フィレンツェ行き特急　指定席個室　
1組の男女が向かい合って座っていた。

「友人の危機なの」
「それで？どうして僕があなたとここにいるんですか？」
「あなたのスタンドが必要なの。今日中には終わるから大丈夫」
「(時間の問題ではないのですが…)」

"ヴェネチアまで往復弾丸ツアーだと思って☆"
と言ってウインクするレティシア。
そんな彼女に呆れてものも言えない男性　サンソンはここまできたらこの状況をとことん楽しもうと決めた。
発車して15分ほど経ったとき、先頭車両から奇妙な煙が流れてきた。

「煙？」
「サンソン、窓側に寄りかかって。後、なるべく音をたてないで」
「どういうことです？」
「ブチャラティを追ってる暗殺チームのスタンドよ。エニウェアで調べたけど、さっきより生体反応が少なくなってる」
「(いつの間に……)」

席から立ち上がり個室のドアを開けようとしたサンソンを手で制したレティシア。
驚いたサンソンだったが、彼女の真剣な顔つきに言われた通り窓側の壁に寄りかかる。
レティシアはスタンド（エニウェア）を使い、煙がこちらにこないように空間座標をずらした。
ついでに、自分達の前に窓側の景色を投影して姿を隠す。
しばらくすると、レティシアは壁に寄りかかって眠り始めた。
それを見たサンソンも鞄から本を取り出して読み始める。
途中、銃声が聞こえたりもしたが眠り続けたレティシア漢字（ふりがな）と読書を続けたサンソンであった。
ーーーーーーーーーー
しばらくすると…
キィィィッ、

「「停まったわね/停まりましたね」」

目を覚ましたレティシアと本から視線を上げたサンソンは同時に呟く。
レティシアはスタンドを解除して席から立ち上がる。

「どこへ行くんです？」
「友人の応援に行くのよ」

尋ねるサンソンにそう言って口角をあげるレティシア。
サンソンは嫌な予感しかしなかった。

「アリーヴェデルチ 」
「さすがブチャラティ…！」
「静かにしてないとばれますよ」
「わかってるわよ……」

長身で釣竿のスタンドを持った男性を自身のスタンドで分解し吹っ飛ばしたブチャラティ。
それを見るレティシアは目をキラキラさせながら、列車のドアから飛び出しそうなほど見いっていた。
そんなレティシアをサンソンは必死に押さえる。

嫌な予感は的中したようだ。