カンパニーと冬組公演
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれ?雪白さん?」
第5話
「…あぁ、高原さん。こんにちは。買い物?」
「こんにちは。そうなんですよー。公演前に連休貰うためにしばらく連勤だったので久しぶりのお休みで!雪白さんも買い物ですか?」
「うん、そんなところかな。今日はみんな出掛けてるから」
時間があるならお茶でもしない?、というお誘いに二つ返事で頷いて近くのカフェに入った。ストレス発散にたくさん服なんかを買ったのでちょうど休憩したいと思っていたところだった。嬉しい遭遇だ。
雪白さんは紅茶、私も紅茶とそしてケーキを頼んで一息。こうして彼と2人で話すのは初めてだけど、独特の柔らかい雰囲気のおかげか、特に緊張することもなく会話に花を咲かせた。彼から聞くに、月岡さんと高遠さんも無事仲直り出来たらしい。タイマンACTに向けての脚本も色々詰めていることで一層よくなり、みんな俄然やる気なのだとか。それを話してくれる雪白さんもとても楽しそうだ。年齢とか色々不詳だけど、その笑顔は偽りじゃないな、なんて思った。
「フフ…高原さんは面白いね」
「いやいやいや!雪白さんこそ見た目によらず下ネタ爆発してて面白いですよ!」
「東でいいよ。ボクも綾奈って呼んでもいい?」
「め、めちゃくちゃスマートに言いますね…!でも勿論オッケーです、東さん!」
「嬉しいな。またお茶しようね、綾奈」
是非!、と返事をして話もそこそこに店を出た。別れ際に連絡先も交換なんかしちゃったりして。カンパニーの人とは役職的に連絡を取る、古市さんや瑠璃川くん、あとは三好くんぐらいしか知らないから純粋に連絡先を交換したのが嬉しい。他のみんなも聞いてもいいのかな。パワハラにならないかな。
そろそろ夕飯時だろう、と駅前で別れようとすると、今まで曇りの無かった表情に少し影を作って彼はこれから用事があるから、と劇場とは別の方に歩いていった。なんとなく気になったけど、行きたくない大人の付き合いってやつにでも行くのかな、と特に気にすることもなく私は帰路についた。
その日以降、東さんが夜に出掛けることが増えたことを私は知る由もなかった。
「えっ東さん寮でるの?」
それを知ったのは彼の引越しの前夜だった。せっかくだから、と誘われてMANKAI寮にやってきて送別会に参加することに。何でも劇団は辞めないけど、東さんの仕事が夜遅いことから生活リズムも変わってくるということで今日に至ったらしい。なるほど。
「それならそうと言ってほしかったです東さん~。昨日はなにも言ってなかったじゃないですか」
「フフ…ごめんね。綾奈との話が楽しくって、つい」
「あ!そう言っておけばいいと思ってますね?東さんのこと大体分かってきましたよ!」
「おや?本心なんだけどなぁ」
綾奈と会う機会が減る訳じゃないよ、と優しく微笑まれてしまったらもうなにも言えない。
「綾奈と東さん…いつの間にそんなに仲良くなってたの?」
「うん?1週間前ぐらいかな。バッタリ遭遇してお茶したんだけどそこから。仕事終わりとかにちょこちょこ飲みに行ったりしてたんだ~」
「…なるほど、それで東さんの目撃情報が飲み屋だったんだ」
「えっ、あれ!もしかして東さんの生活リズム崩させたの私の責任もあったりするのかな!?」
「フフ…違うってば。仕事再開するからって言ったでしょ」
「あ、そ、そうか…。それにしても荷造りも終わったんですね、昨日も飲んでたのに」
「いや…それがこれからなんだよね」
いやいや東さんもう夜もいい時間ー!、と冬組と私といづみの気持ちが揃ったところで全員で荷造りのお手伝いをすることに。なんとなく、ここから東さんがいなくなっちゃうのは寂しいなぁと思いながら私も立ち上がる。なんやかんやで春夏秋冬の全員が寮に入ってるから。帰ってきたら誰かしらいるだろうし寂しくもなさそうなのに…あ、いや、逆に学生も多いしみんな一気に出掛けるのか。そうなると急に静かになりそうだな、この寮。1週間前に私と街で遭遇した時もみんな出掛けたからって東さん言ってたもんね。
「いづみと東さん、遅いですね」
「そうだね…あの2人ならそんなに無理してたくさん持ってこようとはしないだろうし…」
