再開と秋組公演
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「綾奈ごめん急に!助けてっ…!」
第5話
切羽詰まったいづみの電話を受け、私は今朝あとにしたMANKAI寮にやってきた。明日のゲネプロも中止にしたらしい。そうしなければならない事態になったのだ。
「これは…酷いね」
「綾奈…悪いけど、どうしても1日で仕上げたい。協力して」
「もちろん。初日は予定通りに行ってもらう」
衣装がズタズタに切り裂かれてしまった。
そう連絡を受けた時は怒りと悲しみでいっぱいだったけど、移動中に大分頭は冷静になった。悲観している場合じゃない。そうなってしまったものは仕方ない。今は私の出来ることで彼等は舞台に立たせる。
諦めるつもりは毛頭ない秋組のみんなと衣装に向き合う。さすが万里くんは飲み込みが早くてすぐにミシンを使いこなしてくれた。私は手縫いでしかできない細かい作業をこなす。
細かいことが得意でないメンバーも自分が出来ることをきちんと見極めて作業した。それでも何日もかけて仕上げてきた衣装だ。これだけの人数がいたとしてもそれなりの時間は食う。終わった…、と全員が気を抜けたのは本番の数時間前だった。外はもう明るい。
リハですら断念して、今は全員が体を休める為に自室に戻った。私も休んで、と言われたけど今寝てなにかあったら対応できないから談話室で珈琲でももらってるね、といづみを見送った。彼女もきっと寝ずに準備に取り掛かるのだろう。残念だけどさすがに主宰の仕事を手伝う訳にはいかない。
一人静かな談話室で温かい珈琲をいれる。もちろんブラックだ。眠気覚ましになるし。いつもは笑い声であふれているこの場所が静かなことに、少し胸騒ぎがした。
「え?綾奈初日も観劇してくれるの?」
「うん。このままじゃちょっと不安で。立ち見でいいからチケット買わせて」
「ありがとう!心強い!席は関係者席に座って!千秋楽に綾奈に用意してる席とは全然違うけど、それでも座って見れるから」
「いいの?ありがとう。一応、幕間には楽屋にお邪魔するね」
「うん、よろしく」
きっとみんなあまり休めなかったであろう状態での舞台初日。観客の入りは上場。私が思っていたよりも前公演でファンを獲得していたらしい。私も見てみたかったな。録画とかしてなかったのかな。今度いづみに聞いてみよう。
そしてやがて開演時間。幕が、あがる。
*
「みんなお疲れ様!よかったよ、って…」
「綾奈!ありがとう。実はみんな終わるやいなや寝ちゃったみたいで…」
「徹夜明けだもんね。とにかく初日なんとか乗り切れてよかったね」
「うん…っ。綾奈、ありがとう本当に」
「正直お前がいなかったら公演前の仮眠も出来なかった」
「古市さんまで…。気にしないでください。とにかく千秋楽まで何事も起こらないことを祈ります」
「ほんとにな…」
公演後に訪れた楽屋では爆睡する古市さんを除いた秋組メンバー。無理もない。起きてる古市さんだって相当眠そうで前に見かけた時の3割増しぐらいで眉間に皺が寄ってる気がする。いづみも欠伸をかみ殺してるし。
「二人もどうぞ休んでください。会場の清掃とか、私やるんで。他にも出来そうなことあったら言って。雑用ぐらいしか出来ないけど」
「大丈夫、私もやるよ。綾奈だって寝てないんだから」
「馬鹿。私は今できるのはそれくらいなの。明日からの公演だっていづみ達にはやるべきことがあるんだから。休んで」
「…悪いな。劇場の清掃を簡単にだけ頼めるか。あとは支配人に言っておく」
「ちょっ!左京さん!」
「任せてください。いい公演でした。千秋楽も、楽しみにしてますね」
あぁ、とほほ笑んだ古市さんは未だに納得していないいづみの肩を押しながら控室を出た。あとのメンバーはどうしよう…。清掃し終わったらまた見にこようか。その時にまだ寝てたら起こしてあげよう。
「とりあえず、お疲れ様。みんな」
小さな劇場と言えど一人で清掃となるとそれなりに時間がかかる。二人と別れてから1時間は経っただろうか。観客席だけじゃなくロビーや舞台上もやりたいからもう少しかかるかな、と一度休憩することにした。
近くの席に座って舞台をぼんやりと眺める。
私もかつて立っていた場所。自分とは別の人間の人生を歩める場所。私はその感覚が好きだった。役といえど、その人にはその人の人生がある。それを3時間弱という時間でどう観客に伝えるか。それをやり切った時のお客さんの表情。鳴りやまない拍手。心が震えるのだ。懐かしい。
「おーい綾奈チャンいるー?」
「え?」
「あ!いた!テンテーン!綾奈チャンいた!」
「マジか。ほんとにまだ帰ってなかったのか」
