第2章:うたプリアワード
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「トキヤくんっ!一緒に遊びましょう!!」
「…………………分かりました」
第27話
イッチーも子犬ちゃんには弱いね、と神宮寺くんに揶揄われるトキヤくん。というのも、保養所についてすぐに彼がレッスンルームに篭ろうとしたからである。一応休暇という形でここに来た訳だから、みんな口々に、今日ぐらいは、と苦笑したのだが、何分トキヤくんも頑固で難しそうに眉間に皺を寄せた。トキヤくんのプロ根性は本当に尊敬できるけど、でも私も久しぶりにみんなと遊びたいし、そこには彼もいなければ意味がないのだ。だから「川がとても綺麗だそうです!」とか「空気が美味しいから外でご飯を食べましょう!」などと詰め寄った。なにが彼の気を引いたのかは分からないけど、それでもため息を吐きつつも了承してくれたので勝ちです。
「あのっ…!ご、ごめんなさいっ!わたし作曲で詰めてしまいたいところがあって…」
「なん、だ、と…!?」
「ご、ごめんね綾奈ちゃん!お夕飯には必ず行くから…!」
「…………うん、約束ですよ七海ちゃん」
思わぬ伏兵がいた。なんと七海ちゃんが遊べないと…………。残念すぎるけれど、作曲のことはほとんど力になれることはないし、ここで私が駄々を捏ねるのも違う訳で。ちゃんと休憩しつつやってね、と約束をしてロッジに残るという彼女を断腸の思いで置いていくことに。おっまえ本当七海のこと好きな、と呆れる翔くんに、好きにならない方がおかしいです…、と半泣きで返事をした。七海ちゃん、遊びたかった。
私はQUARTET NIGHTの皆さんの直属の後輩にあたるので、川に行ってくるという報告をする為にみんなにも先に行ってもらった。すぐ近くだから大丈夫。
先輩方のロッジにやってくると、カミュさんに黒崎さん、そして美風さんの姿が見えた。寿さんは中にいるのかな。
「お疲れ様です!私達、川の方へ行ってきますね」
「おう、さっさと行ってこい」
「待て。先に給仕をしてから、」
「ちょっとカミュ。綾奈も休暇にきてるんだから勘弁してあげなよ」
「……フンッ。仕方あるまい」
「私なら全然構いませんよ〜!」
「ダメだよ。ボクがリンゴに怒られるし」
「そ、それは…ダメですね……」
さすがに先輩にご迷惑はかけられない。月宮先生の指示も、きっと私へのご配慮なのだろうし。優しいなぁ。
そこで私は一眼レフカメラとは別にカバンに入れていたチェキカメラの存在を思い出した。すぐに現像されるこのカメラも面白いかなと思って持ってきていたのだ。
「あの!みなさん!良ければお写真撮らせてもらえませんか?」
「写真?どうして?」
「みなさんとの思い出も、その…欲しくって。だ、ダメでしたら全然大丈夫です!ご、ごめんなさい」
「…なんで謝んだよ…。写真なんざ撮られ慣れてる。勝手にやれ」
「このオレを被写体に選ぶとはな。いいだろう」
「ボクもいいよ。綾奈の撮る写真にも興味あるし」
「わ、わぁ…!ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて!」
カシャ!、と遠慮なくシャッターを切った私に黒崎さんは少し呆れていたけど、すぐに現像された写真を見て私は大満足だ。インスタントカメラの良さが出てる。そして何より被写体が素晴らしい。出来上がったものをニコニコと眺める私に隣からヒョイッと顔を覗かせた美風さんは、へぇ、と物珍しそうに写真を眺めた。もしかしてインスタントカメラに興味があるのだろうか。
使ってみますか?、とチェキカメラを差し出してみれば、いいの?、と素直に受け取る彼に私の顔が綻ぶ。画質の綺麗なカメラも勿論いいけれど、こういう粗さのあるカメラもまたいいものだ。
「是非使ってください!美風さんが何を撮るのか見てみたいです!」
「…そう言われると分からないな。綾奈は何を基準にして被写体を決めてるの?」
「そうですねぇ…。なんとなくいい感じだって思ったものとか、目に留まったものとか…。とにかく正解はないですし、色々撮ってみてください!」
「分かった。…じゃあとりあえず綾奈との写真がいいかな」
「え?」
「ハイ、チーズ。…って言うんだっけ。あ、出てきた」
肩をグイッと引き寄せられて撮られた写真はあまりにも間抜けな顔をしていたけど、いいんじゃない?、と満足気な美風さんの顔を見てしまうとまぁいっかという気持ちになった。先輩が楽しんでくれてるならそれが良い。急だったからびっくりしちゃったけど。今になってドキドキしてきた。
しかし、熱い頬を両手で抑えていると、またもや聞こえたシャッター音に今度は堪らず声をあげた。
「み、美風さんっ」
「良いなって思ったものを撮ればいいんでしょ?」
「うぐっ…!」
「言い負かされてんじゃねぇよ」
「まったく騒がしい奴だ」
少しニヤニヤしている先輩方に肩身が狭くなり、寿さんにもよろしくお伝えください!、と逃げるようにその場を後にした。楽しそうなのは何よりなんだけども……その対象が私だというのは何ともあれです。
ST☆RISHのみんなの賑やかな声を頼りに川沿いに向かえば、そこにはキラキラしたメンバー達が。……なんだあのキラキラは。イケメンにしか発動しないやつだあれ…。やっぱりみんなかっこいいよなぁ、と真顔のままカメラを構えてパシャパシャと撮りまくった私は悪くない。
「綾奈、遅かったですね。迷っていたのですか?」
「水も滴るイイ男ですねトキヤくん!シャッターを切る手が止まりそうにないです」
「君という人は…。ほら、綾奈も遊んできなさい。私は少し休憩します」
「はい!いってきます!あとでまた遊んでくださいね」
「あぁ子犬ちゃん。カメラ少し借りてもいいかい?」
「どうぞどうぞ〜!」
私に気付いたトキヤくんに近付いて更にシャッターを切る。呆れた顔もかっこいいですね。休憩をするという彼と、そばにやってきた神宮寺くんに荷物を預けて私も川辺へと駆ける。一十木くん翔くん!私も混ぜてください!
