再開と秋組公演
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「ポートレイト?」
「うん。これから全員でやるんだけど良かったら綾奈も見て感想聞かせて」
第6話
千秋楽前日、今日までにも何度かトラブルはあったらしいが、千秋楽の明日に向けて各々調子をあげてきているらしい。今日はいづみにお呼ばれしたのでやってきたのだけど、これから秋組の"人生最大の後悔"をテーマにしたポートレイトを披露するのだとか。私はカレーに合うチャイを作って持ってきただけなんだけどいいのかな。まぁ、いづみが言うならいいのだろうと無理やり納得して空いていた万里くんの隣のソファに腰掛ける。みんなに会うのは少し久しぶりだ。
「こんばんは、万里くん。ちょっと久しぶりだね」
「だな。テーマがテーマなだけに最高にかっこ悪いとこ見せるのが腑に落ちねーけど」
「いいよ、そんなの。それをひっくるめての万里くんだし」
「…口説いてる?」
「なんでそうなるの」
少し緊張してるのかな、と思ったけどちょっと解れたみたいでよかった。いづみによるとこのポートレイトの披露は2度目らしい。少し前に別の劇団の前座として一人ずつやったらしい。めちゃくちゃ度胸鍛えられそうだね、それ。
トップバッターの兵頭くんから始まり、古市さん伏見さんと来て七尾くんの番。いつもと違って思いつめたような表情の彼はどこか怯えているようだった。その状況を知っているのか、伏見さんが、ほら、と背中を押すと一つ深呼吸をして静かに彼は"人生最大の後悔"を口にした。
「…以上。俺のポートレイト終わり」
「…うん。すごく良かったよ万里くん。最初のとは比べ物にならない」
「あざっす」
七尾君のポートレイトを聞いて声を出してしまいそうになったが、流れをきってはいけない、と最後の万里くんの独白を聞くまで静かに待っていた。確かに、みんなポートレイトとしてはとても良かったと思う。それぞれの後悔がとても伝わってくるし、表現も良かった。みんなの後悔が痛いほどに響いた。
衝撃だったのは、内容だ。
秋組に脅迫状を送ったり公演衣装や小道具に細工をしていたのは、七尾君。彼だったのだ。
ここにいる資格がないと涙ながらに謝罪する彼にきっと偽りはない。みんなは彼にそれをさせたGOD座の支配人に怒りを向けている。でも、やったことは消える訳じゃない。
七尾くん、と静かに呼ぶとびくりと肩を跳ねさせて私を見る彼。綾奈落ち着いて、と宥めるいづみ。そんなに私は恐ろしい顔をしているのだろうか。でもごめん。これだけは言わないと気が済まない。
「君がやりたくないことをやらされていたのは分かった。辛かったと思う」
「…はい」
「でも兵頭くんが言ったように君がしたことは消えない。瑠璃川くんが君たちの為に作った衣装をめちゃくちゃにしたことは消えない」
「は、い」
「ちゃんと瑠璃川くん本人に謝って。それで殴られて。そうじゃないと私は君を許すことができない」
「も、もちろんッス…!俺、この劇団にいる資格だって、」
「でも」
「、」
「勇気を、出してくれてありがとう。話してくれてありがとう。よく頑張ったね」
「…っ!」
耐えきれなくなってきた涙を見せまいと下を向いた彼をそっと抱きしめる。大丈夫、もう大丈夫だよ、と伝わるようにゆっくりと背中をさすってやる。
大丈夫。君はもうGOD座の七尾太一じゃない。
「俺はっ…MANKAIカンパニーの、秋組の七尾太一ッス…!!」
この劇団の君なのだから。
「綾奈さんが聖母かと思った」
「は?」
夜。今日も夕飯をごちそうになりながら万里くんが口を開いた。なにそれ、と事情を知らない茅ヶ崎さんが尋ねると万里くんは軽く説明をした。七尾くんの件は言っていない。単純にこの劇団が好きだ~、と泣いた七尾くんを抱きしめた私が聖母に見えた、と。詳しいことは言うつもりはないらしい。それは私も言わなくていいと思うけど、何言ってんだこの人。
「確かにさっきの綾奈さんには全てを許してくれそうな雰囲気があったよな」
「えええ…!?綾奈さんって聖母さんだったんですか…!?凄い…!」
「ちょっと。純情な向坂ボーイを弄ばないでください」
「でも分かる。綾奈って包容力凄いよね。というか私、綾奈が怒ってるの見た事ないかも」
「いづみまで辞めてよ…。私だって普通に怒るよ。いづみが怒らせるようなことしたら」
ちょっと凄みをきかせてじろりといづみを見れば、アハハ…、と苦笑しながら両手をあげて降参のポーズをとった。それでよろしい。
怯える監督も可愛い…、とうっとりといづみを見る真澄くん。言い出しっぺの万里くんも特に私のブチ切れ話を言う素振りもなくて安心した。流石にそれ言われたら怒るっていうか拗ねるかも。だってそれでいづみに説教食らいそうだし。
「ていうか綾奈は快適寝具って感じ。触れたら是が非でも睡魔に襲われる」
「瑠璃川くん褒めるならちゃんと褒めて…」
「オー!綾奈は外敵ソングだったネ!?」
「なんで聞いた傍から間違えるんだよシトロンさん…」
伏見さん特製のオムライスを口にしながら、好き勝手言われてる…、と半ば諦め状態に陥る。万里くん許さないぞ。
「じゃあ今晩俺の抱き枕よろ。高原さん」
「だが断る」
明日千秋楽なんだから早く食べてみんな寝てください。茅ヶ崎さんはいいです。一生起きててください。
「そ、それにいい匂いしたッス!!!」
七尾くん、やっぱり殴ったほうがいいかな?
