第1章:早乙女学園
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「そっか!まあ、よろしくな!高原!」
第4話
来栖くんとも無事自己紹介を終えた私たちは、人目を掻い潜って四ノ宮くんと来栖くんの部屋にやってきていた。
彼らの部屋の、それぞれの趣味がうかがえるレイアウトはとてもお洒落だ。これなら彼らはこのテストは問題ないんじゃないかな、なんて。
その一方一十木くんは、普段そこまで服装を気にするタイプじゃないから持っている服も少ないと嘆いた。確かにレパートリーが少ないのは選択肢も減る訳だから悩みどころではあるか…。今なら少ない時間ではあるけど、まだ買いに行くという手もある。だが、何分学生の身である私たちはそれほどお金に余裕がない。聖川くんは別にして、ですけど。聞けばなんと彼は聖川財閥の御曹司さんだったのだとか。本当にびっくりした。以前は医者家系のあの子に金銭面はよくお世話になったなぁと少し思い出した。
とりあえずソファに腰掛けて四ノ宮くんが用意してくれた紅茶をいただく。これがまた美味しくて今度絶対淹れ方教えてもらおうと思いました。閑話休題。
「やはり買いに行くという手段が一番無難なのだろうか…」
「えー!でも俺お金そんなにないんだよね…」
「貸し借りするにしても俺ら体格差あるしなー」
「綾奈ちゃんはどう思いますかぁ?」
「へ!?え、えっと、そうですね…」
あーでもないこーでもないと色々な意見が出る中、四ノ宮くんの声に一斉に視線がこちらに向いて怯む。つい聞き役になってしまっていたけれど、それじゃあいけない、とぐっと踏みとどまり自分の意見をまとめようと頭をフル回転させる。
確かいつも衣装を作ってくれてたあの子はどういうことにこだわっていたっけ…。
ここにきたのは邪魔するためじゃない。一緒に頑張る為にきたのだから。
「そう、ですねぇ…。やっぱりそれぞれの個性を出すのが第一かな、と…」
「そうだよねぇ。と言っても俺パーカーとかそういう系になっちゃうなぁ」
「あるもので考えるっつーのも難しいもんだよなー」
「そうですね…。だけどそれに少しトレンドを入れれば一気に印象が変わるかと思います!」
「トレンドですかぁ?今はどんなお洋服がみなさんに人気なんでしょうか」
僕はビビーッ!ときたお洋服ばかり買ってしまうので、と笑う四ノ宮くんに、気に入った服が一番ですよね、と笑って、トレンドをあまり把握していないみんなに向けて口を開く。…緊張してるんだろうか。喉がカラカラと渇いて、手汗も酷い。自分の意見を言うだけのことがこんなにも怖いなんて。
気付かれないように一度ごくりと喉を鳴らして自分の知りうる情報をかき集める。この知識が少しでも彼らの役に立てばいい。
「トレンドっていうとまずその時期によってカラーがあったりするんです。ただずっと人気なものもある。えっと、たとえばオールブラックのコーディネートです」
「全身黒か…。いや、しかしそれでは印象がかなり重くなってしまうのではないか?」
「た、確かに肌を埋め尽くす黒は重い印象になってしまいます。なので大事なのはまず素材感です。同じ黒でも素材が違うだけでかなり印象が変わります」
「あー確かに!ブラックジーンズに黒のライダースとか着てるモデルとか超かっけーもんな!なるほどあれは素材が違うからカッコ良いのか!」
「は、はい!あと少し袖を捲ったりして肌を見せるだけでも違います!」
オールブラックじゃなくオールホワイトも流行りですが、ポイントは同じじゃないかと。そこに可能なら今季のトレンドカラーを少し入れるだけでグッと引き締まると思います。そこまで言うとみんなは、おお…!、と良い反応を見せてくれた。どうやらみんなの中でも納得がいったらしい。よ、よかった…。
ホッと息を吐くと一十木くんがキラキラした目で、高原すごい!他には!?、と聞いてくるものだから緊張で回転の遅い脳をなんとかフル活動させて提案していく。さし色があるといいだとか、小物を使うのもありだとか。程よい抜け感を出すだとか。ええとあとは…。
「あ、あとはサイズ感です」
「サイズ感ですかぁ」
「はい!無地のTシャツ一枚でもサイズ感がぴったりなだけですごくかっこ良く着れるそうです!」
「そうなんだ…!パンツとかは試着してもトップスって意外と試着せずに買っちゃうんだよね俺~」
