第1章:早乙女学園
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「うーん、このメンバーになるあたりやっぱり運命ってのはあるみたいですねぇ」
第17話
そろそろ夏本番。制服も夏服に衣替えして爽やかな季節になってきた。そんな折に学園長の突然の思いつきでクラス対抗の水球勝負が行われることとなった。各クラス3名がくじ引きで選出され、代表として出場するわけだが。
「まさか一十木くんに聖川くん、そしてなっちゃんが選ばれるなんて仕組まれてるのかなって思っちゃいますね」
「だよねー!?こんな確率まずないよ!」
「で、でもわたしは少しホッとしました…」
「…まぁ女子にはちょっとキツイものがありますよね…」
しかも水深は学園長の意のままに変えられるのだとか。そして今日の水深は161cmらしい。あの3人なら問題はないけど流石に七海ちゃん達には厳しいものがある。それには一安心だ。
…なのだが、さすがに相手チームには同情せざるを得ない。
「しょ、翔くん大丈夫ですか…?勝手に泳げそうだなとは思ってますけど…」
「なぁっ!?綾奈までバカにすんなよ!俺様に水深なんて関係ねぇよ!」
「そ、それならいいんですけど…無茶はしないでくださいね。 危なくなったら私すぐに助けにいきます!」
「い、いーよ!お前は!…そのっ…ちゃんとそのまま上着きて見てろ!」
俺がヘマするわけねぇだろ!、と顔を赤くして声を上げる翔くんに私は大人しく引き下がる。…ちょっと過剰に心配しちゃったかな。男のプライドってやつなのかもしれない。でもいつでも飛び込めるように心構えはしておこう。幸い、選手以外の生徒もここでは水着着用だ。
当然私も水着を着てる訳だけど、プールにやって来て最初に目があった聖川くんに声をかけたところ、目を泳がせて彼の着ていたパーカーを渡された。女子がそんなに肌を出すものじゃない、とか。いやいやみんな水着ですよ聖川くん。とは思ったけど室内とはいえ天井はガラス張りのところもあって紫外線もちょっと気になるし、好意は受け取っておこうと羽織っている次第だ。こうして着てみると彼はやっぱり男の人なんだなぁと思う。パーカーが大きい。今後味わえるか分からない彼パーカーとやらを堪能させていただこう。石は投げないでください。
「やぁ子羊ちゃん達。水着姿、とても刺激的だね」
「こんにちは、神宮寺くん。七海ちゃんと渋谷ちゃんを変な目で見るのは私が許しませんよ」
「そうかい?じゃあレディを堪能させてもらおうかな」
「私で代わりになるならどうぞご堪能ください。…いや無理です。私じゃ全然2人の魅力に及びませんでした。失礼しました」
「随分謙虚だね。キミは魅力的だよ、レディ」
「…寂しい心に染み渡ります神宮寺くん…」
バカね、と呆れ顔の渋谷ちゃんにオロオロした様子の七海ちゃん。2人も勿論水着なわけだが抜群に可愛いのだ。それこそ今日の水球対決を組んでくれた学園長に声を大にしてお礼を言いたいくらいに。
私も今年一目惚れして買った、白地にボタニカルの花が散りばめられた水着を着ているのだが…なんかもう水着が可哀想。ごめんな水着…君はしっかり可愛いよ…。
「…白い肌に白の水着…オレの手で紅い花を咲かせてあげたくなるよ」
「え?」
「レン!!!」
「やぁイッチー。邪魔しにきたのかい?」
「…あなたという人は…。それは立派なセクハラですよ」
神宮寺くんの言葉を叱るように声を上げて側にやってきた一ノ瀬くん。そう、Sクラスの代表は翔くん、そして神宮寺くんと一ノ瀬くんなのだ。絶対くじの中身混ざってなかったよね。
ジト目で神宮寺くんを見る一ノ瀬くんに、はて?、と首を傾げる。セクハラとは…?
「神宮寺くんはセンスが良さそうだから嬉しいです。今度見繕ってください。赤い花?でしたっけ。似合うのかなぁ」
「……あなたは本当に馬鹿ですね」
「ハハハッ!さすがだよレディ!でも、勿論喜んで」
「ちょっとみんな私のこと馬鹿って言い過ぎです…本当のことですけども」
「むくれない。子犬になっていますよ」
「なってません!」
子犬!それはいいね!、と神宮寺くんまで乗り気になってしまった。しまった、今のは反論せずに大人の余裕をかますところだった…。
それじゃ子犬ちゃんデートはまたの機会に、とウィンクをして持ち場に戻った神宮寺くん許すまじ。その後に続くように一ノ瀬くんも、もっと警戒してください、と言葉を残して去っていった。警戒とはなにに対して???
