GW遠征合宿篇
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「えっと…孤爪くん大丈夫?」
第2話
福永くんにマネージャーに勧誘された翌日。さすがに明後日にお手伝いとしての力を発揮しないと意味がないので、今日から部活に参加することに。経験からして大体はマネージャーというものが何をするかは分かるから、あとはこの部ならではのやり方を覚えるだけだ。ドリンクの濃さとかね。そのまま作っちゃうと運動直後には甘すぎるし。でもさすがに味見はできないから目分量で作って、部員の様子を伺うしかない。
6本ずつボトルの入ったカゴを片手に一つずつ持ち「よいしょ」と立ち上がる。ババくさいのはこの際仕方ない。掛け声大事。
体育館に戻ってきて時計を見上げれば、聞いていた休憩時間の2分前。危なかった、とホッと胸を撫で下ろして重さのせいで中々進まない足に力をいれてコートに向かう。運動不足が祟ってる。
私がコート脇のベンチにボトルを乗せたところで「休憩ー!」と黒尾さんの声。よかった、遅れずに済んだ。
タオルは各自持参してるみたいなので、とりあえずはドリンクだけで良いらしい。とはいえタオル1枚じゃ足りないだろうし、部活用で手配した方がいいんじゃないかなぁとは思う。私は臨時だから勝手には出来ないし、猫又監督に提案だけしておこう。
「おう、マネちゃん。ドリンクありがとな」
「お疲れ様です、黒尾さん。いえ、ドリンクの濃さとか分かんなかったので不味かったらすみません」
「んなもん気にするヤロー共じゃねーよ」
「つか普通に丁度いいわ」とお褒めの言葉を頂いたことによりホッと一息。他のみんなも何も言わずにガブガブ飲んでることから特に問題は無さそうだ。
「じゃああの配分でいいってことか。メモしとこう」と考えて、ふと壁際に視線をやるとタオルを頭にかけて項垂れる人の姿。タオルからちらりと覗く色は金色だ。それが誰であるか認識して、彼の手にはドリンクがないことに気付く。肩で息するぐらい消耗してるのに水分を取らないのはまずい。さすがに見過ごせない、とまだ誰も手をつけていないドリンク片手に彼の元に足を運ぶ。近くまでくると彼が目を閉じていることが分かってちょっと本気で心配になった。
「えっと…孤爪くん、大丈夫?」
「、」
とはいえ私たちは話したことがない。当たり障りのない声かけをすれば、ピクリと反応した彼はゆっくりと瞼をあげた。そして目があったそこには「一体何のようだ」という疑問がありありと浮かんでいて「あ、彼も人見知りなんだな」とすぐに悟った。
「消耗してるだけならいいんだけど、体調悪いとかではない?とりあえずドリンクどうぞ」
「…疲れただけ。ありがと」
「ほんと?じゃあ水分だけはちゃんと取るようにね」
「うん…」
「高原さんもちゃんと休憩しなよ」と私の心配までしてくれた孤爪くんの第一印象はとても優しい子という事になった。なんか凄くネコっぽい。
上げた顔は彼が言うように疲労はあっても体調が悪そうには見えなかったから、どうやら大丈夫そうだ。
私も「ありがとう」と返して立ち上がる。次はゲーム形式での練習らしいので審判台や得点板が必要なのだ。それを出して準備をしたら休憩が終わる頃だろうからボトルを回収して…、とまぁやる事には事欠かなそうだ。
「お。高原さんお疲れ!皆でコンビニ寄って帰るんだけど一緒に行く?」
「お疲れ様です、夜久さん。…あーじゃあお伴していいですか?私もお腹すきました」
「おう!悪いな、マネージャー1人で大変だろ?すげー助かってる」
「いや、まぁ大変なの分かって引き受けてるんで大丈夫ですよ」