「カメラに興味があるんですか?レン」
「というよりも子犬ちゃんのカメラなら彼女は写真に映らないだろう?彼女の愛らしさを残さないのは勿体ないからね」
「…機転が効きますね」
「そうかい?あ、撮った写真はデータを送ってもらわないとね。イッチーも彼女の写真、欲しいだろう?」
「…送っていただけるなら受け取りましょう。貴重なオフショットですから」
「素直じゃないねぇ」
やれやれ、と肩を竦めた神宮寺くんは悪戯っ子のような顔をしてカメラを構えたのだと、後からトキヤくんに聞いた。いやその表情こそ写真に残したかったです私!!!
一十木くんと翔くんのもとへ駆け寄ると二人は水の掛け合いをしていて、聖川くんとなっちゃんは川辺の大きな岩の上に座ってのんびりと談笑していた。どちらもめちゃくちゃ絵になるなぁ。
えいや!、と川に足を入れれば思っていたよりも冷たくて驚いた。川も透き通っていてとっても綺麗だ。綾奈もやるか!、とニカッと笑った翔くんに臨むところだと近くへと寄っていく。水鉄砲とかあっても楽しかっただろうなぁ。
「よっしゃ!誰が1番濡れずに済むか勝負だ!」
「オー!私も負けませんよー!」
「高原って意外と運動神経いいし、手強そうだな〜!」
「い、意外ととは心外です!翔くん!徒党を組みましょう!!一十木くん集中狙いです!」
「ええっ!?なんでー!?」
「ハハッ!よっしゃ行くぜ綾奈!」
「ラジャーです!一十木くんお覚悟!!!」
ずるいよー!、と声を上げる一十木くんに周りで見ていたみんなも笑って、しばらくは水の掛け合いが続いた。一十木くんも翔くんも上の服は脱いで裸になっていたから私は容赦無しです!
とはいえ水の中での運動はかなりの体力がいる。膝に手をついて息を整えるのもすぐだった。めちゃくちゃ楽しい。結構良い勝負が出来たんじゃないだろうか。少し休憩すっか、という翔くんの言葉に一十木くんと頷いて岸へ向かっ、
「、わぁっ!」
「高原っ!?…あー…びしょ濡れ王だね…」
「怪我ねぇか?ったく、何だったんだよ今の時間はー!」
「あはは…やっちゃいました」
お約束というかなんというか。疲れたのもあって川の流れに足を取られた私は転倒。幸い怪我は無かったが、水の掛け合いなんて非じゃないくらいにびしょ濡れになってしまった。そんな自分がバカみたいで私は大きな声を出して笑った。
「笑い事じゃないでしょう。ほら、タオルを使いなさい。早く着替えてきた方がいいですよ」
「わ、!トキヤくん!ありがとうございますっ。ですねぇ、流石にこのびしょ濡れが乾くのは時間かかっちゃいますよね」
「まったく…。ついでに少し休憩してきたらどうですか?水の中で遊ぶのは陸でより体力がいりますから」
「はい。じゃあ少し戻ってきますね。そしたら今度こそ遊びましょう!」
「分かりましたから。早く行きなさい」
呆れた表情のトキヤくんにタオルを頭からかけられ、そのままわしゃわしゃと拭かれるのに大人しく体を預ける。その手付きは優しくてとてもトキヤくんらしい。大体の水分を拭ってもらった私は着替えるべくロッジへ向かった。朝にこちらに到着したのもあって陽はまだ高い。今からどんどん暑くなりそうだ。
「…高原、黒のシャツ着てたから透けはしなかったけど、びしょ濡れになったからシャツが張り付いてすごくエロかったね」
「ブッ…!お、音也!!!!」
「どこ見てんだおめーは!!!」
「ええっ?トキヤも翔も見たでしょ?すっごくドキドキしたよね!」
「…お前のそのどストレートさにはビビるぜ…」
「えー!男なんだから普通だって!」
20201014