序章
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「新世界、かぁ」
第2話
なんやかんやで一晩泊めてもらうことになった私はあのままその場に留まっていた。他愛ない話をしながら過ごしていると、外から「え~!本当にもう帰んのか!?」という何百回と聞いた主人公の声。そっか、外でコビーと話しているんだったなと思ってドキドキしていると、みんなはゾロゾロと外に出て行くものだから私もつられて外に出てチョッパーを膝に抱いて座る。目の前にいる未来の海賊王の背中に心臓が早鐘のようだ。心拍数が上がっているのが直にわかるチョッパーにどうかしたのか、と問われたが曖昧に返して二人のやり取りに耳を傾ける。
「レッドラインの向こう側に広がる、その最後の海を人は…もう一つの名前でこう呼ぶんです」
「?」
「"新世界"」
コビーのその言葉に早かった心臓が更に速くなった気がする。ワンピース読者ならきっと共感してもらえると思う。既にたくさんの冒険をしてきた彼等を見てきたのに、更にその先。新世界が広がっていると言うのだ。ワクワクとドキドキが留まるところを知らない。チョッパーに「ドキドキするね」と言えば「おれもワクワクするぞ!」と可愛い返事。それに笑みをこぼして抱きしめる。彼にとってもこれからは辛いこともたくさん起こる。それでもこれからも変わらず彼のままであってほしいと思う。
熱くこれからのことを語る彼等は本当にまっすぐでかっこいい。そりゃ、夢だとしてもいざ誰かに当たり前のように認められたらそれ程嬉しく、自信のつくものはないだろう。海軍大将になってみせると震えながら意気込むコビーの涙はそれを物語っていた。
「…かっこいいなぁ」
「えっ!?綾奈ちゃん、ま、まさかコイツみたいなのがタイプ…!?」
「えっ!?僕!?えっ!?」
「ん?純粋に夢があるのってかっこいいなって」
「ん?誰だおまえ」
「あ、こんにちは。綾奈と言います」
「おれはルフィ!よろしく!」
私の発言に食いついたサンジは勘違いしているようだから普通に訂正。コビーも照れて顔を真っ赤にさせちゃってるけどごめんね。かっこいいとは思うけど、また違う感情ってやつです。そこでようやく私の存在に気付いたルフィと自己紹介。にかっと太陽のように笑う彼はとても力に満ち溢れていてなんとも言えない気持ちにさせられた。
ルフィは、ゾロが私を今晩泊めるという頼みにも二つ返事で頷いてくれた。その横ではなにか友情が生まれたのか、サンジに肩をポンっと叩かれるコビーの姿があった。なにか通じるものがあったのだろうか。ヘルメッポは「コビーざまぁ!」とゲラゲラと笑っていたのであいつに恋人は出来んだろうなぁと思った。
「なー綾奈!お前なんか特技ねェのか特技!」
「唐突だね…。特技かぁ、なんだろう」
「歌は!?おれ音楽家を仲間に欲しいんだ!」
「人に披露出来るようなものじゃないなぁ。きっとこの先の海に素敵な音楽家に出会えるよ」
「ん~~そっかァ!ま!なんでもいいや!役割とか!」
「…なんか話が読めないな」
コビー達も帰って行って、これからガレーラのプールで宴をするというから私もそれに誘ってもらった。私は今回の戦いの全貌を知っているけど、関わってはいないから余所者なのにそんなのは関係ないと彼等は笑った。そしてその道中、隣を楽しそうに歩くルフィは私に特技はないのかと尋ねてきた訳で。現代人にとっての特技なんてこの世界ではなんの役にも立たない。音楽家は今後ブルックが加入してくれるし、私はお呼びではない。…というよりこの話の流れは私の勘違いでなければそういうことなんだけどどうなんだろう。
「…おいルフィ。お前まさか綾奈を仲間にしようと思ってんじゃねェだろうな」
「おう!そうだ!」
「んん!?」
「ナイスな考えだクソゴム!綾奈ちゃんと言う花が増えるのはおれァ大歓迎だ!!」
「綾奈仲間になるのか!?」
「あら…」
