第1章:早乙女学園
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「春歌~!綾奈~!お昼いこー!」
第6話
先日、七海ちゃんと知り合ってから教室でも会話するようになった。そして彼女とルームメイトだという渋谷友千香ちゃんとも必然的に友達になった。15歳だという渋谷ちゃんはしっかりしていてサバサバしていて…なんで年下なのにこんなに頼りたくなっちゃうんだろう、と落ち込んでしまうぐらいよく出来た子だ。ちなみにアイドルコースで、贔屓目無しに可愛い。眼福です。
お昼ごはんも一緒にとるようになった私達は、渋谷ちゃんに呼ばれて慌てて教材を片付ける。渋谷ちゃん曰く、私と七海ちゃんはどこか似ているらしい。今みたいに慌てふためく姿とかだとか。七海ちゃんに似ているというのは光栄でしかないから嬉しいのだけど。だって可愛い。天使。
今日は何を食べようかと話しながら食堂に向かうといつものように賑わっていた。3人の席を見つけるのは中々困難かもしれない、と首を伸ばして空席を探す。
「七海ちゃん、渋谷ちゃん。私、席取ってきますから先に注文してきてください」
「えっ!で、でもこんなに人がいたら席も中々見つからないかと…」
「しかも席取ってから綾奈注文しにいくつもりでしょ。そんなんじゃ昼休み終わっちゃうよ。あたしが代わりに綾奈の分も頼んでくるから。何食べる?」
「し、渋谷ちゃんすごいな…。じゃあAランチをお願いしていいですか?」
「もっちろん!じゃ、席頼むね~!ほら、春歌いくよっ」
「えっえっ!」
んーやっぱり渋谷ちゃんは頼りになる。手を引かれていった七海ちゃんはワタワタしていたけど、まあ渋谷ちゃんが一緒だし大丈夫だろう。私も私の仕事をしないと。
キョロキョロと見渡すけど、入り口近くはやっぱり便利だからか空席はありそうにない。もう少し奥にいってみよう、と人混みを掻い潜る。
「お?高原じゃん!一人か?」
「えっ、あ!来栖くん!こんにちはぁ。友達となんですけど先に席取りしようと思って」
「成る程な!何人?」
「私をいれて3人です」
「じゃあ俺らんとこ来るか?音也とかいるし、まぁ他の奴もいるけど詰めて簡易椅子持ってくりゃ座れんだろ」
「わ!ありがとうございます!助かりますっ」
すれ違う時に声をかけてくれたのはスタイリスト実技で大変お世話になった来栖くんだった。少し久しぶりなような気もする。クラスが違うと中々会わないものだなぁ。そんな彼からの嬉しいお誘いに頷いて彼の友達、一十木くん達が取っているという席に向かう。彼等に迷惑でなければいいけど。
「あ!翔ちゃんおかえりなさ~い。わぁ!綾奈ちゃんも一緒なんですねぇ!」
「あとこいつの友達も2人いるらしいけど、席探してるみたいでさ。ここ座ってもいいだろ?」
「この人集りだからな。譲り合いはするべきだろう」
「私は構いませんが」
「高原、友達ってもしかして七海と友千香?」
「そうです!すみません、お邪魔させていただきます」
「可愛いレディだね。どうぞ」
来栖くんに案内されてきた席には一十木くん、聖川くん、四ノ宮くん。そしてあとはとてもクールな印象を受ける方と華やかな方だった。お二方とも同席には不満でないようで安心した。
ありがとうございます、と微笑んで空いていた四ノ宮くんの隣に腰掛ける。四ノ宮くんの奥に来栖くんと聖川くんがいて、私の正面がクールな方で奥が華やかな方、その奥が一十木くんだ。正面にいるのだから余計に自己紹介は必要かな、と口を開く。
「あの、私Aクラスの高原綾奈と言います。同席させていただいてありがとうございます。助かりました」
「一ノ瀬トキヤです。この人集りでは仕方ありませんので気にしなくて結構ですよ」
「オレは神宮寺レン。レディのような可愛い子のお願いならいつでもオーケーだよ」
「ありがとうございます。一ノ瀬くんと神宮寺くんですねっ」
よろしくお願いします、と笑えば彼等も頷いてくれて一安心。やっぱり初対面は緊張するなぁ。
ふぅ、と小さく息を吐いて七海ちゃんと渋谷ちゃんの姿を探す。迷ってないといいけど、なんていう心配は徒労に終わった。そのすぐ後に私のランチも持った2人が真っ直ぐにこっちにやってくるのが見えた。なんで真っ直ぐ来れたんだろう、と不思議に思ったけど一緒にいる彼等のキラキラオーラのおかげだろうなとすぐに察した。まだ学生で一般人なはずなのにみんなしてこのオーラは一体何なんだろう。彼等と一緒にいる私ってもしかしてすごく目立ってしまってるんじゃないだろうか。
「おまたせー!席取りあんがとね。それにしてもまさかこのメンツと同席を確保してくるとは思わなかったわ!」
「私も今それ考えてました…」
「ま!ご飯食べられるならどこでもいーよ!おっじゃましまーす」
「はい、綾奈ちゃん」
「ありがとうございます、七海ちゃん」
予想は当たっていたようでやっぱり彼等の側は目立つらしい。…だからといって彼等から離れるとかそういうつもりはないけど。純粋に彼等が大好きだし。
