ハツコイアザミ
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夜更けの雪は音を飲み込み、深々と降り積もりゆく雪片は足元に転がる死体に落ちては音も無く溶けてしとどに、凍てつく様な低い気温の中まだ残っている体温のせいか淡く蒸気さえ上がっている。
やがてその温度も失われあと数刻もすればこれらの名残も雪が美しく覆い隠すだろう。
...と、何の感慨もなく全滅させた部隊を見下ろしていたが、風もなく雪が降りしきる空間であえかな空気の揺らぎを感じて、ふと顔を上げる。
白一面の世界にふわりと浮かぶ美しい碧。
「…蝶。」
それは気配と言えるほど空間に違和を齎すものではなかったが、その美しい蝶はいつか近くに居た者の得意とする口寄せではなかったか。
己の周囲を柔らかく舞う蝶はまるで蜜を求めて惹き寄せられているという様に感じ、導かれるままに森の奥へと顔を向ければ迷いなく足を踏み入れる。
さして広くはない森の中に分散点在する伏兵の気配を察知し、姿を現わす間も無く仕掛けを浴びせ薙ぎ倒していく。
少し先の開けた場所に纏まった部隊の気配。
ずば抜けたチャクラが一つ。だが所詮は...
チッ...餓鬼の使いだ。
内心舌打ちをしながら、静寂に包まれた森にはざ、ざ、ざとヒルコが規則正しく雪を踏み締める音だけが響き渡る。
開けたところに姿を見せれば、先程察知した小隊と出くわす。
その先頭に出た女。黒づくめでも、その線の細さからかなり若い女であることが見て取れる。
女の周囲には確かに、同じ空気感をもつ先程の碧く美しい蝶が主の身を護るかの様に無数に舞う。
吹き荒ぶ雪に混じり碧が煌めく様は中々に芸術性を感じる。
女は凛とした張のある声で此方に呼びかける。
「赤砂のサソリ...ここから先へは進ませない...」
その声を皮切りに。雪までも激しく荒ぶ風に舞って頬を撫でては生き物の熱を奪おうとする。
駆動に異常が出る前にさっさと終わらせるか、と片手を前に持ち上げれば、一人前に出た女にに向けて口角を上げて冴え凍る笑みを見せ、仕掛けを繰り出す。
「俺が進まなくとも、邪魔者を蹴散らす事は簡単だ。」
風が止んだ刹那。
ク、と指を上に速く引き上げると女の後方、雪の積もる地面から飛び上がるように現れる傀儡の腕から鋭い刃を繰り出し、背後の部隊に斬りかかる。
女が振り返ったときにはもう遅い。太刀筋が護衛達を撫でたかと思うとずるりと手首や足首が落ちて悲痛に呻き、軈て傷口から侵食した毒が神経を、組織を侵していく。
「クッ...毒か...!」
軈て苦しみ悶えていた者達が数分も経たぬうち物言わぬ骸となり白銀に沈み行く。
白に散る血の花も艶やかに、一瞬の美しさを雪が塗り潰していく様をその瞬間だけは興味をそそられているというように目を細める。
そして、再び風が止んだ。
眼前に視線を戻し、仲間の治療を諦めた女が此方に対峙すると、両目以外全てを覆い隠していた頭巾を外す。
長い黒髪が雪風に舞う。
晒されたその顔 に記憶が刺激されれば脳裏によぎったのは一人の少女。
人形のように整った顔と腰の辺りまである長い黒髪。目の色はこの蝶のように何処までも穢れのない澄んだ瑠璃色をしていたか。
「...やはり、お前か。...結衣。」
「覚えておいででしたか。何時ぞやは...世話になりました、サソリさま...」
ヒルコの中ではあるが、ほんの少し驚いたように眉が上がり、その表情にかつて上司として彼女を見ていた時の感情から柔さの様なものが滲む。
やがてその温度も失われあと数刻もすればこれらの名残も雪が美しく覆い隠すだろう。
...と、何の感慨もなく全滅させた部隊を見下ろしていたが、風もなく雪が降りしきる空間であえかな空気の揺らぎを感じて、ふと顔を上げる。
白一面の世界にふわりと浮かぶ美しい碧。
「…蝶。」
それは気配と言えるほど空間に違和を齎すものではなかったが、その美しい蝶はいつか近くに居た者の得意とする口寄せではなかったか。
己の周囲を柔らかく舞う蝶はまるで蜜を求めて惹き寄せられているという様に感じ、導かれるままに森の奥へと顔を向ければ迷いなく足を踏み入れる。
さして広くはない森の中に分散点在する伏兵の気配を察知し、姿を現わす間も無く仕掛けを浴びせ薙ぎ倒していく。
少し先の開けた場所に纏まった部隊の気配。
ずば抜けたチャクラが一つ。だが所詮は...
チッ...餓鬼の使いだ。
内心舌打ちをしながら、静寂に包まれた森にはざ、ざ、ざとヒルコが規則正しく雪を踏み締める音だけが響き渡る。
開けたところに姿を見せれば、先程察知した小隊と出くわす。
その先頭に出た女。黒づくめでも、その線の細さからかなり若い女であることが見て取れる。
女の周囲には確かに、同じ空気感をもつ先程の碧く美しい蝶が主の身を護るかの様に無数に舞う。
吹き荒ぶ雪に混じり碧が煌めく様は中々に芸術性を感じる。
女は凛とした張のある声で此方に呼びかける。
「赤砂のサソリ...ここから先へは進ませない...」
その声を皮切りに。雪までも激しく荒ぶ風に舞って頬を撫でては生き物の熱を奪おうとする。
駆動に異常が出る前にさっさと終わらせるか、と片手を前に持ち上げれば、一人前に出た女にに向けて口角を上げて冴え凍る笑みを見せ、仕掛けを繰り出す。
「俺が進まなくとも、邪魔者を蹴散らす事は簡単だ。」
風が止んだ刹那。
ク、と指を上に速く引き上げると女の後方、雪の積もる地面から飛び上がるように現れる傀儡の腕から鋭い刃を繰り出し、背後の部隊に斬りかかる。
女が振り返ったときにはもう遅い。太刀筋が護衛達を撫でたかと思うとずるりと手首や足首が落ちて悲痛に呻き、軈て傷口から侵食した毒が神経を、組織を侵していく。
「クッ...毒か...!」
軈て苦しみ悶えていた者達が数分も経たぬうち物言わぬ骸となり白銀に沈み行く。
白に散る血の花も艶やかに、一瞬の美しさを雪が塗り潰していく様をその瞬間だけは興味をそそられているというように目を細める。
そして、再び風が止んだ。
眼前に視線を戻し、仲間の治療を諦めた女が此方に対峙すると、両目以外全てを覆い隠していた頭巾を外す。
長い黒髪が雪風に舞う。
晒されたその
人形のように整った顔と腰の辺りまである長い黒髪。目の色はこの蝶のように何処までも穢れのない澄んだ瑠璃色をしていたか。
「...やはり、お前か。...結衣。」
「覚えておいででしたか。何時ぞやは...世話になりました、サソリさま...」
ヒルコの中ではあるが、ほんの少し驚いたように眉が上がり、その表情にかつて上司として彼女を見ていた時の感情から柔さの様なものが滲む。