予想的中。まさかのまさかだ。大好きな一味に誘われるのはもちろんファンとしての夢だし嬉しい。けれどそれは現実じゃないから嬉しいわけで、これは現実なのだから命の危機がある。でも私には戦う術も守る術もない。「嬉しいけど、私には荷が重いよ」と笑えば「んなもん関係ねェよ!」と言ってくれるルフィは本当に心からそう思っているんだろう。心からそう思っているからこそ断り方も難しい。
「綾奈は冒険したくねェのか!?たんのしィ~ぞ~!」
「フフッ。うん、楽しいだろうね。でもそれって海に出る覚悟がないと。私にはないからさ」
「覚悟ォ?なんだそれ」
「全部を捨てて、守る覚悟、かな。それが私にはない。だからごめんね」
「???わかんねェよ綾奈!!」
楽しいんだぞ冒険は!、とこれまでの冒険を語るルフィの話に耳を傾けながら、確かにこれからどうしようかと考える。どこかの島に永住するも良し、生きる術を身につけて海に出るも良し。…元の世界に帰る方法を探すなら海に出るのが一番なんだろうけど、なんだかなぁ。
「お前、これからもルフィに勧誘されるぞ」とゾロに忠告を受け、苦笑したところでガレーラのプールに着いた。中ではナミやチムニー、ココロさんが楽しそうに泳いでいるのが見える。こちらに気付いたナミ達が休憩を兼ねてプールサイドに上がってきた。そのナイスすぎるスタイルに、サンジじゃないけど私まで思わず見惚れてしまった。そのうえ容姿も整ってるなんて素晴らしすぎる。思わずじっと見つめていると視線を感じたナミがこちらを見たことで視線がぶつかる。それに気付いたロビンが代わりに私を紹介してくれて、よろしくと彼女も笑った。
「なるほど。アンタがゾロを連れてきてくれたのね、納得」
「たまたま会っただけだけどね。お役に立てたなら良かった」
「アイツほんっっと方向音痴で困ってんのよ。綾奈みたいに知らない土地でも大体の土地勘と回る頭がある子が側にいると安心だわ」
「フフッ。常習犯なんだ、ゾロ」
「まぁね。…あ、綾奈も食べていくんでしょ?せっかくのプールだし着替えたら?ジャージじゃ暑いでしょ」
よかったら貸すわよ、というナミの言葉は嬉しいが私はあまり水着とかの露出が激しいものは得意ではない。しかもこんなにスタイルのいい彼女の隣に立つなんて。とんでもない。こんな理由じゃきっと彼女は納得してくれなさそうなので定番だけど踏み込みにくい「水、苦手なんだ」を発動させれば不服そうな表情を浮かべた彼女だったが「なら足ぐらいはつけたら?気持ちいいわよ」とショートパンツを貸すと言ってくれたのでその申し出は受け入れることにした。確かに気持ち良さそうだ。
そして上のジャージは着たまま、ナミに借りたショートパンツを履いてプールサイドに座って、チャポとプールに足をいれる。うわ、気持ちいい。緩む頬をそのままに、見上げてナミに「ありがとう」と笑えば彼女もニッコリ笑ってくれた。そしてチムニー達とプールで遊び始めた彼女達を眺めながら足だけをパチャパチャして水の感覚を楽しんでいると「綾奈は泳がねェのか?」と可愛い声。振り返るとそこにはチョッパーと、そしてルフィがいて楽しそうにプールで遊ぶ彼女達を羨ましそうに眺めているようだった。そうだね、カナヅチだもんね君たち。
「うん、あまり水って得意じゃないから。足だけで十分。二人は…入れないのかな」
「おれはゴム人間でチョッパーも人間トナカイだからな~~くっそ~ナミのやつ楽しそうだな~~!!」
「悪魔の実の能力ってやつだね。…少しだけでもダメなの?…ほいっ」
「わっ!ウェヘヘ!冷たいぞォ綾奈ー!」
「ハハッ!チョッパーこそ!」
「あ!おまえらズリィぞ!おれも混ぜろ!」
「ブフッ!!」
「わっ!?ちょ、ちょっとルフィ!量がおかしい!!」
「なっはっはっは!わりィ!!」
