代表決定戦篇
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「あれ?宮くん?」
第8話
京都に勉強をしにきた翌日。日曜日である今日は夕方の新幹線で東京に帰るつもりだがそれまでは時間がある。観光しようかなって思ってるよと言った私に「午前練だけだから付き合うよ」と言ってくれた倫太郎。お父さんも仕事だと聞いていたから嬉しい申し出に二つ返事で頷いた。
そして当日の今日、倫太郎との待ち合わせ場所に行けばそこにいたのは意外にも宮くんの姿。倫太郎の姿はまだない。私服のセンスいいなぁなんて思いながら「偶然だね」と声をかければドキーッとした様子で「お、おん」なんて返事。ちょっと調子狂うな。
「宮くんも買い物?私もここで倫太郎と待ち合わせしてるんだ」
「か、観光やろ?観光言うたら俺や!っちゅう訳で来たったで!」
「え?宮くん付き合ってくれるの?」
「付き…っ!?…ゴホン。まぁな、角名やって高校から関西きてまだ2年経っとらんのやし、こっちの人間しか知らんような穴場は分からんやろ」
「おぉ、確かに!あはは、なんだ宮くんいい奴!じゃあよろしくね」
しゃあなしな、なんて悪い笑みを浮かべた宮くんの腕をバシッと叩いて携帯で時間を確認する。待ち合わせの15分前だった。ちょっと早めについてたんだな。倫太郎ももうちょっとで来るか、と思ったところで宮くんが15分以上も前から待ち合わせ場所にいたことに気付いてちょっと驚いた。遅刻常習犯そうな顔してるのに。なんと失礼な偏見。
「あ。宮くんのそれ、今流行ってるやつだよね。レディースもあるから気になってたんだよね〜!履き心地どう?」
「おっ!中々見る目あるやん!俺もこのゴツさに一目惚れしてん!履き心地もええよ、めっちゃ軽いし」
「まじか〜!色もそれが一番可愛いよね〜やっぱ私も買おうかな〜。お揃いになっちゃうけど(笑)」
「…っ!?べ、別に自分も前から気になってたんならしゃあないやん!か、買えばええんちゃうの?」
「そう?じゃああっち戻ったら買っちゃお〜!」
オシャレさんな宮くんの足元に目が行き、それが自身が少し前から買うかどうか悩んでいたスニーカーであれば反応してしまうのもしょうがないと言うわけで。出会いが出会いだったからお揃いになってしまうのなんて嫌がるかな〜と思いきや意外や意外。お許しが出たので買う決意が固まった。いやお許しなくても買ったかもだけど。履いてる人がいるとやっぱ欲しくなっちゃうよね〜。
それからも服の話やバレーの話をしていればあっという間に時間は経っていたようで倫太郎が「なんだ仲良くなってんじゃん」と少し驚きながらやってきた。…あれ。隣にいるのって…、
「な!サム!?なんでサムまでおんねん!!」
「ツムが部活終わったら速攻ホテル戻るもんやから何事かおもてな。角名から聞いた。俺も美味いもん食いたいもん」
「面白いかなって思って」
「ウッッッザ!!!ほんまウザいなお前等!!!」
「そ、そんな怒る事ないじゃん宮くん」
賑やかは楽しいでしょ、と腕をポンポンと叩いて宥める。なんだかまだ言いたげだったけどグッと言葉を飲み込んでくれた。ええ子やねぇ〜。
そして話すのは初めてだ、と宮く…、えーっと治くんに向き直り改めて自己紹介。よろしく、と淡々と言う彼は宮くんよりも少し落ち着いた印象を受ける。
「綾奈って呼んでええ?俺も治でええよ。ツムと被るやろ」
「もちろん。あ、それは助かります。気にしてくれてありがとう治くん」
「おん。ほなはよ行こや。綾奈、なんか食えんもんとかあるか?」
「ううん、大体なんでも好きだよ。お漬物は絶対お土産に買って帰る予定!」
「お。ほんならオススメの店連れてったるわ。前に来た時に見つけた漬物屋の千枚漬けがクッソ美味いねん。それだけで白飯3杯は食える」
「えー!絶対行きたい!!ありがとうよろしく治くん!」
「勝手に二人で盛り上がんなや!!」
「うっわこれ絶対面白いことになる」
治くんとも挨拶したところで早速出発。背の高い3人に並んで歩くのはちょっと注目を浴びて恥ずかしかった。声もデカいし。
みんなもお昼はまだというからまずは腹ごしらえ。「ここの牛カツクッソ美味いで」という治くんの言葉通りめちゃくちゃ美味しかった。そして盛り盛り食べる治くんの食べっぷりと言ったら。しかもすごく美味しそうに食べるのだ。作った人がこの顔を見たら絶対嬉しいだろうなと思う。「美味しそうに食べるね」と笑った私に「飯は呼吸やからな」と謎な名言を残してくれました。おもしろ。私は食べ歩きもしたかったからご飯は少なめでお願いした。
「わ!豆腐ソフトクリームめっちゃ美味しい〜!」
「綾奈、甘いもの好きだよね。さっきもわらび餅食べてたし」
「んふ。脳を働かせるには糖分が必要だからね!倫太郎も食べる?そんなに甘くないよ」
「………。うん、ちょうだい」
お昼ご飯を終えて、有名な神社に向かう道すがら私は甘いものに舌鼓を打つ。さっきのわらび餅も本当においしかった。やっぱり京都にきたら和菓子は食べないとね。そして次に目についた豆腐ソフトクリームを購入したがこれもあたりで。カシャッと倫太郎に携帯で写真を撮られたことに気付きながらも、まぁいいかと一口食べるかと問いかける。後ろから「ハァ!?」という声が聞こえたけど、倫太郎が頷いたのでスッと口元に持っていってやった。
