FF7BC
◾️だって逃げるし
「歩けます!」
揺れる視界。
段々と離れていく景色が、左右に揺れる。
肩に乗せた体を固定するように、腕で大腿部を押さえられている。
動けるのは腕と膝から下。
「自分で歩けます!」
ささやかな抵抗として、手足をバタつかせてみる。
「うるさいぞ、と」
一蹴される。
抵抗が虚しくスルーされ、ガックリと肩を落とす。
ブラブラと揺れる両腕は、制服が所々破けて血が滲んでいる。
先輩のお怒りの様子にどうなってしまうんだろうという不安と、こんな格好で搬送される恥ずかしさで、涙が出てくる。
涙が頬にできた擦過傷にしみる。
「さてと」
その声で、ハッと顔を上げる。
ジョボジョボという音と、ふわふわと漂う湯気。
…バスルーム?
「いい感じかな、と」
その声と同時に、視界がグルンと回転した。
「レノさん!!」
バチャンという音と、何かにぶつかったのに沈み込む感覚。
そして、容赦なく目と鼻と口に入るあたたかい水。
浸透圧?塩分濃度?なんでもいいけど痛い。
「なんだよ、と」
いつもの余裕綽綽な顔で、レノが答える。
「なんでお風呂…」
びしょびしょに濡れた制服が、ビッタリと肌に張り付く。
髪からはポタポタと水が滴り落ちる。
「だってお前、きったないぞ、と」
汚い、というワードが何故か心に刺さる。
確かに任務で地下下水に行ったから臭いかもしれないし、狭い場所の近接戦闘でいつもよりは怪我もしたけど…汚いって。
頭の中でリフレインする『汚い』にショックを受けていたら、突如としていい匂いが漂って、頭を撫でくりまわされた。
「目ぇつぶっとけよー」
なぜか、頭を洗われている。
「レノさん!自分でできます!」
というか、着衣のままお風呂ってどういうことなの!?と思わず突っ込む。
「ほんとかなー?」
ちょっと楽しげな声は、ざばーっとかけられたお湯にかき消される。
このままではいけない、たぶんこのままコンディショナーとかまでされちゃう。
「わたし、着替え持ってないです」
何とか制止しようと手を上げ、あの!と必死に声をかける。
「俺のシャツ使えばいいだろ」
「でも、下着とか…」
そう言ったところで、ニヤニヤ顔が近づいてくる。
「下着なし申告とか、誘ってんの?」
「へ!?」
「やっだー!だいたーん!」
何を言っても敵わない。
改めてそう思い知る。
気づけば、コンディショナーで髪が整えられている。
いつもいい匂いだなあと思っている匂いに包まれていく不思議さに、されるがままに身を委ねた。
「歩けます!」
揺れる視界。
段々と離れていく景色が、左右に揺れる。
肩に乗せた体を固定するように、腕で大腿部を押さえられている。
動けるのは腕と膝から下。
「自分で歩けます!」
ささやかな抵抗として、手足をバタつかせてみる。
「うるさいぞ、と」
一蹴される。
抵抗が虚しくスルーされ、ガックリと肩を落とす。
ブラブラと揺れる両腕は、制服が所々破けて血が滲んでいる。
先輩のお怒りの様子にどうなってしまうんだろうという不安と、こんな格好で搬送される恥ずかしさで、涙が出てくる。
涙が頬にできた擦過傷にしみる。
「さてと」
その声で、ハッと顔を上げる。
ジョボジョボという音と、ふわふわと漂う湯気。
…バスルーム?
「いい感じかな、と」
その声と同時に、視界がグルンと回転した。
「レノさん!!」
バチャンという音と、何かにぶつかったのに沈み込む感覚。
そして、容赦なく目と鼻と口に入るあたたかい水。
浸透圧?塩分濃度?なんでもいいけど痛い。
「なんだよ、と」
いつもの余裕綽綽な顔で、レノが答える。
「なんでお風呂…」
びしょびしょに濡れた制服が、ビッタリと肌に張り付く。
髪からはポタポタと水が滴り落ちる。
「だってお前、きったないぞ、と」
汚い、というワードが何故か心に刺さる。
確かに任務で地下下水に行ったから臭いかもしれないし、狭い場所の近接戦闘でいつもよりは怪我もしたけど…汚いって。
頭の中でリフレインする『汚い』にショックを受けていたら、突如としていい匂いが漂って、頭を撫でくりまわされた。
「目ぇつぶっとけよー」
なぜか、頭を洗われている。
「レノさん!自分でできます!」
というか、着衣のままお風呂ってどういうことなの!?と思わず突っ込む。
「ほんとかなー?」
ちょっと楽しげな声は、ざばーっとかけられたお湯にかき消される。
このままではいけない、たぶんこのままコンディショナーとかまでされちゃう。
「わたし、着替え持ってないです」
何とか制止しようと手を上げ、あの!と必死に声をかける。
「俺のシャツ使えばいいだろ」
「でも、下着とか…」
そう言ったところで、ニヤニヤ顔が近づいてくる。
「下着なし申告とか、誘ってんの?」
「へ!?」
「やっだー!だいたーん!」
何を言っても敵わない。
改めてそう思い知る。
気づけば、コンディショナーで髪が整えられている。
いつもいい匂いだなあと思っている匂いに包まれていく不思議さに、されるがままに身を委ねた。
27/27ページ