた土を抱えて部屋へ戻り、創作に没頭する。
手のひらに吸いつく、しっとりとした土の感触。チャクラとの相性を確かめ、粘土を練る。この瞬間が、何より好きだ。
けれど疲労は限界に近く、いつの間にか作業台の上で眠ってしまっていた――
そして、奇妙な夢を見た。
夜の砂漠を、ひとり歩く。
昼の熱気が嘘のように冷え込んだ、氷点下の静寂。
踏みしめる砂の音だけが、耳を打つ。星が瞬く音さえ聞こえそうな夜空の下、オイラはただ歩き続けた。
目的はひとつ。
究極の芸術を完成させるための、特別な土を探す旅。
やがて丘を二つ越え、小さな水場を見つける。傍らに腰を下ろすと、そこに――一体の人形が横たわっていた。
誰がいつ、何のために置いたのかはわからない。だがそれは、今にも動き出しそうなほど精巧で、妙に寂しそうな顔をしていた。
深紅の髪。整った輪郭。その姿は、まるでサソリの旦那そのもの――なのに、夢の中のオイラは、それが旦那だとは気づかなかった。
「……こんなに綺麗なのにな」
なのに、こんな場所にひとりきり。
砂を払い、外套を脱いで人形にかける。笠も被せてやる。理由なんてない。夢だから。
いや、もし理由があるとすれば――寂しそうだったからだ。
そのまま土は見つからず、オイラは夢の中の里へ戻った。
そしてある夜、その人形がオイラの元を訪ねてきた。
真夜中に、ひとりで。まるで、忘れられた何かを思い出すように。
「なんだよ、こんな夜中に」
「……」
「何か言いたいことがあんだろ?」
「……」
「黙ってたって、わかんねぇよ、うん」
顔はやっぱり、旦那にそっくりだった。でも、ここには旦那はいないから――これは、夢の中で初めて見る綺麗な顔だった。
人形は何も語らないまま、外套を返し、深々と頭を下げた。
「……いいよ。それ、お前にやったんだからな。もうお前のもんだ、うん」
そう言ってもう一度着せてやると、人形は突然、オイラにしがみついた。
軽い。冷たい。でも不思議と、その抱擁が心地よかった。
それからの日々、人形は常にオイラの傍にいた。
制作を手伝い、土を探し、炊事や掃除もしてくれた。夜になると、二つ並べた布団のうち、必ずオイラのほうに潜り込んできた。
「お前、オイラといて楽しいか?」
問いかけても、やっぱり黙ったまま。
それでも思う。あんな砂漠の真ん中に一人でいたなら、きっと寂しかったに違いない。あの夜、オイラの中に芽生えた感情も、たぶん同じだ。
そしてある日、オイラは人形に、ある場所へ土を取りに行くよう頼んだ。
以前一緒に行った場所だから大丈夫――そう思って。
けれど午後、空模様が崩れ、激しい雨が降り出した。
いつまで経っても人形が戻らず、オイラはたまらず雨の中を探しに出た。心がざわめく。
山裾から獣のような音が轟いた。崖崩れだ。
崩れ落ちた採掘場へ駆け込む。見渡す限り、土砂の山。
「まさか……」
オイラは無我夢中で掘り返した。手が切れ、爪が割れ、泥にまみれて、それでも必死に。
ふと気づけば、雨は止んでいた。
冷えた空気が辺りを包み、夜空にはあの夜と同じ、星がきらめいていた。
その瞬間、オイラは生まれて初めて――泣いた。
声を上げて、涙がとめどなく流れた。人形なんて、ただのものだ。
――でも、誰よりも大切な存在だった。
そのとき、近くで音がした。カタカタ、と微かな振動。
顔を上げると、泥にまみれた人形が立っていた。
無言で駆け寄ってくる。濡れた髪、汚れた顔。それでも、笑っているように見えた。
「はは、はははは……」
オイラは泣き笑いしながら、その身体を抱きしめた。
愛しくて、苦しくて、胸が張り裂けそうだった。
「ありがとな。雨の中、よく頑張ったな、うん」
人形が抱えていた木桶の中には、粒の揃った、見事な土。
けど――もうどうでもよかった。土なんてまた集めればいい。こいつが無事だった、それだけで十分だった。
「……風呂、沸かさねぇとな。二人ともドロドロだしよ、うん」
疲れないはずの人形が、どこか疲れたように見えた。
だから、背中に背負って家まで帰った。胸の奥が、ずっと温かかった。
「そうだ。お前に名前、つけてなかったよな……何がいいかな……サソ――」
ドンッ、と頭を打つ衝撃。
脳天に突き刺さる激痛と、眼を灼くような閃光。
「いってぇぇぇぇ!!!」
飛び起きると、ヒルコの尾が頭に突き刺さっていた。
「いつまで寝てやがる、クソガキ」
「痛ってぇな! 殺す気かよ、旦那ァ!」
「フン、起きねぇならケツまで刺すところだったがな」
「おっかねぇな、ったく……」
混乱する思考。あれは夢だった。
……でも、あんなに綺麗で、優しい旦那が夢だなんて、やっぱり信じたくねぇ。
「……あんなに……」
「ん? 今なんつった?」
「いや、なんでもねぇよ、うん……」
「任務だ。行くぞ」
「はいはい」
ヒリヒリ痛む頭を押さえながら、今日も変わらず短気な旦那の背中を追う。
夢と現実の狭間で、まだ意識が揺れている。
「でも……あっちが本物なんじゃね?」
サソリの旦那は素直じゃない。
でも、あれは願望なんかじゃなかったと思う。二人の本当の――
「早くしろ。俺を待たせるんじゃねぇ」
呼ばれたデイダラは、何も言わずにその背中を追う。
夢とは逆の立場。けれど、似ている。
だって、オイラと旦那はいつも一緒なんだから。
夢の中のあれが本心なら――オイラは、それを信じても、きっと、いいよな。
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