なるほどなるほど、と頷く一十木くんになんだかプレッシャーを感じて思わず、あまり鵜呑みにしないでくださいね、と苦笑するとそんなことないよ!、と熱弁された。どうやら私の意見に理解も納得もしてもらえたらしい。…少しでもファッション雑誌見ててよかった…。
その後もこうならどうだとかああいうのもアリだとか話していると意外と時間も経っていたようで外は夕焼け色に染まっていた。おかわりを戴いたはずの紅茶もすでにカップの中は空だった。そろそろ戻って服を検討した方がいいかもしれない、と提案すれば各々頷いてその日は解散になった。
女子寮まで送ると行ってくれたが、それだと変に目立ってしまうから、と遠慮した。申し訳無さそうにする彼等だったけど、私はこうしてこの場に参加させてもらえただけで充分なのだ。友達だから、と部屋にまでお邪魔させてもらって送ってもらうまでなんて贅沢すぎる。別棟とはいえ、そこまでの距離じゃないし。何よりこの学園内で何か起こるとも思えない。だってあの学園長先生ですよ?ないない。
「本当にありがとうございました!私もとっても楽しかったです」
「うん、そうだね!よーしっ!みんな明日はお互い頑張ろう!」
一十木くんの明るい声に頷いて、気を付けて、と手を振る彼らを背に私は男子寮をあとにした。見つからないように人気の少ないところを通れば、心地よい風が頬を撫でた。いい月夜だ。
… さて、私も明日に備えて準備しよう。
足取りはとても軽かった。
*
翌日、結果的に言えばみんな上々の感想をいただいたらしかった。詳しい結果は来週貼り出されるそうだけど一安心。
あー緊張したよー!、と机に突っ伏す一十木くんに同意しながらお疲れ様です、と労わる。今回はファッションショーのような形で先生の前でポーズしたりもあったから余計疲れたんだろう。かくいう私も服装に精一杯でポージングの練習なんて頭に無かったから直前は口から心臓が出そうだったけど。…なんでも今回はそこまでポージングは採点に入らないそうだから一安心だ。
ありがとー、と顔をあげた一十木くんと目があって微笑むと少し頬を染めた彼が口を開いた。暑いんだろうか?確かに最近はかなり暖かくなって春らしい天候だけど。
「…前から思ってたけど、高原の笑顔っていいね。なんかすっごく癒されるよ!」
「え、ええっ?一十木くんお世辞上手ですね…」
「ははっ!お世辞じゃないよ!可愛い!」
「い、一十木くん!からかわないでください!」
からかってないよー!、と笑う一十木くんはどう見ても悪戯っ子の顔だったけど、そんな彼の笑顔が大好きだから結局私も頬を緩めるのだった。するとそばにやってきた四ノ宮さんが後ろから抱き付いてきて心臓が止まるかと思った。四ノ宮くんにとったら私ぐらいのサイズは可愛く見えるんだろうけど、さすがに抱き着かれるのは心臓に悪い…!、とわたわたしていると聖川くんが引き離してくれたからこっそり安堵の息を漏らした。いつもありがとう聖川くん。
ニコニコと笑う四ノ宮くんもどうやら反応はよかったらしい。
「僕、綾奈ちゃんのアドバイスを参考にしてみたんですけど林檎せんせぇもすごく褒めてくれましたよぉ!」
「あぁ、俺もだ。少しの工夫を凝らすだけであんなにも与える印象は変わるものなのだな」
「ふふっ。お役に立てたなら光栄です!」
ありがとう、と笑う四ノ宮くんと聖川くんにも手を振ってそれならよかった、と伝えると微笑んでくれた。私も改めて自分のファッションを見つめ直すことが出来たからすごくいい時間だったと思う。月宮先生にもとても有り難いことにかなりの高評価を戴けたし。…でも、可愛い~!、と抱き付いてくるのは四ノ宮くん同様心臓に悪いのでやめてほしいなぁ…なんて。なんであの人はあそこまでゼロ距離なんだろう。
「何にせよ、体育祭もあるけどまずはレコーディングテストだね!」
「入学して初めてのパートナーとの制作ですね…!」
「あ、そういえばさっき林檎せんせぇが帰りのホームルームでパートナーを発表するっていってましたよぉ」
「ふむ。最初はランダムに選抜されるのだな」
ふと思い出して口を開いた四ノ宮くんの言葉は、この学園に通っているなら避けては通れないレコーディングテストについてだ。卒業までにパートナーを決めて、卒業オーディションで優勝すればシャイニング事務所所属の正式なアイドルになれるのだからこのテストも気が抜けない。これからも何度かあるようだけど、今回は体育祭までの期間。即ち1ヶ月を切ってる。短い時間でどれだけできるかは分からないけど、出来ることは全部しよう。