「…探す?」
「そうですね。もしかしたら何か困りごとに遭遇してるのかもですし」
手分けして探しましょうか、と私たちは二手に分かれてダンボールを取りに行ったっきり帰ってこないいづみと東さんを探し始めた。
「こんだけ探して見つからないなんて…」
いづみと東さんがダンボールを倉庫に取りに行ったっきり戻ってこない。さすがにこんなに遅いだなんておかしい。向かったはずの倉庫にもいないし、ダンボールもそのままだった。もうかなりの時間を探し回ったのに。寮内にはいないのだろうか。
「一体どこ行ったんだあの人達は…」
「隠れんぼ…」
「さすがにしている場合ではないね。東さんの引越し業者は明日の朝に来るのだろう?」
「なにか事件に巻き込まれていなければいいんだけど…」
「…私もう一度倉庫の方、見に行ってきます。見落としてるのかもしれないし」
「…そうだね。でもみんなで行こう。これで高原さんも逸れたら事だしね」
月岡さんのその言葉に、普段なら子供じゃないんですよ、と笑えるところだが今はそうもいかない。大の大人2人が行方不明なのだから。
はい、と頷いてみんなであたりを見渡しながら倉庫に向かう。御影さんも眠そうな目はしてるけど、自分の足で立って2人を探してくれている。眠い目をこすりながら、私も頑張らなきゃ、と意気込んだところでふと目に付いた扉があった。思わず足を止めてしまったので後ろを歩いていた月岡さんが私にぶつかり、慌てて謝ってきた。いやいや悪いのは私なんだけどね、申し訳ない。
「…この扉は?」
「なんか気になっちゃって。ここって見ましたかね?」
「こんなのあったか?」
「ここはさっき探したと思ったんだけど」
「…なかった」
「えっ、じゃあまさか…!」
「開けてみましょう」
特に鍵もついていなかった扉はなんの引っ掛かりもなく開いた。そして散々探し求めていた2人の姿も視界に入り、全員がホッとした表情を浮かべた。心底不思議そうな表情をした東さんが気になったけど、どうやらいづみと話して思うところがあったらしい。向けられた笑みはとても晴れ晴れとしていた。
引越しも辞める、と決めた東さんには驚いたけど、それがいい、と私は笑った。断じて眠さが限界で荷造りが出来ないからとかではない。
もう朝練の時間だ、と疲れた顔をする彼等には悪いけど、私は今日はお休みなのだ。でないとあんな夜遅くから劇団に来ていない。ちょっとだけ談話室で仮眠取らせてもらってから帰ろうかな、とほとんど寝ぼけながら立っていると、綾奈、と優しい声で名前を呼ばれたので顔をあげる。あぁ、相当眠い顔をしているんだろう。目のあった彼は一瞬キョトンとしてから子供を見るようにふわりと微笑んだ。
「眠そうだね。ボクのわがままに付き合わせてごめんね」
「いいえ…。また起きたらお茶しましょう…。いつでもしましょう…」
「、!起き、たら…。…うん、そうだね。楽しみにしてるよ」
綾奈ズルイ…、という御影さんの声を聞きながら私は談話室へ向かいソファに横になり数秒で意識を手放した。
そんな私の姿を見た冬組といづみは苦笑をもらし、風邪をひかないようにと毛布をかけてくれた。子供のようだね、と微笑ましく見守られていたことを私が知るはずもなく。
「ねぇ、アンタもうちょっと警戒心持ちなよ」
「えぇ?なに、突然」
「カレー星人がいるとは言え、ここは男だらけなんだってこと。ほら」
「…?、ゲッ!?なにこれ!いつの間に!?」
衣装を作る手を止めて私に携帯の画面を向けた瑠璃川くんは呆れた表情。なんだなんだ、とその手に持つものを注視して思わず女らしさのかけらも無い声をあげてしまった。
その反応に彼は可愛らしく笑い、「残念ながら消さないから」と携帯を引っ込めてしまった。
「それ、東さん引越し騒動の時のよね!?人が寝てる間に撮るなんて…!誰だ!!!」
「あず姉だけど」
「怒れないっ!!!」
東さんに口で勝てる気がしない…、と愕然としてしまった。瑠璃川くんは「これに懲りたら自覚しなね」と一言。
…そーね。こんな間抜けな顔を晒したのは成人している身としては恥ずかしすぎる…、そう言った私に瑠璃川くんは駄目だこりゃとでも言うように大きな溜息を吐いた。
20190309
