カンパニーと冬組公演
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「綾奈くんは少し、自分に自信が無さ過ぎるのではないか?」
「どうしたんですか?急に」
第10話
冬組公演の成功、タイマンACTの勝利、そしてカンパニーの借金返済を祝して月岡さんの音頭によって打ち上げが始まった。
臣くん特製のマルゲリータは大好評。手伝った私も鼻が高い。本当に美味しい!唐揚げやフライドポテトの他にも色々用意したけど、この勢いじゃすぐに無くなりそうだ。少し飲んだら、追加のピザを焼きに行ってくれた臣くんと、それを手伝いに行った皆木くんと交代しにいこう。
グラスを持ちながらみんなと乾杯していって、少し雑談なんかして。
そして有栖川さんのところへ行けば、彼は以前から思っていたのだが、と口を開いた。なんだと思えば、私は私に自信が無さ過ぎる、と。急にどうしたんだと聞けば「私はずっと理解出来なくてね」とのお言葉。
「綾奈くん。君は美しい。そして頭も良く、芯も強い女性だ」
「えっ本当にどうしたんですか?」
「故に、自信の無さが目立つ。君ほどの人物ならばもっと胸を張って生きるべきだとワタシは思うのだ」
「そう言っていただけるのは嬉しいですが、」
「そういうところなのだよ!」
「アッ…」
なんでも有栖川さんは端々に垣間見る私の自信の無い発言をいつも疑問に思っていたらしい。ワイングラスを揺らしながら「ワタシは人の気持ちが分からないからね…」と零す彼は一体どういう気持ちでそう言うのだろう。そんなことないのに、そう口を開こうとすればすかさず彼は言葉を重ねた。
「謙遜は時には醜くもある。ワタシは心から思ったことを言っているのに、それを否定されるのはあまりいい気分ではない」
「まぁ…そうですよね。疑ってる訳ではないんですけど」
「今日のGOD座のステージに団員があがった時もそうだ。君は一人だけ観客席から動かなかった。聞けば"カンパニーの一員じゃないから"と辞退したそうだね」
「…その通りなので」
なんかちょっと有栖川さん酔ってる?、と思わなくもないが目は真剣だ。そして私はきっと今お説教をされているのだ。自信について。…いやーこればっかりは性格な部分が大きいと思うんだけどなぁ。カンパニーの一員じゃないことも確かだし。
そんな私の言いたいことが伝わってしまったのか、彼はワイングラスをテーブルに置き、真っ直ぐに私を見据えた。切れ長の真剣な目に、引き込まれそうになる。
「衣装製作を手伝い、ヘアメイクや経営戦略、その他諸々を手伝う人間を我々は他人だとは思わないだろう」
「あんなのただのお手伝いの一部ですよ?」
「我々が君を仲間だと思うことは迷惑なことなのかな?」
「えっ…あ、いえ…そう言う訳では」
そんな風に言われて否定なんかできる訳ない。勿論、本当にそう思ってくれるならとても光栄だけど。
…私は仲間だと思ってても、それを相手に否定されることが酷く怖い。怖いのだ。でも、そんなこと言えるはずない。
だって、かっこ悪過ぎる。
「フム、そうか。ならば問題はない。 一成くんあれを!」
「オッケー!アリリン!」
「三好くん…?っていうかみんなも!聞いてたの!?」
「誉さんが代弁してくれたけど、結構みんな思ってることだったんだよ綾奈」
「いづみ…」
気付くとみんなが私と有栖川さんの話を聞いていて。そのことにも気付けないぐらい私は緊張してしまっていたらしい。しかも、その指摘された部分がみんな思ってたことだなんて。
頭が真っ白になっていると三好くんが「はい!遅くなっちゃってごめんね!綾奈チャン!」と私の手になにかを握らせた。ゆっくりと視線を手元に落とした私は、一気に視界が滲んでいった。
「団員証~!冬組のみんなにはちょっと前に渡してたんだけど、綾奈チャンのはちょっと悩んじゃって!」
「団員番号だよね?結局どうしたの?」
「そ!監督チャンが0だから悩んだんだけどー、そこはさすが!むっくんが提案してくれたんだよねー!」
「ちょ、ちょっと臭いかなって思ったんだけどそれしか思い浮かばなくって…!ごめんなさい!ボクみたいなノロマの案で…!」
「…団員番号、∞…」
渡されたそれはカンパニーのみんながお揃いで持ってるという団員証で。そういうものを持ってるっていうのは前にチラッと聞いていたから知っていたけど、まさか私の分を用意してくれるなんて。
「高原さんの泣き顔なんてもしかしてSR?」「どう考えてもSSRっしょ」なんて会話が聞こえてきたが、その主からタオルを差し出されたので有り難く借りる。ポンポンと頭を撫でてくれるゲーム好きの彼の手は優しい。
「椋くん、どうして∞なの?」
「あの、綾奈さんってどこの組にも属してないけど、でもみんなを繋いでくれる存在だなって思ったんです。"∞"が終わりがない、みたいな風に思えて」
「なるほど。いいね、無限大。確かに綾奈のお手伝いのおかげで、ボク達の舞台は無限大の可能性があると思うよ」
「確かに。舞台経験者だし手先も器用だし、何よりカレー星人じゃないし」
幸くんどういう意味?、なんていう楽しそうなやり取りに泣きながら私も笑ってしまった。
手の中にある幸せの証をぎゅっと握りしめた。
これからもよろしくお願いします。
そう告げるとみんなは、勿論!、と頷いてくれた。あぁ、なんだ。私の居場所を、彼等はとっくに用意してくれていたんだ。傷つくのが怖くてそれからずっと目を背けてしまっていた。
「有栖川さん、ありがとうございます。私、みんなのおかげで少しだけ自信が持てそうです」
「それは良かった」
「さっき、人の心が分からないって仰ってましたけど、有栖川さんはちゃんとみんなの心を汲んで私を仲間にしてくれたんですから、そんなこと全然ないですよ。貴方は人を思いやれる優しい人です」
「、!…ありがとう」
「それこそ、こちらこそ、です」
とっても嬉しいです、と笑った私に有栖川さんもニコリも微笑み返してくれた。
あぁ、どうしよう。今日のお酒が本当に美味しくなってしまった。
MANKAIカンパニーの新たな門出。目指すはフルール賞。きっと、いや絶対に導いてみせる。
彼等が咲くその瞬間を、きっとこの目で見届ける。
MANKAIカンパニーはやっとここからがスタートだ。
20190319