俄然やる気のみんなの表情を一瞥して、私も拳を握りしめて、頑張りましょうね、と意気込んだ。
20150518
第4話
来栖くんとも無事自己紹介を終えた私たちは、人目を掻い潜って四ノ宮くんと来栖くんの部屋にやってきていた。
彼らの部屋の、それぞれの趣味がうかがえるレイアウトはとてもお洒落だ。これなら彼らはこのテストは問題ないんじゃないかな、なんて。
その一方一十木くんは、普段そこまで服装を気にするタイプじゃないから持っている服も少ないと嘆いた。確かにレパートリーが少ないのは選択肢も減る訳だから悩みどころではあるか…。今なら少ない時間ではあるけど、まだ買いに行くという手もある。だが、何分学生の身である私たちはそれほどお金に余裕がない。聖川くんは別にして、ですけど。聞けばなんと彼は聖川財閥の御曹司さんだったのだとか。本当にびっくりした。以前は医者家系のあの子に金銭面はよくお世話になったなぁと少し思い出した。
とりあえずソファに腰掛けて四ノ宮くんが用意してくれた紅茶をいただく。これがまた美味しくて今度絶対淹れ方教えてもらおうと思いました。閑話休題。
「やはり買いに行くという手段が一番無難なのだろうか…」
「えー!でも俺お金そんなにないんだよね…」
「貸し借りするにしても俺ら体格差あるしなー」
「綾奈ちゃんはどう思いますかぁ?」
「へ!?え、えっと、そうですね…」
あーでもないこーでもないと色々な意見が出る中、四ノ宮くんの声に一斉に視線がこちらに向いて怯む。つい聞き役になってしまっていたけれど、それじゃあいけない、とぐっと踏みとどまり自分の意見をまとめようと頭をフル回転させる。
確かいつも衣装を作ってくれてたあの子はどういうことにこだわっていたっけ…。
ここにきたのは邪魔するためじゃない。一緒に頑張る為にきたのだから。
「そう、ですねぇ…。やっぱりそれぞれの個性を出すのが第一かな、と…」
「そうだよねぇ。と言っても俺パーカーとかそういう系になっちゃうなぁ」
「あるもので考えるっつーのも難しいもんだよなー」
「そうですね…。だけどそれに少しトレンドを入れれば一気に印象が変わるかと思います!」
「トレンドですかぁ?今はどんなお洋服がみなさんに人気なんでしょうか」
僕はビビーッ!ときたお洋服ばかり買ってしまうので、と笑う四ノ宮くんに、気に入った服が一番ですよね、と笑って、トレンドをあまり把握していないみんなに向けて口を開く。…緊張してるんだろうか。喉がカラカラと渇いて、手汗も酷い。自分の意見を言うだけのことがこんなにも怖いなんて。
気付かれないように一度ごくりと喉を鳴らして自分の知りうる情報をかき集める。この知識が少しでも彼らの役に立てばいい。
「トレンドっていうとまずその時期によってカラーがあったりするんです。ただずっと人気なものもある。えっと、たとえばオールブラックのコーディネートです」
「全身黒か…。いや、しかしそれでは印象がかなり重くなってしまうのではないか?」
「た、確かに肌を埋め尽くす黒は重い印象になってしまいます。なので大事なのはまず素材感です。同じ黒でも素材が違うだけでかなり印象が変わります」
「あー確かに!ブラックジーンズに黒のライダースとか着てるモデルとか超かっけーもんな!なるほどあれは素材が違うからカッコ良いのか!」
「は、はい!あと少し袖を捲ったりして肌を見せるだけでも違います!」
オールブラックじゃなくオールホワイトも流行りですが、ポイントは同じじゃないかと。そこに可能なら今季のトレンドカラーを少し入れるだけでグッと引き締まると思います。そこまで言うとみんなは、おお…!、と良い反応を見せてくれた。どうやらみんなの中でも納得がいったらしい。よ、よかった…。
ホッと息を吐くと一十木くんがキラキラした目で、高原すごい!他には!?、と聞いてくるものだから緊張で回転の遅い脳をなんとかフル活動させて提案していく。さし色があるといいだとか、小物を使うのもありだとか。程よい抜け感を出すだとか。ええとあとは…。
「あ、あとはサイズ感です」
「サイズ感ですかぁ」
「はい!無地のTシャツ一枚でもサイズ感がぴったりなだけですごくかっこ良く着れるそうです!」
「そうなんだ…!パンツとかは試着してもトップスって意外と試着せずに買っちゃうんだよね俺~」
なるほどなるほど、と頷く一十木くんになんだかプレッシャーを感じて思わず、あまり鵜呑みにしないでくださいね、と苦笑するとそんなことないよ!、と熱弁された。どうやら私の意見に理解も納得もしてもらえたらしい。…少しでもファッション雑誌見ててよかった…。
