出逢いと別れ
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その後執事とのやり取りの中で掴めてきた今日の主な流れとしては、ナマエ様が出席される会食と、その道中の警護。ミョウジ家は古くから幕府の外交を司る役職に就いており、当主と長男…ナマエ様の兄も今は外務省の人間として働いているそうだ。そして今日は多忙なお二人に代わり、ナマエ様お一人で異国の外交官との会食に出られるとのこと。
屋敷へやって来た時と同様に、運転は総悟、後部座席に俺と近藤さんという配置は変わらずだが、近藤さんと俺との間にナマエ様がちょこんと座っていた。
「あ、あの…狭くないですか、いやーむさ苦しくてすみませんね!わかっていればもっと大きなお車でお迎えに上がったのですが…」
『いえ、お気になさらず』
娘との距離感含め、沈黙に包まれた車内の空気にソワソワしていた近藤さんだったが、とうとう耐えきれなくなりわざと大きな声を出してナマエ様に話しかけるも、彼女は視線を動かすことなくまっすぐ正面を見据えたままサラリと答えた。ナマエ様を初めてお目にかかってから十数分だが、彼女の印象は“美人だが愛想が悪い”という一点に絞られた。愛想が悪い、と言っては少し語弊があるかもしれないが、実際彼女は俺たちに対し未だにニコリともしない。それどころかしゃんと背筋を伸ばし前を向いたままこちらに視線をやることも一切しなかった。
再び始まった沈黙の空間に耐えること暫くして、目的地である大江戸プリンスホテルに到着。周囲の安全を確認した上で俺、ナマエ様、近藤さんの順に車を降りた。ドアを閉めた近藤さんが小さくため息を漏らしたのを俺は見逃さなかった。
ホテルのボーイに案内されるままロビーを抜けエレベーターで目的の階へ。両開きの扉が開くとそこには今回の会食の相手方と思われる異国人が既に待っていた。
『お待たせしてしまって、申し訳ございません』
「とんでもない、ミョウジ家のお嬢様と食事を共に出来るのです。先に来ていないと私が上の者に叱られますよ」
何気ない会話の筈だったが、俺たちは目を疑った。さっきまであれほど仏頂面を貫いていた彼女が、まるで鮮やかな満開の花のような笑顔で会話しているではないか!流石元々の顔立ちが一級品ともなれば、笑顔ひとつで随分と印象が変わる。彼女の笑顔はその場の空気さえも華やかに変えてしまうようだった。一瞬持っていかれていた意識を取り戻して隣へ目を向ければ、近藤さんだけでなく総悟や他の隊士たちも例外なく驚きと心を惹き付けられる何かを感じている様子だった。