ハツコイアザミ
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唇が触れ合った瞬間、甘く微かな震えが走った。
の小さな身体がびくりと揺れ、初めての感覚に息の仕方さえ忘れたように、震えながら瞬きを繰り返す。
あどけなさの残るその反応に、サソリは喉の奥で小さく笑った。
「……どうした、欲しかったものじゃなかったのか?」
「……っ、息が……できません……」
「鼻は塞いでねぇだろ」
戸惑いながらも、拒む素振りはない。
怯えながらも従おうとするその姿が、却って征服欲をかき立てた。
が震える声で「はい」と答え、ゆっくりと舌を差し出す。
唇の間から覗く薄紅の舌先は、どこまでも素直で、どこまでも無防備だった。
サソリはその舌に、自らのを絡めた。
湿った温もりが交差し、甘い水音が静寂の室内に響く。
深く、深く。
粘膜が擦れ合い、互いの温度が混じり合うたび、の身体は徐々に力を失っていく。
最初は戸惑いでこわばっていた肢体が、やがてとろけるように寝台へ沈んでいく。
心の奥でずっと求めていたものに触れてしまった、そんなふうに。
唇を離したとき、瑠璃の瞳は潤みを含み、どこか遠い夢を見るようにゆらいでいた。
「……は、……さそり、さま……」
息がまだ乱れている。
けれど、その声音には確かな熱が含まれていた。
サソリは、目の前の存在を見下ろす。
かつて部下だった少女――今は、自分のために全てを投げ出そうとしている女。
こんなにも脆く、愚かで、愛しいものだったか。
心の奥で、何かが静かに軋む音がした。
欲望の手前で、彼はふと動きを止めた。
このまま、強引に押し倒すこともできる。
言葉一つ、力一つで、何もかも奪える。
だが、彼女が今差し出しているものが「感情」そのものである以上、扱いを誤れば壊れてしまうこともまた、彼は知っていた。
「……あの頃と変わらねぇな。お前は、いつも俺を見ていた。」
「……はい……ずっと、見ていました……」
「……なぜ離れた」
問いかけは、思わず漏れたように低く。
自分でも意図していなかった。
伏せたまま、小さく唇を動かした。
「……好きだったから、です……
忍として、主として見ることができなくなって……側にいれば、壊れてしまいそうで……だから、嘘を吐いて、逃げました……」
涙ではなかった。
ただ、しっとりと滲むように語られる本音。
その一言ひとことが、サソリの中にずっと沈んでいた何かを刺激する。
「……バカな女だな。好きなら傍にいればよかったものを」
「……それができたなら、苦しみません……」
そうだ。
はいつも、正直だった。
臆病で、不器用で、だが嘘が下手で。
だからこそ、サソリの中で記憶に残り続けた。
サソリは静かに頬に手を添える。
指先に触れた体温が、思ったよりも熱かった。
「……生きろ、結衣」
「……?」
「俺のコレクションになるには……まだ早ぇ」
その言葉に、がわずかに笑った。
涙のかわりに、静かな安堵が瞳に浮かぶ。
「……はい」
二人の間に、再び静寂が落ちる。
だがそれは、冷たいものではなかった。
凍えた心がようやく触れ合えたような、そんな温度を帯びていた。
夜はまだ深く、雪はやまない。
けれど、その寝台にあるふたりの距離は、確かに過去よりも近づいていた。
そして、この夜を境に――
サソリとの関係は、静かに、しかし確実に変わり始めていた。
の小さな身体がびくりと揺れ、初めての感覚に息の仕方さえ忘れたように、震えながら瞬きを繰り返す。
あどけなさの残るその反応に、サソリは喉の奥で小さく笑った。
「……どうした、欲しかったものじゃなかったのか?」
「……っ、息が……できません……」
「鼻は塞いでねぇだろ」
戸惑いながらも、拒む素振りはない。
怯えながらも従おうとするその姿が、却って征服欲をかき立てた。
が震える声で「はい」と答え、ゆっくりと舌を差し出す。
唇の間から覗く薄紅の舌先は、どこまでも素直で、どこまでも無防備だった。
サソリはその舌に、自らのを絡めた。
湿った温もりが交差し、甘い水音が静寂の室内に響く。
深く、深く。
粘膜が擦れ合い、互いの温度が混じり合うたび、の身体は徐々に力を失っていく。
最初は戸惑いでこわばっていた肢体が、やがてとろけるように寝台へ沈んでいく。
心の奥でずっと求めていたものに触れてしまった、そんなふうに。
唇を離したとき、瑠璃の瞳は潤みを含み、どこか遠い夢を見るようにゆらいでいた。
「……は、……さそり、さま……」
息がまだ乱れている。
けれど、その声音には確かな熱が含まれていた。
サソリは、目の前の存在を見下ろす。
かつて部下だった少女――今は、自分のために全てを投げ出そうとしている女。
こんなにも脆く、愚かで、愛しいものだったか。
心の奥で、何かが静かに軋む音がした。
欲望の手前で、彼はふと動きを止めた。
このまま、強引に押し倒すこともできる。
言葉一つ、力一つで、何もかも奪える。
だが、彼女が今差し出しているものが「感情」そのものである以上、扱いを誤れば壊れてしまうこともまた、彼は知っていた。
「……あの頃と変わらねぇな。お前は、いつも俺を見ていた。」
「……はい……ずっと、見ていました……」
「……なぜ離れた」
問いかけは、思わず漏れたように低く。
自分でも意図していなかった。
伏せたまま、小さく唇を動かした。
「……好きだったから、です……
忍として、主として見ることができなくなって……側にいれば、壊れてしまいそうで……だから、嘘を吐いて、逃げました……」
涙ではなかった。
ただ、しっとりと滲むように語られる本音。
その一言ひとことが、サソリの中にずっと沈んでいた何かを刺激する。
「……バカな女だな。好きなら傍にいればよかったものを」
「……それができたなら、苦しみません……」
そうだ。
はいつも、正直だった。
臆病で、不器用で、だが嘘が下手で。
だからこそ、サソリの中で記憶に残り続けた。
サソリは静かに頬に手を添える。
指先に触れた体温が、思ったよりも熱かった。
「……生きろ、結衣」
「……?」
「俺のコレクションになるには……まだ早ぇ」
その言葉に、がわずかに笑った。
涙のかわりに、静かな安堵が瞳に浮かぶ。
「……はい」
二人の間に、再び静寂が落ちる。
だがそれは、冷たいものではなかった。
凍えた心がようやく触れ合えたような、そんな温度を帯びていた。
夜はまだ深く、雪はやまない。
けれど、その寝台にあるふたりの距離は、確かに過去よりも近づいていた。
そして、この夜を境に――
サソリとの関係は、静かに、しかし確実に変わり始めていた。
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