明るく一ノ瀬くんの隣に座った渋谷ちゃんも、私のAランチを運んできてくれてそのまま隣に座った七海ちゃんも、ほとんど彼等とは初対面のようで改めて自己紹介をしていた。こうして友達の和が広がるのは嬉しいなぁ、と気分のいい食事はいつもより美味しく感じる。
するとジッと視線を感じたので顔を上げると一ノ瀬くんとパチリと目があった。どうやら視線は一ノ瀬くんからのものだったらしい。見られる理由が分からなくて首を傾げると、一ノ瀬くんはチラリと一度周りに視線をやってから口を開いた。他のみんなは近いもの同士で話してて特にこちらの様子を気にしていないようだった。
「高原さん、と言いましたね。貴方は聞かないのですね」
「聞かない、ですか?」
「…私と顔を見合わせた人はまず最初にHAYATOではないかと尋ねてくるんです」
「HAYATO…、わぁ!本当です!すごくそっくりです!」
「…HAYATOは双子の兄なので勘違いしないでください」
HAYATOと言う名前は勿論知ってる。明るくて剽軽なキャラの彼はとても印象に残る人物だ。確かに目の前の一ノ瀬くんと似ている。でもHAYATOのことを話す一ノ瀬くんはどこか複雑そうで、もしかして不仲なのだろうか。それともあまりにも本人かどうかを疑われたのかもしれない。
「大丈夫ですっ!HAYATOさんのことは勿論知ってますが、今こうしてお話してるのは一ノ瀬くんです!疑ったりなんてしません」
「…そうですか」
「はいっ。それに私の友達にもこう…スイッチの切り替えがある子がいますけどそれはどっちもその子の良いところだと思ってますし、なんていうか私はHAYATOさんと実際にお会いしたことがないのでどんな性格なのかも知らないですし…。だからこうして知り合った一ノ瀬くんはHAYATOさんでもHAYATOさんの弟の一ノ瀬くんでもなくて一人の一ノ瀬くんで…、あ、あれ?私の言いたいこと伝わってますか??」
話しているとつい自分でも何を言ってるのか分からなくなってしまった。思わず一ノ瀬くんに尋ねると彼はクールな印象とは違ってキョトンとした顔をした。それがとても年相応で可愛いな、なんて。それから彼は優しい微笑を浮かべた。つ、次は美しい、だ、と…!?
「…何を言ってるのか全然伝わりませんよ、高原さん」
「うっ…。つ、つまり一ノ瀬くんは一ノ瀬くんだってことです…」
なんだか半ば諦めながら告げれば彼は小さく笑った。つ、伝わりはしなかったけど気分は害さなかったらしい。自分のボキャブラリーのなさに落ち込みつつサラダをつつく。もうちょっと本読むべきだなぁ。いや、読みたいけど今は勉強で手がいっぱいだからなぁ。でも彼、一ノ瀬くんはとても頭が良さそうだから彼と話すには本をたくさん読むと盛り上がるのかもしれない。せっかく出来た友人だ。大切にしたい。今日の帰りは図書室に寄ろうと心に決めた。
「そういえばお前らレコーディングテストの調子どうだ?」
「まあ、中々だな。まだ曲は出来ていないがいい調子だ」
「俺は七海がパートナーなんだ~!七海ならきっとすっごい曲書いてくれる!ねっ七海!」
「えっ、あ…頑張ります…」
「…七海ちゃん?」
レコーディングテストの話題を出した来栖くんに、パートナーと顔合わせすらしていない私は内心ドキッとしていると、なんだか七海ちゃんが浮かない表情をしていることに気付く。思わず声をかけると彼女は慌てて、頑張りましょう、と笑った。その笑顔に違和感を感じて問いただしたかったけど、ワイワイと盛り上がる彼等を見ていると聞くに聞けなくなってしまった。
未だにパートナーの事を何も把握出来ていない私が話に入っていくのも憚られて、笑みを浮かべながらみんなの様子に耳を傾ける。するとガタッと神宮寺くんが席を立ったので自然と目をやる。
「レン、どうしたんだよ?まだ昼休みは時間あるぞ?」
「この後レディと約束があってね。先に失礼するよ」
子羊ちゃん達もまたね、とウィンクをして彼は食堂を出て行った。なんてウィンクが似合う人なんだろう、と思わず見惚れてしまった。すると隣に座っていた七海ちゃんまでガタッと立ち上がって、図書館に本を返却にいかなければならないから、と止める暇なく去って行ってしまった。…やっぱり様子がおかしい。もしかして何か悩んでることでもあるのだろうか。周りに視線をやるが、どうやら気にしてるのは私だけのようで、思い過ごしなのかな、とオムライスを嚥下した。
「綾奈ちゃんはどうですかぁ?…あれっ。そういえば僕、綾奈ちゃんのパートナーさんがどんな人か知りません」
「えっ、と…すごく才能ある方ですよ!Bクラスの方なんですけど、先生からの評価もとてもいい方で!」
「へぇ~!そうなんですねぇ!綾奈ちゃんの歌、と~っても素敵だから僕楽しみです!」
「私も四ノ宮くんの歌、まだ聞いたことありませんからとても楽しみです」
う、嘘は言ってない。病気のことを抜きにすればSクラスの実力だって月宮先生も仰っていたし。四ノ宮くんも特に疑問に思わなかったみたいで内心ホッと息を吐いた。焦っても仕方ないのは分かってるけど、でもそろそろ何かしらの行動は起こした方がいいよなぁ、とまだ見ぬ雅くんに想いを馳せた。
20150531