第1章:己の役割
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「…こんなストーリー…知らない」
第1話
モスキート音のような耳障りな音を出しながら、サニー号の進む道に文字通り現れた島。海底から現れるのにも驚いたけれど、もっと驚いたのはその島の全貌だ。
「なんの素材使ってんだありゃ!?鉄か!?」
「…なんにしてもハイテクな事に変わりなさそうね」
「すんげ~~!島なのに硬そう~!!!」
「あれって…っ」
この世界の彼らが知ってるはずのないものにそっくりだった。大きな繭のような形をした建物。それはまさに…ドームだ。私の世界に存在するものと何ら変わらないクオリティの。
なんであの技術がこの世界に…!?、と驚く私をよそに好奇心旺盛組が「上陸しよう!」と騒ぐ。もちろんここはログポースの指す島ではないのでナミは却下するが、それを彼が聞き入れるはずもなく。あっという間に上陸する準備が整ってしまった。…なんだか嫌な予感がするのは私だけなんだろうか。どうかしたのか、と声をかけてくれたサンジは至っていつもと変わらない。私だけが感じているのか。びっくりしただけだから大丈夫、と笑って返すと「綾奈ちゃんはおれが守るから安心してねぇん!」なんてお言葉。彼は本当にそれをするから、嬉しいけど少し不安になる。私も私で気をつけておこう。
「なんか変な島だなァ。だれかいねェのかな。おーい!お邪魔しまーす!」
「お、おいルフィ!まずはインターホン鳴らしてからだな…!」
「おっこれか?ごめんくださーい!」
「…壊しちゃった」
「…ルフィには関係ねェな」
ノックしたつもりなのかは定かではないが、ゴン!と手を振り下ろした瞬間に壊れる扉。私とウソップは思わず目を合わせてしまった。が、そこでそういえば彼とはきちんと挨拶をしていなかったことに気付く。彼もそう思ったようで「今更だけどよろしくな」と笑顔を見せてくれた。仲間としてではなく人として、ということで私も「よろしく」と笑った。
しばらく何もない鉄の壁で覆われた道を進んでいると開けた場所に出た。完全に東◯ドーム。広い。なんだここは、と全員が見上げているとマイクを通した声がドーム内に広がった。
〔おっと、お客さんかい?〕
「あぁ!この島いったいなんなんだ!?おまえどこにいんだ?」
〔ククク…ここはマーユ島さ…。歓迎しよう。久しぶりの客人だ…〕
「沈んでたけど一応島なのね、ここ」
マーユ島だというから島なのだろうけど、海中から現れたしどういう原理なのかは分からないが、さっきの声の主が相当の発明家?ということには変わりなさそうだ。怪しまれない程度にどうやってこの技術を学んだのか知りたいところだ。
しばらくして奥から出てきた細身で長身の男は自分をムーバーと名乗った。口元に笑みを浮かべてはいるが、目は笑っていないなと思った。そんな中、気さくに「この島どうなってんだ!?」とムーバーに尋ねるルフィやウソップ、そしてフランキーは警戒よりも先に好奇心が勝っているようだ。その代わり隣にいるゾロやサンジがとても警戒しているのがひしひしと伝わるのでバランスのいい一味だなとどこか感心してしまった。
食事まで出してくれたムーバーは怪しさはあれど、今のところ不審な動きは見せていない。この島には一人だというけど、機械が張り巡らされているから生活には困らないのだとか。危険を避けるために普段は海中を進んでるとまで話した。さっきのモスキート音のようなものは海獣が嫌いな音らしく、それを常に鳴らしながら進むことで襲われることを回避していて、たまに海上に出て必要な分の酸素を取り込んでいると。初対面の私達にこれだけの情報を流すということは本当にこの人は無害なのかもしれない、そう思わせる話術が彼にはあった。
「ところで…君たちは麦わらの一味だろう?先日のエニエス・ロビーの件は笑わせてもらったよ…」
「おっ!おれ等のこと知ってんのかおっさん」
「もちろんさ…。懸賞金も上がっていたね…一味全員が賞金首だなんて大海賊じゃないか…」
「おっさん分かってんなー!照れるじゃねェか!」
「…して、そこの彼女は?新聞にも彼女のことは載っていなかったように思うが…」
「えっ、私?」
「綾奈もおれ達の仲間だぞ。ウォーターセブンで仲間にしたんだ!な!」
「ルフィとは一度腰を据えて話さなきゃダメだね…」
「フフフ…なるほどねぇ…」
「つまりは一般人って訳だ…」とニコリと笑顔を向けられた。その様子をみたナミが小声で「アンタ、アイツに気に入られたんじゃないの?」なんて軽口を叩いてくる。「ないです」とナミを小突いているとムーバーは私に護身用に何か武器を持っていったらどうかと提案してきた。武器なんて持ったことがない私は即座に「使いこなせないから」と断ったが、それもまたナミが「いいじゃない。護身用なら簡単なものでももらってくれば?タダでくれるっていってるんだし」という発言でもらうことが決定してしまった。満足気に微笑む彼の真意が読めない。彼は武器を作るのも好きだが使うことがないからたくさんあるのだと語った。
