GW遠征合宿篇
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「うおー!綾奈さんカッケー!」
第4話
眠い目を擦りながらなんとか午後の授業も終わり、放課後。自分も練習に入ることも考慮していつもより急ぎ目にドリンクなどの用意をする。ネットも立てたかったけどさすがに支柱を一人で持つのは辛かったので諦めた。私が現役の時は持てたんだけどな。男子のって女子のより重いのかな。
残念ながら昼に干したタオルはまだ乾いていなかったから部活後に畳むことにしよう。その頃にはきっと乾いてるだろう。頼むぞ太陽。
思っていたよりも早くに準備が終わってしまったので、今日の練習メニューを聞いているわけではないけど私自身のアップも兼ねてストレッチをしてから壁打ちをしてみる。バレーボールに触れるのも今じゃ体育の授業くらいだから久しぶりだ。手のひらの衝撃が懐かしい。どれくらいやっていたのか分からないぐらい、久しぶりのバレーに熱中してしまっていたらしい。我に帰ったのは私を興奮した様子で賞賛する彼の声だった。名前は…なんだったかな。
「めっちゃバレー上手いッスね!しかもその練習着って女バレの人が着てるやつだし!綾奈さんバレーやってたんスか!?」
「えーっと、ありがとう。中学の時にやってたんだ。…ごめん、1年生だったよね。まだみんなの名前とか把握してなくて。名前教えてもらっていいかな」
「あ!灰羽リエーフです!1年ッス!」
「灰羽くんね。高原綾奈です。遠征合宿だけだけど、よろしくね」
びっくりするほど高身長な彼は名前こそ知らなかったものの、全体で挨拶した時にその見た目はすごく目立っていたから1年生であることは覚えていた。つり目のせいか、見た目は少し威圧感があるけど話してみれば素直でとても愛嬌がある。
「それにしてもなんで合宿だけなんスか!」と声をあげる灰羽くんに首を傾げることで質問すると、どうやら彼はまだ入部して間もないこともあって、今回の遠征合宿には不参加なのだとか。あ、なるほど。スタメン以外は通常通りGWもここで練習なのか。 つまり私と会うのは今日だけだ。バレー部に手伝いにきて数日なのにこうして惜しんでくれるのは普通に嬉しい。
「オレだって遠征合宿行きたいッスよー!」
「あはは…まぁ、そればっかりは私じゃどうにもならないなぁ。練習あるのみだよ」
「あ!じゃあ綾奈さんやりましょ!今!オレ、スパイク打ちたいッス!」
「まだネット張ってる最中だし邪魔になっちゃうよ。対人パスだったらいいよ」
「んんん~!!じゃあそれで!!」
「やりましょやりましょ!」と意気揚々とボールを強請る灰羽くんに苦笑をこぼしてポーンと山形に投げてやる。まあ、この身長だしスパイカーなんだろう彼は。高身長だし伸び代は充分だな、と彼の未来の活躍に想いを馳せる。ネット張りは申し訳ないけど他の人に頼ろう。すまん。
「うース。って、おいリエーフ!まさかのマネちゃんと自主練かよ!!」
「ちわース!!綾奈さんめっちゃ上手いッス!教え方も優しいし!!」
「こんにちは、黒尾さん。すみません、勝手に」
「いやいいんだけど!むしろすまねぇな、子守させちまって。ヘッタクソだろこいつ」
「黒尾さんヒドイっスよ!!」
「悔しかったらそのへなちょこレシーブを早くどうにかしろ!」と戯れる主将の黒尾さんと灰羽くん。なるほど、やっぱり先輩後輩という垣根は低そうだ。
まあ、そういうわけで灰羽くんの対人パスは中断。でも部員も集まってきていたし頃合いだろう。ネットをきちんと張ってくれた1年生にお礼を言ってマネージャー業に戻った。黒尾さん曰く、私が手伝いをするのはアップ後すぐの練習からだといっていたので少しだけ時間に余裕はある。明日の大体の備品をまとめておこうかな。
「おう、高原。お前さんバレー経験者らしいな?どのポジションやってたんだ?」
「こんにちは、猫又監督。リベロからセッターに転向しました。でもしてたのも中学までなのでブランクありますよ」
「ほう!少し入ってみるか。どんなもんか純粋に見てみたい」
「ええ…?緊張するなぁ…」
「ワハハ!まぁ気楽にやるといい!」
なんとも緊張する。というかブランクあるし男子のネットなんて異常に高いし感覚全然違うから分からんよ…、と内心愚痴をこぼしながら部員に混じって練習に参加。レシーブもトスも、割と現役時代と同じぐらい動けた気がする。ただ単に体力が落ちたって感じで少し安心した。私のこれまでの経験、ちゃんと染み付いてたんだな。
さすがにスパイクは打てないのでトスを上げる側に。私が増えるだけでスパイクが打てる頻度があがるからこれは役に立てたかな。
ちょこちょこと部員に声をかけながらトスも調整していく。スパイカーが打ちやすい球以上に勝るものはないのだ。
「いや~期待以上。中々やるじゃねぇか。中学はどこでやってたんだ」
「全然普通の中学ですよ。強豪でもなんでもないです」
「そうか。推薦はきたんじゃねぇのか?みた感じでは充分強豪でやれるだけの実力があるように思うが」
「…えーっと、はい。何件かありました。でも全部蹴りました。高校でバレーするつもりなかったので」
「ほー?もったいねぇな」
「お前さんが男子だったら勧誘してるとこだ」、と豪快に笑う猫又監督に、あまり深く追求されずに済んでホッとした。言いづらそうにしたことを悟ってくれたのだろうか。それだととてもありがたい。
その後もちょこちょこサポートとして練習に加わり、且つ洗濯やドリンク作りにも追われてその日の練習はあっという間に終了。今日はぐっすり眠れそうだ。
これからは部員がそれぞれ自主練に励むらしいので、自主練分のドリンクを置いてから私もマネージャーの仕事に取り掛かる。大量のタオルを畳んでる間は手を動かしながら船をこいでしまった。なんという運動不足。それから海さんにもチェックしてもらった備品を集めて詰めていけば今日の私の仕事は終わりだ。疲れた。甘いものがほしい。帰りにコンビニ寄って帰ろうと心に決めて、そろそろ部員も撤収した方がいい時間だったので声をかけて私は先に失礼することにした。私も年頃の娘なもんで汗だくになった体で男子と歩くのは抵抗があるのだ。分かってくれ。
明日の集合時間は9時。いつもの起床時間よりかはゆっくりだけど今日これだけ体力を使って疲れたので、熟睡しすぎないように気をつけないと。
思いの外、重くなってしまった備品を担ぎ直して家路につくのだった。
20180810