水が苦手なだけで嫌いなわけではない二人は楽しそうな彼女たちが羨ましいのだろう。全体じゃなければ大丈夫かな、と手で少しチョッパーに水をかけてやれば仕返しとばかりに反撃をくらう。それだけで満足だったのに、おれも!、と名乗りをあげたルフィのかけてくる水の量が半端じゃなかった。びしょ濡れである。さらにそれに私も仕返しとして思いっきり水をかけてやればギャーギャーと始まる水の掛け合い。びちょびちょになってしまっているけど、彼等と苦手であるはずの水でこんなに楽しく遊べるということが何故か無性に嬉しかった。
「綾奈ちゅわ~ん!みずみず肉が焼けたよぉ~!…ってびしょ濡れじゃねェか!大丈夫かい!?」
「あはは!やりすぎちゃった。楽しかったねルフィ、チョッパー!」
「おう!めちゃくちゃ楽しかった!!おれ水ダメなのに!!」
「おれも!おれも楽しかったぞ!!」
「てめェら…!それで綾奈ちゃんが風邪でもひいたらどうするつもりだァ…!?」
「フフッ!大丈夫だよ、サンジ。ありがとう。お肉もらってもいい?」
「もっちろんさぁ~~~!」
ありがとう、と焼き立てのみずみず肉を受け取る。うわぁ、これ漫画でも食べてみたかったんだよね、とドキドキしながら一口。瞬間、溶けるように広がる肉の旨味がとてつもなく美味しい。「うんめェ~~!」と隣で頬が落ちないように支えながら食べる二人に「美味しいね」と笑って私もお肉を食べ進める。これはクセになっちゃうなぁ。
うまうま、とお肉を楽しんでいるとフワッと後ろから頭になにかをかけられた。なんだ?、とそれを手に取ってみるとそれはタオルだった。一体誰が?と見上げてみるとそこには微笑んだ女神…じゃなくてロビンがいた。びっくりした、美しすぎて。
「ありがとう、ロビン」
「いいえ。暑いとはいってもずぶ濡れは良くないわ。上着は脱いで乾かしておいた方がいいわよ」
「あ、そうだね。濡れて重いし」
「フフッ…でもとっても楽しんでいたわね」
「うんっすごく!ロビンもまたあとでやろう?」
「そうね、楽しそう」
能力者であるロビンも出来るだろう、と誘ってみれば良いお返事。あぁ楽しみだな。するとロビンは優しく私の頭をタオルで拭き始めてくれた。慌てて大丈夫だと告げても優しい声色でやんわりと断られてしまったらもうそれは身を委ねるしかない。なんて落ち着く人なんだろう。本当にロビンがルフィ達に会えてよかった。アラバスタで出逢わなければ今頃彼女はここではない別のところで闇と戦っていたはずだろうから。思わず彼女の手を握ってしまった私に「どうかしたの?」と聞いてくれる彼女に、なんでもない、と笑った。
「そういえば綾奈は私たちのことは知っているのかしら?」
「えっ?…あ、あぁ、海賊で賞金首だっていうことは知ってるよ」
「そう。怖くはないの?」
「…そうだね。麦わらの一味が一般人に手を出す海賊じゃないことを知ってたから。怖くないよ」
「あら。もしかして綾奈は情報通なのかしら。政府の情報なんかは操作されていることが多いのに」
「そういうのって、結局その場所を見てみれば分かるもんだよ。アラバスタなんかは特にね」
「…あの国のことも知っているのね」
「うん。だからみんなのことは尊敬こそすれど、怖くはないよ」
「…綾奈はなんだか不思議ね」
これくらいの情報なら大丈夫だろう、とアラバスタのことも例に出してみればロビンは少し眉間に皺を寄せたけど、怖くはないという私の言葉は伝わったようでふんわりと笑った。不思議とはどういうことだろうか。尋ねても笑ってはぐらかされてしまって聞き出せなかったけど、悪い意味ではないらしいのでいいか。
「あら、女子会?私も混ぜて」とナミが来たことで私達の会話は更に盛り上がり、周りもたくさんの人が集まり出してすごい数での宴が始まった。ナミとロビンがいるからとても頻繁にこちらに料理を持って来てくれるサンジのおかげでお腹もいっぱいだ。初めて目にした巨人の大きさにもたまげた。本当にここはワンピースの世界なんだなと実感したし、会話している彼女達がきちんと生きているということも嫌というほどに実感した。向こうで高らかに歌うソゲキングの姿も見れた。
トリップしてきて不安もあったけれど、彼等の温かさに触れてそんな悩みも吹き飛んでしまった。
20180905