「んほー!ここで野球できんのかー!?」
「あぁ…あそこから球が出てくるから好きなだけバッティングするといい。他にも色々なゲームが出来るようになっているから好きに遊びなさい…。作ったはいいが私はやらないからね…」
「うおー!楽しそー!おれ!おれアレやりたいぞ!」
「おーっし!行くぞチョッパー!」
「…それじゃ武器庫にいこうか。綾奈さん、だったかな」
「え、あ、はい」
「おれも行っていいか。出来れば刀を譲ってもらいてェ」
「…構わないよ。それじゃ皆さんはごゆっくり…」
ドームの広さがあるここは遊ぶには十分すぎる広さがある。加えて女性陣には嬉しい、パラソルとデッキチェアなんかも置いてあってちょっとしたリゾートだ。いってらっしゃいと見送られたが、ぶっちゃけ一人は不安だったのでゾロが付いてきてくれたのはとてつもなく心強い。ゾロがきてくれたのは雪走がダメになっちゃったからその代わりを探す為ってちゃんと分かってるけどね。いるといないじゃ全然違うのだ。
「ねぇ、ゾロ。護身用に持つならやっぱりナイフなのかな?隠し持てないと意味ないよね?」
「なんだ、おまえナイフなら扱えんのか」
「んーん。どっちかっていうと刀の方が…剣道はしてたし。でも切るっていうのは抵抗あるしなぁ」
「へぇ、人は見かけによらねェもんだ」
「ゾロからしたらお遊びみたいなもんだけどね」
私が剣道を嗜んでいたことにゾロは意外そうにしていたが、現代の剣道と人を切るための剣を同じレベルで考えるのは違いすぎる。とはいえ、人を切るなんて私には出来ない。そうなると殴打武器のがいいのかな、とふわふわと考えたまま、気付くと武器庫に着いていた。うーん、これはゾロは迷う道のりだな。
大きな扉を開けて入った武器庫はかなりの数の武器を収容しているようで、一通り見るにもかなりの時間が必要そうだ。一応種類毎には分類されているようで「刀はあちらだ」というムーバーの言葉にゾロはどこかウキウキした様子でそちらを見に行った。…さすがにこの武器庫内なら何も起こらないか、と私も見て回ることに。
「武器と一口にいっても相当の数があるんですね…しかもこれ全部ムーバーさんが作ったんですよね」
「あぁ、そうさ…。使わないとはいえ作るのは楽しくてね…。なにか気になるものはあるかい…?」
「う、うーん…。武器なんて使ったことないからなぁ」
「ハハハ…とても平和なところで育ったんですねぇ君は…」
「まぁ…武器の所持を禁止されてたところだったんで…」
「ほう…?この海賊時代にかい…」
あっ、と少し自分の失言に気付いたが、それを顔に出すのをなんとか抑える。特につっこんでこないことから大して気には留めていないということだろうか。危ない。たしかにこの時代に武器を持ってない人間なんてきっと稀だろうし、それこそ所持を禁止された国なんて。もうちょっと慎重に喋ろう、と武器を見るフリをしてそそくさと歩き始めた。
「ならば戦闘なんてものには慣れていないだろう…。武器は隙を突くぐらいのものが良いかもしれないねぇ…。それか扱いが簡単なもの…」
「そうですねぇ…銃とかはちょっと腕がいるし…」
「あぁ…先程聞こえたが剣道を嗜んでいるのだっけ…。ならば木刀なんてどうだい?重さはあるが扱いは出来るだろう」
「あぁ、確かに…」
木刀と聞いて思わず思い出してしまった死んだ魚の目の主人公を記憶の奥にしまい込み、木刀が置いてある区間に目をやる。一口に木刀といってもムーバーさんの遊び心もあってか、色んなサイズや太さのものが揃っていた。短刀…は、ちょっと心許ないか。かなり接近した時にしか扱えないし。重さを考えると丁度いいんだけどなぁ。
「こんなものはどうだい。かなり貴重な木を使って作った代物だ」
「おぉ…すごい真っ白…!」
うーん、どうしよう、と考え込んでいるとムーバーさんがどこからか真っ白な木刀を手に私に近付いてきた。その美しさに思わず目を奪われた。
この木刀の名は"白虹(はっこう)"というらしい。
木刀が良いなら是非これを、と勧められて手渡された。長さも短刀よりはあるけど打刀よりは短い…所謂脇差ぐらいだろうか。重さもそれほどには感じない。申し分ないけど、ムーバーさんがこんなに推してくるのはなんとなく怪しい。名前もあるということはそれなりに思入れもありそうだし。
思わずじっと見つめると彼はニコリと意味深な笑みを浮かべた。
なんなんだろう。この人に対する焦燥感は。
「曰く付きでもなんでもないさ。気に入ったのなら是非使っておくれ…」
「…はい。とても綺麗だし扱いやすそうだし、ムーバーさんが良いならこれを頂きたいです」
「勿論。それは珍しい木だったからね…大切に作った。それだけさ」
「…えっと、ありがとうございます。貴重なものなのに、私なにも返せないんですけど」
「元よりそのつもりだよ。気にしなくていい」
そろそろ戻ろうか、と私に背を向け、刀を見ているであろうゾロの元に進んでいくムーバーさん。私はもらった白虹を腕に抱えて、少し距離を取りながらその後を追った。
20191111