「三好くんに皇くん…?どうしたの?なにかあった?」
静かだった劇場に明るい声が響いたと思ったらそれは知った二人で。どうしたのか尋ねれば、いづみに様子を見てきてほしいと頼まれたのだとか。その当人は古市さんに出禁をくらったらしい。抜け出そうとしたのか?いづみ。
ちょっと休憩しよー!、とお茶のペットボトルを差し出してくれた三好くんにお礼を言って受け取る。思っていたより喉は乾いていたらしく、ゴクゴクと女らしからぬ飲みっぷりを発揮した。綾奈チャン男前~!、と言われるのは別にいいけど写メ撮るのは辞めてください三好くん。
「綾奈さん、今日の公演観たのか?」
「うん、見たよ。トラブルはあったけど公演自体は出だしも好調だと思う」
「マジかー!俺等も負けてらんないね、テンテン!」
「当然」
「二人は公演を終えたばかりだよね。私も見たかったなぁ二人の演劇」
「それな!綾奈チャンに俺の初舞台見てほしかった~!そしたらめっちゃテンアゲだったのに!」
「支配人が録画してなかったか、確か」
「本当?どうせなら生がよかったけど仕方ないもんね。後で松川さんにお願いしてみよう」
次の公演は絶対観に行くね、と笑えば照れくさそうに、絶対だぞ、と言う皇くんに母性本能を擽られました。この子可愛いな。
休憩しながら三好くんのインステのフォロワー数の話になって先日の写メの話になった。どうやら結構コメントがついたらしい。可愛いだとかそういう前向きな内容ばっかりと聞いてホッとした。なにこの女馴れ馴れしい、とか書かれたらどうしようかと思った。ただ安心してほしい。ただのお手伝いさんだから私。ホッとしていたのに、じゃあ記念にパシャ~☆、と皇くんとの2ショットを撮られた。あ、これあかんやつや。
「三好くん。さすがに皇くんとの2ショはダメだ。私の命が危ない」
「大丈夫だって!また綾奈チャン見たいって声も結構あったし!」
「いやだって皇天馬さんですよ?今話題の」
「…そんなに嫌なのかよ。俺と写んのは」
「え?いやいやそうじゃなくて…皇くんは大丈夫なの?」
「今は別に仕事してるわけじゃないからな。一成、載せていいぞ」
「オッケー☆」
「おおお…しかも汗やらでボロボロの状態だった私…」
乱れた感じもめっちゃ可愛いー!、と言ってくれる三好くん天使ですね。適当にまとめていた髪を手で撫でた。今更遅いけども。
「綾奈さんならどんなでも悪く写らないだろ」
買いかぶりすぎです、皇氏。
20170723
第5話
切羽詰まったいづみの電話を受け、私は今朝あとにしたMANKAI寮にやってきた。明日のゲネプロも中止にしたらしい。そうしなければならない事態になったのだ。
「これは…酷いね」
「綾奈…悪いけど、どうしても1日で仕上げたい。協力して」
「もちろん。初日は予定通りに行ってもらう」
衣装がズタズタに切り裂かれてしまった。
そう連絡を受けた時は怒りと悲しみでいっぱいだったけど、移動中に大分頭は冷静になった。悲観している場合じゃない。そうなってしまったものは仕方ない。今は私の出来ることで彼等は舞台に立たせる。
諦めるつもりは毛頭ない秋組のみんなと衣装に向き合う。さすが万里くんは飲み込みが早くてすぐにミシンを使いこなしてくれた。私は手縫いでしかできない細かい作業をこなす。
細かいことが得意でないメンバーも自分が出来ることをきちんと見極めて作業した。それでも何日もかけて仕上げてきた衣装だ。これだけの人数がいたとしてもそれなりの時間は食う。終わった…、と全員が気を抜けたのは本番の数時間前だった。外はもう明るい。
リハですら断念して、今は全員が体を休める為に自室に戻った。私も休んで、と言われたけど今寝てなにかあったら対応できないから談話室で珈琲でももらってるね、といづみを見送った。彼女もきっと寝ずに準備に取り掛かるのだろう。残念だけどさすがに主宰の仕事を手伝う訳にはいかない。
一人静かな談話室で温かい珈琲をいれる。もちろんブラックだ。眠気覚ましになるし。いつもは笑い声であふれているこの場所が静かなことに、少し胸騒ぎがした。
「え?綾奈初日も観劇してくれるの?」
「うん。このままじゃちょっと不安で。立ち見でいいからチケット買わせて」
「ありがとう!心強い!席は関係者席に座って!千秋楽に綾奈に用意してる席とは全然違うけど、それでも座って見れるから」
「いいの?ありがとう。一応、幕間には楽屋にお邪魔するね」
「うん、よろしく」
きっとみんなあまり休めなかったであろう状態での舞台初日。観客の入りは上場。私が思っていたよりも前公演でファンを獲得していたらしい。私も見てみたかったな。録画とかしてなかったのかな。今度いづみに聞いてみよう。
そしてやがて開演時間。幕が、あがる。