20170724
「うん。これから全員でやるんだけど良かったら綾奈も見て感想聞かせて」
第6話
千秋楽前日、今日までにも何度かトラブルはあったらしいが、千秋楽の明日に向けて各々調子をあげてきているらしい。今日はいづみにお呼ばれしたのでやってきたのだけど、これから秋組の"人生最大の後悔"をテーマにしたポートレイトを披露するのだとか。私はカレーに合うチャイを作って持ってきただけなんだけどいいのかな。まぁ、いづみが言うならいいのだろうと無理やり納得して空いていた万里くんの隣のソファに腰掛ける。みんなに会うのは少し久しぶりだ。
「こんばんは、万里くん。ちょっと久しぶりだね」
「だな。テーマがテーマなだけに最高にかっこ悪いとこ見せるのが腑に落ちねーけど」
「いいよ、そんなの。それをひっくるめての万里くんだし」
「…口説いてる?」
「なんでそうなるの」
少し緊張してるのかな、と思ったけどちょっと解れたみたいでよかった。いづみによるとこのポートレイトの披露は2度目らしい。少し前に別の劇団の前座として一人ずつやったらしい。めちゃくちゃ度胸鍛えられそうだね、それ。
トップバッターの兵頭くんから始まり、古市さん伏見さんと来て七尾くんの番。いつもと違って思いつめたような表情の彼はどこか怯えているようだった。その状況を知っているのか、伏見さんが、ほら、と背中を押すと一つ深呼吸をして静かに彼は"人生最大の後悔"を口にした。
「…以上。俺のポートレイト終わり」
「…うん。すごく良かったよ万里くん。最初のとは比べ物にならない」
「あざっす」
七尾君のポートレイトを聞いて声を出してしまいそうになったが、流れをきってはいけない、と最後の万里くんの独白を聞くまで静かに待っていた。確かに、みんなポートレイトとしてはとても良かったと思う。それぞれの後悔がとても伝わってくるし、表現も良かった。みんなの後悔が痛いほどに響いた。
衝撃だったのは、内容だ。
秋組に脅迫状を送ったり公演衣装や小道具に細工をしていたのは、七尾君。彼だったのだ。
ここにいる資格がないと涙ながらに謝罪する彼にきっと偽りはない。みんなは彼にそれをさせたGOD座の支配人に怒りを向けている。でも、やったことは消える訳じゃない。
七尾くん、と静かに呼ぶとびくりと肩を跳ねさせて私を見る彼。綾奈落ち着いて、と宥めるいづみ。そんなに私は恐ろしい顔をしているのだろうか。でもごめん。これだけは言わないと気が済まない。
「君がやりたくないことをやらされていたのは分かった。辛かったと思う」
「…はい」
「でも兵頭くんが言ったように君がしたことは消えない。瑠璃川くんが君たちの為に作った衣装をめちゃくちゃにしたことは消えない」
「は、い」
「ちゃんと瑠璃川くん本人に謝って。それで殴られて。そうじゃないと私は君を許すことができない」
「も、もちろんッス…!俺、この劇団にいる資格だって、」
「でも」
「、」
「勇気を、出してくれてありがとう。話してくれてありがとう。よく頑張ったね」
「…っ!」
耐えきれなくなってきた涙を見せまいと下を向いた彼をそっと抱きしめる。大丈夫、もう大丈夫だよ、と伝わるようにゆっくりと背中をさすってやる。
大丈夫。君はもうGOD座の七尾太一じゃない。
「俺はっ…MANKAIカンパニーの、秋組の七尾太一ッス…!!」
この劇団の君なのだから。
「綾奈さんが聖母かと思った」
「は?」
夜。今日も夕飯をごちそうになりながら万里くんが口を開いた。なにそれ、と事情を知らない茅ヶ崎さんが尋ねると万里くんは軽く説明をした。七尾くんの件は言っていない。単純にこの劇団が好きだ~、と泣いた七尾くんを抱きしめた私が聖母に見えた、と。詳しいことは言うつもりはないらしい。それは私も言わなくていいと思うけど、何言ってんだこの人。
「確かにさっきの綾奈さんには全てを許してくれそうな雰囲気があったよな」
「えええ…!?綾奈さんって聖母さんだったんですか…!?凄い…!」
「ちょっと。純情な向坂ボーイを弄ばないでください」
「でも分かる。綾奈って包容力凄いよね。というか私、綾奈が怒ってるの見た事ないかも」
「いづみまで辞めてよ…。私だって普通に怒るよ。いづみが怒らせるようなことしたら」
ちょっと凄みをきかせてじろりといづみを見れば、アハハ…、と苦笑しながら両手をあげて降参のポーズをとった。それでよろしい。
怯える監督も可愛い…、とうっとりといづみを見る真澄くん。言い出しっぺの万里くんも特に私のブチ切れ話を言う素振りもなくて安心した。流石にそれ言われたら怒るっていうか拗ねるかも。だってそれでいづみに説教食らいそうだし。
「ていうか綾奈は快適寝具って感じ。触れたら是が非でも睡魔に襲われる」
「瑠璃川くん褒めるならちゃんと褒めて…」
「オー!綾奈は外敵ソングだったネ!?」
「なんで聞いた傍から間違えるんだよシトロンさん…」
伏見さん特製のオムライスを口にしながら、好き勝手言われてる…、と半ば諦め状態に陥る。万里くん許さないぞ。
「じゃあ今晩俺の抱き枕よろ。高原さん」
「だが断る」
明日千秋楽なんだから早く食べてみんな寝てください。茅ヶ崎さんはいいです。一生起きててください。
「そ、それにいい匂いしたッス!!!」
七尾くん、やっぱり殴ったほうがいいかな?
20170724