その後もこうならどうだとかああいうのもアリだとか話していると意外と時間も経っていたようで外は夕焼け色に染まっていた。おかわりを戴いたはずの紅茶もすでにカップの中は空だった。そろそろ戻って服を検討した方がいいかもしれない、と提案すれば各々頷いてその日は解散になった。
女子寮まで送ると行ってくれたが、それだと変に目立ってしまうから、と遠慮した。申し訳無さそうにする彼等だったけど、私はこうしてこの場に参加させてもらえただけで充分なのだ。友達だから、と部屋にまでお邪魔させてもらって送ってもらうまでなんて贅沢すぎる。別棟とはいえ、そこまでの距離じゃないし。何よりこの学園内で何か起こるとも思えない。だってあの学園長先生ですよ?ないない。
「本当にありがとうございました!私もとっても楽しかったです」
「うん、そうだね!よーしっ!みんな明日はお互い頑張ろう!」
一十木くんの明るい声に頷いて、気を付けて、と手を振る彼らを背に私は男子寮をあとにした。見つからないように人気の少ないところを通れば、心地よい風が頬を撫でた。いい月夜だ。
… さて、私も明日に備えて準備しよう。
足取りはとても軽かった。
*
翌日、結果的に言えばみんな上々の感想をいただいたらしかった。詳しい結果は来週貼り出されるそうだけど一安心。
あー緊張したよー!、と机に突っ伏す一十木くんに同意しながらお疲れ様です、と労わる。今回はファッションショーのような形で先生の前でポーズしたりもあったから余計疲れたんだろう。かくいう私も服装に精一杯でポージングの練習なんて頭に無かったから直前は口から心臓が出そうだったけど。…なんでも今回はそこまでポージングは採点に入らないそうだから一安心だ。
ありがとー、と顔をあげた一十木くんと目があって微笑むと少し頬を染めた彼が口を開いた。暑いんだろうか?確かに最近はかなり暖かくなって春らしい天候だけど。
「…前から思ってたけど、高原の笑顔っていいね。なんかすっごく癒されるよ!」
「え、ええっ?一十木くんお世辞上手ですね…」
「ははっ!お世辞じゃないよ!可愛い!」
「い、一十木くん!からかわないでください!」
からかってないよー!、と笑う一十木くんはどう見ても悪戯っ子の顔だったけど、そんな彼の笑顔が大好きだから結局私も頬を緩めるのだった。するとそばにやってきた四ノ宮さんが後ろから抱き付いてきて心臓が止まるかと思った。四ノ宮くんにとったら私ぐらいのサイズは可愛く見えるんだろうけど、さすがに抱き着かれるのは心臓に悪い…!、とわたわたしていると聖川くんが引き離してくれたからこっそり安堵の息を漏らした。いつもありがとう聖川くん。
ニコニコと笑う四ノ宮くんもどうやら反応はよかったらしい。
「僕、綾奈ちゃんのアドバイスを参考にしてみたんですけど林檎せんせぇもすごく褒めてくれましたよぉ!」
「あぁ、俺もだ。少しの工夫を凝らすだけであんなにも与える印象は変わるものなのだな」
「ふふっ。お役に立てたなら光栄です!」
ありがとう、と笑う四ノ宮くんと聖川くんにも手を振ってそれならよかった、と伝えると微笑んでくれた。私も改めて自分のファッションを見つめ直すことが出来たからすごくいい時間だったと思う。月宮先生にもとても有り難いことにかなりの高評価を戴けたし。…でも、可愛い~!、と抱き付いてくるのは四ノ宮くん同様心臓に悪いのでやめてほしいなぁ…なんて。なんであの人はあそこまでゼロ距離なんだろう。
「何にせよ、体育祭もあるけどまずはレコーディングテストだね!」
「入学して初めてのパートナーとの制作ですね…!」
「あ、そういえばさっき林檎せんせぇが帰りのホームルームでパートナーを発表するっていってましたよぉ」
「ふむ。最初はランダムに選抜されるのだな」
ふと思い出して口を開いた四ノ宮くんの言葉は、この学園に通っているなら避けては通れないレコーディングテストについてだ。卒業までにパートナーを決めて、卒業オーディションで優勝すればシャイニング事務所所属の正式なアイドルになれるのだからこのテストも気が抜けない。これからも何度かあるようだけど、今回は体育祭までの期間。即ち1ヶ月を切ってる。短い時間でどれだけできるかは分からないけど、出来ることは全部しよう。
俄然やる気のみんなの表情を一瞥して、私も拳を握りしめて、頑張りましょうね、と意気込んだ。
20150518
