出逢いと別れ
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昨日まで何日か降り続いた雨も止み、少しの水溜まりとぬかるんだ地面だけが残ったとある日の午後、俺と近藤さんは総悟の運転するパトカーに乗ってある屋敷へ向かっていた。後ろにもう一台続いたパトカーには総悟率いる一番隊の隊士が数名乗車し、後について同じ場所を目指し街を疾走していた。
本日の仕事は松平のとっつぁんが直々に屯所へ現れ、告げていった重要任務。半分ほど開けた車の窓からくわえていたタバコの煙を吐き出し、胸ポケットから取り出した携帯灰皿へ火を押し付けた。
「近藤さん、今日護衛するっつーお嬢様なんだけどよ」
「あぁ、どーしたトシ」
「自分の好みか知りたくて仕方ないんでしょう。何せ普段若い娘の半径5メートル以内にも近付けねーんですから。せっかくのチャンスですからねィ」
後部座席で隣に座った近藤さんへ話しかけると、声をかけてもいないのに運転手である総悟が会話へ割り込んできた。話の腰を折られた不快感から眉間にシワを寄せ、しかし気にしたら負けだと自分に言い聞かせながら再び口を開く。
「そんなに危ねー方なのか?将軍様の花嫁候補とかか」
「すまねェな、トシ。実は俺もお顔を拝見したことがないんだ…可愛らしいお嬢様だといいな!」
「ダメだ人の話全く聞いてねェ…」
くしゃっと前髪を掻き上げ深いため息を一つ溢した。そう、本日の任務は《さる名家のお嬢様の護衛》。どんな家の何という名の方なのか、また本日は何処へ出向く際の護衛なのか…そういった細かいことは一切知らされていない何とも頼りない任務だった。逆に言えば事細かに移動ルート、隊士の配置、タイムスケジュールなんかが予め知らされているとなると幕府の重役、それこそ将軍様もしくはそれに近い役職にあられる方のレベルの話になってくる。そうでないということは、まぁ…“そこそこの人間で、そこそこの危険の可能性があると推定されている”程度だろう。
しかし通常の警備員ではなく俺たち真選組、しかもとっつぁん直々の指令となれば事の重要性はまた異なってくる。堂々巡りのような思考ループから脱却すべく、ぼうっと遠くの空へと視線をやった。昨日まであんなに淀んでいた天は、まるで別物のように青く澄みきっていた。
1*出逢いと別れ
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