「よし!今日は好きなもん奢ってやる!」とニカリと笑った夜久さんに、「やったー」と笑って急いで片付けに入る。部員は先に上がって今頃着替えてるはずだ。汗だくだろうし、まだもうしばらくは時間に余裕がある。私は下のジャージを履き替えるだけでいいからすぐ終わるし。とりあえずモップ掛けかな。
支柱とかボールは既に部員さんがやってくれてるから私がやるのは窓の施錠やモップがけ。あとはボトルを洗ったり、既に洗濯機に回してる使ったビブスを干す事ぐらいか。
そういえば猫又監督にタオルのことを相談したらすぐに手配すると笑ってくれたし、今日のところは順調に終わりそうだ。モップで集めたゴミを処理し、窓周りの施錠も確認して体育館の扉を閉めた。
明日も、誰も怪我なく終わりますように。
「お!高原さんきたきた!」
「すみません!お待たせしました」
「いーよ。片付けありがとな」
「なになに?やっくんってばもうマネちゃんと仲良くなっちゃって~!」
「うるせーよ黒尾!」
「クロ…そのテンション馬鹿みたいだからやめなよ」
「一応先輩だぞ研磨ァ!」と戯れる彼らに笑みをこぼし、ゆっくり歩き出したそれにならって歩みを進める。聞いていると割とこうして帰りにコンビニに寄ることは多いらしい。そりゃそうだ。成長期の高校生が部活帰りに我慢なんて出来るはずがない。家でもちゃんとしたご飯もしっかり食べるなら良しだろう。今日は夜久さんに黒尾さん、研磨くんと私の4人だけど、結構みんなで行くことも多いらしい。仲良しだな、この部活。先輩後輩もあんまり煩くないし。
「高原さん、今日どうだった?マネージャー初日」
「すげーテキパキしてて驚いたわ。経験者?」
「内心結構バタバタしてましたけど、なんとかなってたならよかったです。マネージャーは初めてですよ」
「…じゃあ中学は運動部だったとか?」
「孤爪くん鋭いね。そーだよ。私もバレーやってた」
「だからなんとなく必要なものとかは思い当たるんだ」と言えば、なるほど、と納得した様子。そんなに上手くやれていたのだろうか。上手くいってたに越したことはないけども。
「じゃああれか?ボール出しとかも頼めたりするか?」
「はい。必要ならやりますよ。ただ、合宿中はあんまり余裕無さそうに思えますけど」
「あー…確かにな。んじゃ明日の練習で出来れば頼むわ」
「了解でっす」
「いや~頼れんなぁ~マネちゃんは」と黒尾さんに頭をグリグリと撫でられた。なんか縮みそうだ。
ボール出しか。まあ、難しいことじゃないし、引き受けたからにはやるだけのことはやろう。今日の練習でも彼等がかなりレベルの高い選手だということも分かったし。本気でやってる人の周りを中途半端な気持ちでうろつくのは不誠実すぎる。 決して「マネージャーありがとなってことで!」と満面の笑みでハーゲンダッツを奢ってくれた夜久さんに絆されたとかではない。決して。
「それじゃ私こっちなので」
「おう、お疲れ。1人で平気か?」
「はい、すぐそこなので。ありがとうございます。お疲れ様でした」
「…気をつけてね」
「うん、ありがとう孤爪くん」
それじゃ、と背を向けて歩き出す。夜久さんは既に別れていて、同じ方角だった黒尾さんと孤爪くんともここでお別れ。徒歩通学の私は本当に近所なのだ。それで高校を決めたと言っても過言ではない。
日はすっかり落ちてはいるけど、東京の街はまだまだ賑やかであるから人通りも十分だ。
帰り道に聞いた話、なんと黒尾さんと孤爪くんは幼馴染なのだとか。なるほど、それであの距離感かとすんなりと納得してしまった。良くも悪くもあの2人には遠慮がないなと思っていたから。「幼馴染かぁ、いいな」と零せば心底嫌そうな表情を浮かべた孤爪くんが印象的だった。めっちゃ嫌がるじゃん…。
ともかく臨時マネージャー1日目は無事終了。慣れないことをしたからかその日はいつもより数時間も早くに就寝した。歳か…?
20180807
