出逢いと別れ
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ナマエ様の兄(らしい)の唇から低いトーンで発せられた言葉の意味を恐らく理解できておらず呆然としているナマエ様、そして今目の前で起こっている事態をまるで飲み込めていない俺達を前に、踵を返し敷地内へ足を進めていた兄上様は深いため息を溢してから、しかし一切こちらを見ることもなく再度口を開いた。
「ミョウジ家にお前は必要ないと言ったんだ。父上がお戻りになるまで、お前はどこか別の所で生活しておけ」
『で、でもお兄様…』
「兄の言うことが聞けないのか?あぁ、それとも行く宛がないのか………そこの方、かの有名な真選組の局長様とお見受けするが」
「はっ…!真選組局長、近藤勲でございます」
思考回路が追い付いていないのかナマエ様は未だ驚きと戸惑いの混じったような表情を浮かべていたが、そんな彼女は視界にすら入っていないような振る舞いでこちらに視線をやった兄上様は、ニコリともせず近藤さんを見据えて気だるげな様子だった。
「そこの娘、貴方にお預けしましょうか。これと言った取り柄はないが、顔だけはそこそこ。商談の場なんかではそれなりに役立つかもしれませんよ」
「え、えぇっ?!」
「とにかく、門前で大所帯に屯されては迷惑です。ナマエのことは捨て置いていただいて結構ですので、お引き取りください」
言うだけ言って再び歩を進め、従者達が門を閉めるまで俺達は誰一人としてその場から動くことが出来なかった。状況が充分に理解できていなかったということもあるが、何より愕然と肩を落とすナマエ様の横顔から目を逸らせなかった。誰もが(流石にあの総悟までも)掛ける言葉を見付けることが出来ず気まずい空気が漂う中、沈黙を破ったのはその場にそぐわない明るい大声だった。
「さて!じゃあ帰るとするか!任務終了、屯所に戻ったら各自ゆっくり過ごしてくれ」
「こ、近藤さん…帰るったって…」
「ん?あぁ、…ナマエ様!むさ苦しい所ですが、私達の屯所に来られませんか!」
『、え…?』
近藤さんの突然の提案に俺達真選組も驚いたが、一番の驚きは他でもないナマエ様であろう。先程までこの世の終わりのような色を浮かべていた瞳を見開き近藤さんを見詰めた。
「帰るまでが遠足だと言いましたよね?ご帰宅が叶うまでは、ナマエ様は真選組お預りというお立場。私達が責任持ってお守り致す所存です」
『し、しかし今父上は宇宙へ…帰ってこられるのはまだずっと先で…』
「関係ありませんよ。一度引き受けた仕事を途中で放り出すような真似は、士道不覚悟です…なぁトシ」
「あぁ…例え局長だろうと、士道不覚悟は局中法度違反、切腹だぜ」
『…っ、ありがとう、ございます…!』
それまでポカンとしていたナマエ様も、俺達が次々に賛同するもんで徐々に表情を崩し、とうとう涙を流してへらりと笑っていた。そんな彼女の表情に胸の高鳴りを感じたのはきっと自分だけではないだろうが、気付かないフリをして空を見上げた。
2014.09.20 愛紗
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