まぁ分からないものは考えても仕方ない、とさっぱりと考えることをやめた。試合ももう始まる。Sクラスのメンバーも勿論大事なお友達だけど、私はAクラスなので今回ばかりはあの3人を応援します。
「とはいえ負けた方が女装か…。どっちも負けることはないのかな…」
「綾奈、あんたね…」
「みなさんお綺麗ですからきっと女性の格好も似合いますよねっ」
「そうなんですよ七海ちゃん。だからどっちも負けてほしいです、個人的に」
そう。この罰ゲームも学園長考案である。面白いことを考える方だな、ほんと。握手してほしい。
Aクラスの彼等でも、Sクラスの彼等でも正直見ものだ。お利口な自分としてはAクラスに勝ってほしいけど…欲望渦巻いた自分としては両方負けてくれという気持ちだ。これは仕方ない。
「ちょっと高原ー!?聞こえてるよー!」
「おっと。これは失礼しました。頑張ってください音也ちゃーん!」
「もー!高原ー!」
私のどっちも負けろ発言はどうやら一十木くんの耳には届いてしまったようで注意されてしまった。申し訳ない。とても反省しています。とても。
そんなこんなで始まった水球対決。両クラスいい勝負だ。キーパーは聖川くん、Sクラスは神宮寺くんだ。
翔くんをキーパーに置かなかったのは悪手かと思われたがそうでもなく、持ち前の運動神経で彼もとても活躍していた。ただちょっと一ノ瀬くんはやる気が足りないかもしれない。体育祭同様、あまり運動は好きじゃないのかもしれない。
一十木くんは流石の一言でガンガン点数を取る。なっちゃんも手のリーチがあることから相手チームからいい具合に球を奪っている。
うーん、これは本当にどちらが勝つか分からないなぁ。多分観客のほとんどがそう思っていると、ムムム、と学園長が唸った。このままじゃ面白くアリマセーンね、と。
「ン~そうデスね~!…Ms.ナナミ!」
「えっ!は、はいっ!」
「Youを彼等のご褒美にしちゃいマース!」
「ええっ!?」
「ちょ、どういうことですか学園長!」
「彼等にはもっともっとHotになってもらわねばなりまセーン!その為にはMs.ナナミが必要だと思ったのデッスン!」
「それなら私も参加したいです!!いいな!」
「綾奈あんたは黙ってなさい!」
「痛っ!」
七海ちゃんをご褒美にするという学園長に、私も参加したい!と申し出ると渋谷ちゃんにポカリと殴られた。痛い。真面目な話なのに。
うう…と頭を抑える私に、また一緒にお出かけしましょうね、と声をかけてくれる七海ちゃんほんとに天使。と思っていたらグワっと学園長に持ち上げられる七海ちゃん。たちまち天井付近にある、飛び込み用の台まで昇った学園長は高らかに笑った。そして、
そこから七海ちゃんを落とす、と宣言した。
「なっ…!?」
「た、たかいですぅ…」
「が、学園長!さすがにそれはひどいです!」
「アイドルたる者これしきのこと乗り越えられなくてどうしますカー」
抱えられた七海ちゃんは飛び込み台の高さに、この距離からでも分かるぐらい顔を青褪めさせていた。水球対決をしていたみんなも、流石にやりすぎだろう、と冷や汗を垂らす。
「が、学園長!そこから落とされる権利!私にいただけないでしょうか!」
「ちょ!ちょっと綾奈!?」
「七海ちゃんは作曲家コースなので、アイドルコースである私にその度胸を試させていただきたいです!!!」
「ン~!いいでショウ!それではMs.高原!こちらにイラッシャーイ!」
なんとか承諾を得た私は飛び込み台に向かう。焦った渋谷ちゃんに心配されるが、ヘラリと笑顔を返して早足で七海ちゃんの元へ向かう。側に行けば七海ちゃんの顔は真っ青で、私を心配して、ダメです、と首をふるふると横に振った。そんな姿に安心させるように頭を撫でてあげてニコリと微笑む。
「大丈夫ですよ、七海ちゃん。私、運動神経は悪くないのご存知でしょう?」
だからほら、と少し強めに七海ちゃんの背中を押して観客席にいる渋谷ちゃんの元へやる。少しは不安は取り除けただろうか。あの距離なら今飛び込み台に上がっている私の足の震えは見えていないことだろう。まったく、我ながら馬鹿だなと思う。たしかに私は運動神経はそれほど悪くはない。けど。
「…高所恐怖症だったりするんですよね~…」
頂上にいる学園長の隣に立った時、あまりの高さに目眩がした。
20190801
