決意と第二回公演
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「あれ?なんか珍しい組み合わせっスね」
第1話
「はーっ!すっかり暖かくなってきたね~!」
「そうだね。こうやってテラスでお茶も出来るようになってきたし」
「まぁまだちょっと肌寒くはあるけどな。綾奈さん大丈夫か?」
「うん!ありがとう万里くん」
年も明けて気付けば段々と暖かくなり春めいてきた。今日もカンパニーに来ていた私は臣くんとクッキーを焼いて、お茶飲み友だちの月岡さんと万里くんを誘ってテラスでお茶会を開いていた。二人もカフェ友達らしく、いいねと二つ返事でのってきてくれた。寒くないか、とブランケットを手渡してくれる万里くんは今日も出来る子です。
暖かい紅茶と焼き立てのクッキーを食べながらのんびり話す時間はとても有意義だ。話す内容はどこのカフェに新商品が出てただとか、新しいカフェが出来ていただとか、二人が如何にカフェ好きかが分かる内容だ。私も今度連れて行ってもらおう。
「あ、そういえばもうそろそろ春組公演の話とかでるんじゃない?」
「あー確かに。春組の前の脚本はロミジュリだっけか」
「恋愛ものを友情ものにしちゃうっていうのは新しくて面白いよね」
「ですよね~、あ!噂をすれば皆木くん!」
ちょうど今度の公演の話になったところで廊下を歩く皆木くんの姿が見えたので呼び止める。こちらに来てくれた皆木くんはここにいるメンバーを見て、珍しいっスね、と少し意外そうに口を開いた。
「もうすぐ春で今日はあったかいからね~お茶会してたんだ」
「お茶会…」
「で?ちょうど春組の次回公演の話してたんだけど、テーマとか決まってんのか?」
「あ、時間あるかな?綴くんもよかったらお茶どうぞ」
「え、あ、すんません」
特に急ぎの用はないとのことで半ば無理矢理皆木くんを座らせてお茶とクッキーを勧める。少し圧倒されながらもクッキーを一口食べた皆木くんの口から零れた美味いの一言で思わずニンマリ。
それからは公演の話になり、秋組と冬組の脚本についても裏話なんかも聞いちゃって。秋と冬は私も少し関わっただけに余計に感情移入してしまった。本当に当て書きがめちゃくちゃハマったよなぁ、二つとも。
「次の春組公演も当て書きにするの?みんな公演がない間も稽古していたみたいだし実力はついてきてると思うけど」
「今回は当て書きにはしないつもりっス。ただ、やっぱり春組の明るくて優しい色は出したくて題材なににするか悩んでるんだよなぁ」
「そっか。この前の冬組は悲劇だっただけにそのギャップはいいよね」
「つーか春組は夏組とはまた別のコメディ感あるよな。天然コメディって感じ」
「あ、なんかそれ分かるかも!みんな狙ってる訳じゃないのに笑っちゃうイメージ。ほのぼのしてる」
俺達ってそんな風に見られてんスカ…、とげんなりする皆木くんは苦労人感が溢れすぎてる。まぁまぁ飲んで、なんて紅茶を勧めればまだ熱いはずなのにグイッと飲み干す姿に思わず拍手してしまった。私の姿に乾いた笑みを浮かべて、でも何かが閃いた様子で彼は少し慌ただしくテラスを後にした。
そして数日後に上がってきたプロットはなんと不思議の国のアリスが舞台。もしかして私達のお茶会が帽子屋のお茶会に見えたのかな、なんて万里くんと月岡さんと目を見合わせて笑った。 春組のメンバーは数日前にこのプロットを渡されていて、既に稽古に入っているらしい。
そうしてパラパラとプロットを眺めているといづみから、ちょっといい?、とのお誘い。断る理由もないので快諾していづみの部屋に向かった。
「どうしたの?なにか息詰まってる?」
「うーん、ちょっと思うところはあるけどね…。とりあえず今日呼んだのは春組のことじゃなくて」
「うん?」
いづみの部屋にお邪魔し、二人とも座って息をついた。なにか悩み事かと思って早速尋ねてみたが、どうやら今回は舞台に関しての話ではないらしい。どうしたの?、と先を促すと笑みを浮かべていづみは口を開いた。
「綾奈、この寮に住むのってどうかな?」
「えぇっ?」
「前から漠然と思ってたんだ。これからも手伝わせたいからって訳じゃなくて、ホラ、綾奈も実家出たいみたいなこと言ってたでしょ?」
「まぁ…一人暮らしは考えてたけど」
「一人暮らしがいいっていうなら無理は言わないけど、帰ってきたらここに綾奈もいるなら嬉しいなって。そりゃ多少お手伝いはお願いしちゃうけど」
結構私情だよ、と苦笑をこぼすいづみに私は乾いた笑いを返すのが精一杯だった。
確かに実家を出たいなと漠然と思っていたし、これからのカンパニーのお手伝いもしていきたいと思っている。むしろここに住めば、より長く深く手伝うことは出来るだろう。職場もここからの方が近いし。
正直、断る理由は思い当たらない。では、この即答出来ない気持ちはなんだろう。
NOとも言えない私の様子に、いづみは静かに私の名前を呼び向かい合うように座り直した。そして握られた手が温かい。そして、私も人のこと言えないんだろうけど、と言葉を続けた。
「綾奈は本当に人に甘えるのが下手だよね。頼らせてくれるし甘やかしてもくれるくせに」
「…」
「私、綾奈の気持ちを尊重したいと思ってる。…綾奈のやりたいと思ってることを手助けしたいと思ってる」
「、!いづみ気付いて、」
「はっきりしたことまでは分からないけどね。…今すぐでなくていいから。考えてみて?」
支配人には了承もらってるから、と用意周到ないづみはイタズラっこのように笑った。急ぐことではないからと返事はいつでもいいと私を思いやってくれる彼女は本当に観察眼が鋭い。私が舞台に関して何か思うところがあるのも気付いていたらしい。なんやかんやで彼女には敵わないなぁと思う。
ありがとう、と笑うと少し肩の力が抜けた気がした。
「あ。でもね綾奈」
「ん?」
「私、スカウトは百発百中なんだよね」
そう自信有り気に笑ういづみに、私もきっと近い未来に百発百中記録を更新させてあげることになるだろうなと悟った。
20190331
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