*
「みんなお疲れ様!よかったよ、って…」
「綾奈!ありがとう。実はみんな終わるやいなや寝ちゃったみたいで…」
「徹夜明けだもんね。とにかく初日なんとか乗り切れてよかったね」
「うん…っ。綾奈、ありがとう本当に」
「正直お前がいなかったら公演前の仮眠も出来なかった」
「古市さんまで…。気にしないでください。とにかく千秋楽まで何事も起こらないことを祈ります」
「ほんとにな…」
公演後に訪れた楽屋では爆睡する古市さんを除いた秋組メンバー。無理もない。起きてる古市さんだって相当眠そうで前に見かけた時の3割増しぐらいで眉間に皺が寄ってる気がする。いづみも欠伸をかみ殺してるし。
「二人もどうぞ休んでください。会場の清掃とか、私やるんで。他にも出来そうなことあったら言って。雑用ぐらいしか出来ないけど」
「大丈夫、私もやるよ。綾奈だって寝てないんだから」
「馬鹿。私は今できるのはそれくらいなの。明日からの公演だっていづみ達にはやるべきことがあるんだから。休んで」
「…悪いな。劇場の清掃を簡単にだけ頼めるか。あとは支配人に言っておく」
「ちょっ!左京さん!」
「任せてください。いい公演でした。千秋楽も、楽しみにしてますね」
あぁ、とほほ笑んだ古市さんは未だに納得していないいづみの肩を押しながら控室を出た。あとのメンバーはどうしよう…。清掃し終わったらまた見にこようか。その時にまだ寝てたら起こしてあげよう。
「とりあえず、お疲れ様。みんな」
小さな劇場と言えど一人で清掃となるとそれなりに時間がかかる。二人と別れてから1時間は経っただろうか。観客席だけじゃなくロビーや舞台上もやりたいからもう少しかかるかな、と一度休憩することにした。
近くの席に座って舞台をぼんやりと眺める。
私もかつて立っていた場所。自分とは別の人間の人生を歩める場所。私はその感覚が好きだった。役といえど、その人にはその人の人生がある。それを3時間弱という時間でどう観客に伝えるか。それをやり切った時のお客さんの表情。鳴りやまない拍手。心が震えるのだ。懐かしい。
「おーい綾奈チャンいるー?」
「え?」
「あ!いた!テンテーン!綾奈チャンいた!」
「マジか。ほんとにまだ帰ってなかったのか」
「三好くんに皇くん…?どうしたの?なにかあった?」
静かだった劇場に明るい声が響いたと思ったらそれは知った二人で。どうしたのか尋ねれば、いづみに様子を見てきてほしいと頼まれたのだとか。その当人は古市さんに出禁をくらったらしい。抜け出そうとしたのか?いづみ。
ちょっと休憩しよー!、とお茶のペットボトルを差し出してくれた三好くんにお礼を言って受け取る。思っていたより喉は乾いていたらしく、ゴクゴクと女らしからぬ飲みっぷりを発揮した。綾奈チャン男前~!、と言われるのは別にいいけど写メ撮るのは辞めてください三好くん。
「綾奈さん、今日の公演観たのか?」
「うん、見たよ。トラブルはあったけど公演自体は出だしも好調だと思う」
「マジかー!俺等も負けてらんないね、テンテン!」
「当然」
「二人は公演を終えたばかりだよね。私も見たかったなぁ二人の演劇」
「それな!綾奈チャンに俺の初舞台見てほしかった~!そしたらめっちゃテンアゲだったのに!」
「支配人が録画してなかったか、確か」
「本当?どうせなら生がよかったけど仕方ないもんね。後で松川さんにお願いしてみよう」
次の公演は絶対観に行くね、と笑えば照れくさそうに、絶対だぞ、と言う皇くんに母性本能を擽られました。この子可愛いな。
休憩しながら三好くんのインステのフォロワー数の話になって先日の写メの話になった。どうやら結構コメントがついたらしい。可愛いだとかそういう前向きな内容ばっかりと聞いてホッとした。なにこの女馴れ馴れしい、とか書かれたらどうしようかと思った。ただ安心してほしい。ただのお手伝いさんだから私。ホッとしていたのに、じゃあ記念にパシャ~☆、と皇くんとの2ショットを撮られた。あ、これあかんやつや。
「三好くん。さすがに皇くんとの2ショはダメだ。私の命が危ない」
「大丈夫だって!また綾奈チャン見たいって声も結構あったし!」
「いやだって皇天馬さんですよ?今話題の」
「…そんなに嫌なのかよ。俺と写んのは」
「え?いやいやそうじゃなくて…皇くんは大丈夫なの?」
「今は別に仕事してるわけじゃないからな。一成、載せていいぞ」
「オッケー☆」
「おおお…しかも汗やらでボロボロの状態だった私…」
乱れた感じもめっちゃ可愛いー!、と言ってくれる三好くん天使ですね。適当にまとめていた髪を手で撫でた。今更遅いけども。
「綾奈さんならどんなでも悪く写らないだろ」
買いかぶりすぎです、皇氏。
20170723
