第1章:早乙女学園
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さぁ、今日は体育祭です!
第13話
天候にも恵まれ、早乙女学園の体育祭は無事開催。準備体操をしながら楽しい日になるといいなぁ、なんて暢気に考えていた。いつもおろしてる髪も一つに高い位置でまとめてやる気は十分だ。
「わぁ!綾奈ちゃんポニーテール可愛いですぅ!」
「おはようございます、四ノ宮くん。今日は動き回るのでまとめてみました」
「おはようございます!とーっても似合ってますよぉ」
「ふふ、嬉しいです」
今日は頑張りましょうね、と四ノ宮くんと笑い合う。こんなにストレートに褒められることもそうないから照れ臭い。でも朝からめちゃくちゃ癒された。四ノ宮くんはいつも穏やかでそばにいると落ち着く。
「あ、そうだ。四ノ宮くんに渡したいものがあるんでした」
「え?なんですか?」
「はいっ!ピヨちゃんのヘアゴムです!この前可愛くてガチャポンやったんですけど同じのが当たったんです!四ノ宮くんも好きだって言ってたから…あ、わ、私とお揃いになるのがアレだったらいいんだけ、」
「わぁ~!いいんですかぁ?大事にします!!綾奈ちゃんとお揃いなんて嬉しいなぁ」
「あ…、えへへ。どうせなら今つけましょう!」
差し出したピヨちゃんのヘアゴムが余程嬉しかったようで、四ノ宮くんは食い気味に喜んでくれた。お揃いなんて烏滸がましいかなぁなんて一瞬でも思った私を救ってくれた。
私も自分の分は持っていたので2人して前髪をちょこんと結ぶ。うわ~!四ノ宮くん可愛すぎ!あとで一緒に写真撮りましょうね、なんて笑ってクラスの待機場所に向かう。注目されている気がするけど、私も四ノ宮くんもニコニコなので問題ないのである。
「あ!那月に高原ー!やっときた、てなにそれ!?」
「ふふ。綾奈ちゃんにいただいたんです。今日は僕たちいつもよりずーっと仲良しさんなんです!」
「愛らしいヘアゴムだな。2人によく似合っている」
「そ、それに高原、髪も縛ってるし…!めちゃくちゃ可愛いよ!」
「えへへ、やったー。ありがとうございますっ」
俄然やる気出てきました、と笑う。髪型一つでこんなに反応をもらえるならもう少しこれからも気にかけようかな、なんて。
「私たちの中で最初の出番は…聖川くんですね」
「あぁ。どうやら神宮寺も出場するようでな。負けられない戦いだ」
「へぇ。…あ、前にあまり運動は得意じゃないって…」
「あぁ。だが修練を怠ってきたつもりはない。大丈夫だ」
「ふふっ!じゃあ精一杯応援しますね!」
「あぁ、宜しく頼む」
では行ってくる、と100m走出場者の集合場所に向かう聖川くんを見送った。少ししたら私も移動しないと。私も女子の100m走に出場するので、ちょうどゴールした聖川くんとすれ違うことになりそうだ。その時に声をかけられたらいいな。
続々と走る生徒を応援しながら、そろそろかな、と立ち上がる。 私も集合場所に行ってきます、と隣に座っていた一十木くんに声をかけてエールをもらって足を進ませた。歩くたびに揺れるオデコの上の髪に気分が明るくなる。
「おや、高原さん。…なんですか、その頭は」
「一ノ瀬くん!これは四ノ宮くんとの仲良しさんの証です!」
Sクラスの待機場所を越えた先が出場待機場所なのだが、そこを通り過ぎようとした時に一番後ろの列に座っていた一ノ瀬くんに声を掛けられた。手元にはハードカバーの本。どうやら体育祭にはあまり興味がないらしい。
私の前髪を見て呆れた表情を浮かべた彼だったけど、私があまりにも嬉しそうに話していたのかその表情を少し緩ませた。…いやまて。もしかしたら一ノ瀬くんも可愛いもの好きなのかもしれない。
「今度一ノ瀬くんにも何かプレゼントしますね」
「結構です。…そうやってあなたが身につけている方がそのキャラクターも嬉しいですよ。私は見るだけで充分です」
「そんなことないと思いますけど…あ!じゃあ今度ピヨちゃんコレクション持ってきます!一緒に鑑賞会しましょう!」
「いえ、私は、」
「あ!その時は四ノ宮くんもお誘いしましょう。きっと楽しいですっ」
「…仕方のない人ですね」
「え?」
なんでもありません、と言い直してくれそうになかったので諦め、一ノ瀬くんの出場競技を聞けば騎馬戦なのだとか。騎馬戦は確か…一十木くんが出るな。同室同士での勝負だ。あ、そういえば聖川くんと神宮寺くんもそうだ。なんだろ、部屋割りってそういう確執がある人同士でわざと組ませてるんじゃないかと思ってしまう。頑張ってくださいね、という言葉にいい返事はもらえなかったけどまぁ良し。
と、そこで一ノ瀬くんが私をじっと見て何か考えてる様子。どうしたのか、という意味を込めて首を傾げれば彼は、あぁ、と何か思い当たったように言葉を繋げた。
「あなたを見ていると何かを彷彿させると思っていたんですが…子犬ですね」
「えっ。こ、子犬?」
「弱々しいのかと思えば急に噛み付いてきたり、かと思えば尻尾を振って甘えてきたり」
「そ、そんな恥ずかしい人間のつもりはなかったんですけど」
「フフ。今もそうですよ」
「えぇ…」
子犬だと形容されるなんて…私確か君より年上…。いやいや一ノ瀬くんが落ち着きすぎなのもあるけど、子犬…。 子犬が嫌いなわけは勿論ないけど、暗に落ち着きがないと言われたような気がして落ち込む私に、一ノ瀬くんがフッと笑うのが聞こえた。
「、えっ」
「…可愛い人ですね、あなたは」
「なっ、えっ、一ノ瀬く、」
「ほら、そろそろ待機場所に行かないと遅れるのでは?」
「えっあ、うん、あの、」
「フッ…ま、頑張ってください」
私のあげた前髪に触れ、優しく笑う一ノ瀬くんの笑顔を間近でくらった私の頭はクラッシュ。ななななななんて甘い顔を!!!!ワンちゃん好きなのか一ノ瀬くん!!!あの笑顔が見れるなら私もう子犬でいいや!!!ワンッ!!!!!!
と、見るからに動揺した頭でその場から離れた。顔が熱い。私には刺激が強すぎた…。
あーもう、顔が良いってズルいなぁ!!体育祭頑張ろっ!!!!!
一ノ瀬くんの良すぎるお顔に力をもらった私は足取り軽く待機場所へ向かった。
20190720