「あ、確かにそんなに甘くないな。美味しい」と口元に笑みを浮かべた倫太郎にそうだろうそうだろうと笑い返してソフトクリームを口に運ぶ。優しい口当たりがとても美味しい。と、一部始終を見ていた治くんが口を開く。「なんや付き合うとるみたいやな自分ら」と。
「え?そういう風に見えるの?」
「そりゃ年頃の男女がアーンしとったらそう見えるやん」
「餌付けみたいなもんじゃない?」
「ちょっと。そんなつもりだったの?」
「冗談ですって倫太郎さ〜ん」
私からしたらしばらく会ってなかったとはいえ、家族みたいなものだし全然気にしないんだけど。多分それは倫太郎も同じだ。「あ。間接チューじゃん。ごめんね倫太郎〜」「何を今更」なんてやり取りもお互いが気にしてないから出る言葉であるし。それに本当に今更だ。家族で間接チューなんて腐るほどやってるものだ。
「宮くんも治くんも間接チューなんていっぱいやってるでしょ?そういうことだよ」
「いや、サムは飯に関してはまじでセコいから絶対分けへんで」
「お前が一口の概念ぶっ壊して食うからやろツム」
「飯は呼吸だもんね(笑)じゃあほら、私が分けてあげるよ宮くん。甘いもの大丈夫な人?」
「は…、」
「…あ。違うごめん。家族っていう前提が違った(笑)でも全然食べていいよ」
嫌じゃなかったら、と宮くんにアイスをズイッと差し出してみれば戸惑っているのか顔を赤くして固まってしまった。治くんと倫太郎がニヤニヤしてる。どうやら思春期男子である宮くんには苦手なことだったらしい。やっちまった。
ごめん、と苦笑して手を引っ込めようとすればその手をガシッと掴まれてぐわっとアイスにかぶりつかれた。……うん。確かにこの一口の大きさを毎回やられたら治くんも分け与えたくなくなるわ、と納得して笑ってしまった。「美味し?」と聞いた私に、もぐもぐと口を動かしながら「…それなりやな」と答えた宮くんはとても可愛くみえた。そのあと治くんにもあげたので「これで私達家族じゃんね」と笑えば「アホか」「なんでやねん」「侑と治が家族とか絶対嫌なんだけど」と全否定されてしまった。なんだよ。そう言いながら君等実は仲良いだろ。
その後も私に付き添ってもらって小物屋に入ったり、数歩進めば食べたいものが見つかる面々に足を止めつつも有名な神社に辿り着き、参拝して境内を見回った。神社とかそういう古風な場所も好きな自分にとってはそれだけで楽しかった。3人も遠征でよく京都には来るらしいが、こういうところには来ないらしく物珍しそうに見回っていた。
「あれ。あっちの道なにかあるのかな。私等ぐらいの年齢の人が結構進んでるけど」
「あー…あれだよ。縁結びの神社。綾奈も縁結びたい人いるの?」
「え?」
「や!やっぱりおるん!?どんなやつや!!」
「そりゃ東京言うたらチャラチャラした奴ばっかやろツム」
「偏見すご…。別にいないし」
「おらんの!?自分モテるやろ!?嘘ついてもええことないで!!」
「なんの自信?」
この先に縁結びの神社があるという話からなんだか面倒臭い話題になってしまった。ガッと肩を掴んで詰め寄ってくる宮くんも、東京の男性に対してあまりにも偏った意見を持つ治くん。そしてこの状況を目を細めてニンマリと笑みを浮かべて楽しむ倫太郎。倫太郎に関しては面白がってて黙ってるから有罪だな。止めろよ。
「ないない。むしろ私ちょっと男女関係なく距離置かれてる感あるよ。なんで?」
「いや知らないけど」
「でしょ〜?まぁそういう訳でモテとは遠い存在なのよ。お分かり?悲しいこと言わせんな」
「残念やなぁ綾奈。まぁツムにとったら都合ええやろけど」
「え?」
「なっ…!サ、サム!!お前余計なこと言うなや!!!別に都合とか良ぉないし!!!」
「…あ。分かった。さては宮くんはモテるな?そのモテの称号は独り占めしたかったんでしょ。心配しなくても大丈夫だって〜!」
「………」
「綾奈ってめっちゃアホやん」
「なんで!!!!」
「モテの称号(笑)なにそれ(笑)」
腹立つ!!!、と煽り笑顔の倫太郎の腕をバシッと叩いた。私もちょっとアレだなとは思ったけども!!!!治くんはぶくくと笑っているし宮くんに至ってはクソデカ溜め息をいただきました。なんか悔しい〜!
じゃあ縁結びの神社はスルーでいっか、と華のJKにあるまじき所業をし、私達はそのまま食べ歩きを続行することに。色気より食い気なのである。
「なー角名…。あいつってほんまにモテへんの?そんな訳なくないか」
「そんな訳ないんだよほんとに。小さい頃からちゃんとモテてるんだけど、綾奈自身がまさか好かれると思ってないっていうか…まぁ簡単に言えば鈍いんだよね」
「…なんかめっさ腹立つわ」
「ブッ。ククッ…やっぱり侑、綾奈のこと好きなの?」
「好!……きっちゅーか…まぁ気になる言うか…」
「ふーん。ま、敵も多い上に遠距離だけど頑張りなよ。連絡先ぐらいは聞いとけよ」
「…角名が教えてくれたらええやん」
「個人情報だから」
「正論やけどウッッッザ!!!!」
次これ食べよー!、とはしゃぐ私と治くんの後ろで何やらこそこそ話す2人が何を話していたかは分からないけど、友達が少ない私にとって今の時間はとても楽しくて嬉しいものだった。
20211116
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